Project/Area Number |
22K05156
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 34020:Analytical chemistry-related
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
秋山 和彦 東京都立大学, 理学研究科, 助教 (50360441)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,600,000 (Direct Cost: ¥2,000,000、Indirect Cost: ¥600,000)
Fiscal Year 2024: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2022: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
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Keywords | 金属内包フラーレン / 高速液体クロマトグラフィー / 放射化学 / フラーレン / HPLC / ラジオクロマトグラフィー |
Outline of Research at the Start |
本研究は核医学的応用が期待されている放射性同位元素Ac-225を内包した金属フラーレンの性質をHPLC分析から明らかにすることを究極の目的とし、同族元素である一連のランタノイド元素を内包した金属内包フラーレンについて、ラジオクロマトグラフィー法による多元素同時ガンマ線分析を行うことにより、ランタノイド金属内包フラーレンの電子状態に対して内包ランタノイド元素がどのような影響を与えているかを明らかにすることを目的とする。東北大電子光センターや京大炉などにおいて製造した放射性同位体を用いることで、ラジオクロマトグラフィー法から得られた高精度なデータを熱力学的に解析することでこれを明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は核医学的応用が期待されている放射性同位元素Ac-225(アクチニウム-225)の同族元素であるランタノイド元素を内包した金属内包フラーレン化学種について、ラジオクロマトグラフィー法によって内包金属原子であるランタノイド元素がどのような影響を与えているかを明らかにすることを目的としている。今年度は展開溶媒をクロロベンゼンとした実験の準備及びペンタブロモベンジル固定相を用いた実験の準備を行うため、1) 空フラーレンを用いてクロロベンゼン(CB)を展開溶媒としたピレニル(PY)固定相及びペンタブロモベンジル(PBB)固定相における溶離挙動の確認と各空フラーレンの吸脱着エンタルピー⊿Hの取得と2) 展開溶媒に含まれる塩素原子の熱中性子放射化による試料測定への影響の評価と試料作成方法の検討を行った。 CB系におけるPY固定相及びPBB固定相によるHPLC展開の際のLn@C82溶出時間の確認とLn@C82の⊿Hとの比較のため空フラーレンの⊿Hの取得を行った。Ln@C82の保持時間はPY固定相では概ね45分程度であることが分かり、PY固定相においてはC60からC86の⊿Hは-0.98から-3.96 kJ/mol、同様にPBB固定においては-3.3から-9.0 kJ/molの範囲である事が分かった。塩素に含まれる同位体Cl-37は熱中性子放射化により半減期37分のCl-38を生じる。展開溶媒としてCBを用いるにあたって、試料作成の際に残留する塩素量によっては短半減期核種であるDy-165(半減期2.3h)やEr-171(半減期7.5h)の測定の妨げになる事から試料作成方法の検討を行った。実験を模した試料を、2~3日真空乾燥して熱中性子照射を行ったところ、概ね15cps程度の計数率を示したことから、この試料作成方法であれば十分な精度のデータを取得できることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
展開溶媒として用いるクロロベンゼン(CB)は熱中性子放射化の感度が異常に高い塩素を含むことから放射化する試料中から可能な限りこれを除去しないとガンマ線測定におけるバックグラウンドの上昇によって短半減期核種によって挙動追跡するDyやErなどのデータを得ることができない懸念があった。今回、試料調整方法を詳細に検討し、2~3日程度の真空乾燥を行う事で塩素の熱中性子放射化によって生じるCl-38の影響を極めて少なく抑えられることが分かった。 また、空フラーレンを用いたHPLC溶出実験では、CBを展開溶媒としてピレニル固定相を用いて10℃、室温、40℃、50℃と温度条件を変えたHPLC展開を行うことで、Ln@C82の溶出位置をあらかじめ把握することができた。加えて、van’t Hoffプロットからこれらフラーレンの吸脱着エンタルピーを得ることが出来たことから金属フラーレンのHPLC分離機構を理解する上で比較対象となる重要なデータを取得できた。 これらの結果は2024年度に行う予定であるCBを展開溶媒として用いたLn@C82のHPLC溶出実験を行う際に非常に重要なデータとなるものである。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度得られて結果をもとに、2024年度はクロロベンゼンを展開溶媒とした一連のLn@C82のHPLC溶出実験を行う。HPLC展開はピレニル固定相を用いて10℃、室温、40℃、50℃の4つの温度条件で行い、流速を1mL/minとして、それぞれ45-65、40-55、35-50、35-45分の溶出成分を20秒から30秒分画することで一連のLn@C82の溶離挙動の違いを把握することが可能であると見積もられる。この実験で得られるデータは昨年度行ったトルエンを展開時溶媒にしたピレニル固定相の実験結果と比較をすることでLn@C82と溶媒分子との相互作用の違いなども明らかにすることが期待できる。 また、ペンタブロモベンジル固定相を用いた空フラーレンのHPLC展開実験からは吸脱着エンタルピーにおける展開溶媒の影響はピレニル固定相に比べてほとんど無いと言って良いものであった。Ln@C82においても空フラーレンと同様に展開溶媒による影響が吸脱着エンタルピーに強く反映されるか否かは金属内包フラーレンの溶存状態に関する知見に繋がるところである事から非常に興味深い。今後はペンタブロモベンジル固定相におけるLn@C82のHPLC展開実験についても準備を進める。
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