磁場による金属ナノ構造体制御に基づくキラル認識SALDI-MSの開発
Project/Area Number |
22K05171
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 34020:Analytical chemistry-related
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
飯國 良規 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60452215)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
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Keywords | SALDI-MS / MHD効果 / ガルバニ置換 / キラル分析 |
Outline of Research at the Start |
表面支援レーザー脱離イオン化質量分析法(SALDI-MS)のための新規なナノ構造体基板の作成法を開発するとともに、それを用いたSALDI-MS測定に基づきそのイオン化過程の支配因子に関する知見を得ることを目的としている。さらに、その得られた知見を基にキラル質量分析法の構築を行う。ナノ構造体の作成および試料調整において磁場を用いることで、構造体のサイズ、形状の制御および試料の濃縮、選択性を付与を試みる。キラルな金属構造体用いてキラルな分子のSALDI-MS測定を行うことで、相互作用のイオン化への影響を明らかにするとともに、キラル選択質量分析法の確立を目指すものである。
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Outline of Annual Research Achievements |
TEM用の試料ホルダとして市販されている銅製マイクログリッドを塩化金酸中に一定時間浸漬させることで、ガルバニ置換(GD)によりグリッド上に金ナノ構造体を析出させSALDI-MS用基板を作製した。TEM観察およびEDS測定からガルバニ置換時の塩化金酸の濃度が高いほど金の析出量は多く、構造体のサイズも大きくなった。さらに作製したGDグリッドを用いた表面支援レーザー脱離イオン化質量分析によりレセルピンをモデル試料として測定を行い、シグナル強度および強度の再現性が最も優れたガルバニ置換の最適条件を決定することができた。また、室温よりも45℃で作製した基板においてレセルピンのSALDI-MS測定のシグナル強度および再現性が向上することが確認できた。以上のように、SALDI-MSのための銅グリッド上への金ナノ構造体のガルバニ置換による作製条件の最適化が達成された。さらに、この最適条件を用いて磁場中でガルバニ置換を行うことで金ナノ構造体を作製した。 銅グリッドの金ナノ構造体を析出させる表面に対して、1.0 Tの磁場を上向きおよび下向きに印加してそれぞれ作製すると、上向きの磁場では構造体が立体的に生成し、下向き磁場では二次元的に生成していることが確認できた。これらをEDS測定に供したとこころ同条件の無磁場で作製した基板よりも金の析出量が増大していることが確認された。さらにこれらの基板を用いてD,L-アルギニンのSALDI-MS測定を行ったところ、上向きの基板ではD-アルギニンが強く観測され、一方、下向き磁場の基板ではL-アルギニンが強く観測された。磁場の方向によりキラルなアミノ酸のイオン化に選択性を基板が作製できることが示唆されたが、一方でシグナル強度の再現性は無磁場で作製した基板よりも低くなり、無磁場と磁場中でのガルバニ置換の最適条件が異なることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究において最初に検討する必要のあった銅グリッド上へ金ナノ構造体そ生成するためのガルバニ置換反応の最適条件について、無磁場下での温度、塩化金酸濃度、反応時間等の各条件において作製した構造体のTEM観察、EDS測定およびそれを用いたSALDI-MS測定から最もシグナル強度が大きく、かつ再現性の高い構造体の作製条件について決定することができた。また、銅グリッド、ニッケルグリッドと塩化金酸、塩化白金酸の各組合せでのガルバニ置換反応により作製した基板用いてのSALDI-MS測定も並行して行い、SALDI-MSに適した構造体に関する知見も得られ、当初の研究計画を十分に達成したといえる。さらに、磁場中でガルバニ置換反応を行い作製した基板のTEM観察におよびEDS測定に基づきMHD効果が金ナノ構造体の生成におよぼす影響についても明らかにすることができた。また、磁場中でガルバニ置換により作製した基板を用いたキラルアミノ酸のSALDI-MS測定から、ガルバニ置換反応時の印加磁場の方向により基板によるイオン化がキラル選択性を発現することが確認された。一方で、SALDI-MS用の基板として無磁場下と磁場中でのガルバニ置換反応では最適条件が異なることも明らかとなった。以上のように本研究は順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、まず磁場中でのガルバニ置換反応の最適条件を決定する。磁場中においては無磁場下と比較して同条件でも金ナノ構造体の生成が促進することが確認できた。金ナノ構造体が成長しすぎると表面積の減少等によりシグナル強度および再現性が低下することがこれまでの研究によりわかっていることから、磁場中では塩化金酸をより低い濃度でガルバニ置換を行うことで最適条件の検討を行う。また、磁場強度により金属ナノ構造体の生成の仕方も異なることが報告されていることから、磁気回路を用いてこれまでよりも強い1.5 T中でガルバニ置換反応を行い、生成した金ナノ構造体のTEM観察、EDS測定およびそれを用いたSALDI-MS測定によりキラル選択性の高い金ナノ構造体の生成条件を決定することでキラル分析法として確立を目指す。また、キラル分子の選択的イオン化に対して、金ナノ構造体への吸着性がどのように影響しているかを明らかにすることでイオン化メカニズムの解明を目指す。そのために、蒸気圧の低いイオン液体を溶媒として用いることで、溶媒を揮発させず構造体と吸着分配をした状態で測定を試みる。ガルバニ置換の前に基板金属上に軟磁性体であるパーマロイをコートすることで構造体を磁性化する。さらに、溶媒として磁性イオン液体を用いることで試料滴下時に磁場を印加することで、溶媒は金属ナノ構造体状に引き寄せられ、濃縮も可能となることから、高感度分析としての有効性を確認する。
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Report
(1 results)
Research Products
(2 results)