テオフィリンパラジウム触媒の連続式リアクター化と不斉触媒への展開
Project/Area Number |
22K05198
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 34030:Green sustainable chemistry and environmental chemistry-related
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
貝掛 勝也 神奈川大学, 公私立大学の部局等, 教務技術職員 (20437940)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金 仁華 神奈川大学, 工学部, 教授 (60271136)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2024: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2023: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2022: ¥2,860,000 (Direct Cost: ¥2,200,000、Indirect Cost: ¥660,000)
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Keywords | テオフィリン / パラジウム / 自己組織化ナノ構造触媒 / 鈴木-宮浦カップリング反応 / 連続リアクター / パラジウム触媒 / 鈴木・宮浦カップリング反応 / 薗頭カップリング反応 / 不斉触媒 |
Outline of Research at the Start |
医薬、農薬、先端材料の多くは、炭素-炭素カップリング反応により合成され、その反応に欠かせないパラジウム触媒への要求として、生産性向上のための高い反応性の獲得および、環境保全の観点から耐久性に優れ再利用できる触媒開発が求められている。これに対し申請者は、強力な親和性によりパラジウムと錯形成できるテオフィリンに着目し、錯形成を駆動力とした自己組織化でパラジウムを集合体全体に自発的に固定化できるナノ構造固体触媒を開発し、触媒が繰り返し利用可能となる条件を見出した。本研究では、この触媒を用いて「カップリング反応の連続式リアクター化」を具現化するとともに、「不斉触媒への利用展開」を目指している。
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Outline of Annual Research Achievements |
研究初年度の2022年度においてパラジウム価格は金価格を抜くグラムあたり1万円超えの価格を更新し、直近4年でもグラムあたり7000円を下回ることなく高値で推移している。価格高騰の要因は、パラジウムの高い触媒性能から、白金に代わる自動車触媒として社会的潮流となった他、化成品合成のための工業用途での化学反応触媒として需要が増加しているためであり、パラジウムの選択的回収やリサイクル、高効率な利用は、これまでになく重要な局面を迎えている。 先の基盤研究C(19K05571)において、パラジウムと強力な親和性により錯形成できるテオフィリンに着目し、錯形成を駆動力とした自己組織化により、パラジウムを集合体全体に自発的に固定化できるナノ構造固体触媒(PdBTC7)を開発し、貴重な触媒を繰り返し利用可能となる条件を見出した。 これらの結果を発展させた本研究では、より高度な利用を開発検証することを目的に、「カップリング反応の連続式リアクター化」の具現化を目標に掲げた。触媒が漏れ出すことなく反応器内に充填されるリアクターを設計し、そのリアクターを備えた連続式反応装置をデザインした。本反応装置は、反応液の充填や回収が容易であり、繰り返し合成実験が行えることが特徴である。PdBTC7はバッチ法では8回程度のリサイクルが可能であったが、本装置で反応系内に塩素イオンを添加することで50回超の繰り返し合成に至った。これは生産性を約6倍に高め、パラジウム触媒価格は実質1/6へと削減していることを意味する。PdBTC7触媒系に塩素イオンを共存させるだけのシンプルなこのシステムは、パラジウム触媒の崩壊と失活を抑制する、リサイクルに極めて優れた触媒リアクターとして利用でき、本触媒と本反応装を用い塩素イオンを加える本手法は、パラジウムの化学工業分野への有効利用における一つの布石となる研究成果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初、(1)テオフィリン化合物及びパラジウム錯体の合成、(2)機器分析による触媒の評価、(3)リアクターの作成と運転条件の最適化ならびに、(4)リサイクル実験と触媒性能評価を行うことを目標として策定した。本研究の進捗は、これら4点の目標を達成でき、さらに、(4)では繰り返し利用のみならず反応前後の触媒の構造変化について、詳細に考察ができたことから、当初の計画以上に進展していると評価した。 鈴木-宮浦カップリング反応を連続して進めるにあたり、連続式リアクター装置への反応液注入および分離回収時の機能的な操作性は重要である。そこでトラップボトルを反応装置のパイプライン上に取付けた機構にしたことで、取り扱い性が向上し、安定して連続した反応を進めることができた。反応の要であるリアクター部は、10マイクロメートル程度の粒径の触媒粉末であるPdBTC7の反応系中への流出を防ぐため、ガラスカラム中にガラスフィルターとガラスビーズを7層のミルフィーユ構造にしたことで問題解決をはかった。さらに、反応生成物は結晶微粉末として析出することから、反応中に装置内詰まりを引き起こす可能性が問題点として挙げられたが、フレキシブルリボンヒーターの採用により装置を包み保温したことで目詰まりを回避することができた。このような設計で構成され、チューブポンプで一定流量送液するシンプルで高効率な連続式リアクターを用いて、フェニルボロン酸とブロモベンゼンを用いたビフェニル合成をモデル反応として、触媒性能を詳細に検討すると共に装置性能を評価した。また、繰り返し合成後の触媒をSEMやTEM、XPS分析を行うことで、触媒構造や化学種の詳細を明らかにした。その結果、触媒失活時には塩素イオンが失われていることを突き止め、この成分をNaCl添加により補うことで50回超えのリサイクルを達成するに至った。
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Strategy for Future Research Activity |
研究初年度の研究進捗が、「カップリング反応の連続式リアクター化」の具現化に至ったことから、研究2年目の早い段階でリアクター化の研究成果を査読付論文として取りまとめる。 研究計画当初に策定した2年目の計画では、「種々の不斉錯体を合成しPdイオンそのもにCD活性が発現できる不斉配位子構造を選定する。さらに鈴木-宮浦カップリング反応における触媒機能をスクリーニングし、不斉触媒としての有効性を見極める。」ことを目的にしている。このキラル触媒の開発を行うため、予察試験ではオレアノールテオフィリンもパラジウムに不斉伝搬が認められているが、さらにオレアノールテオフィリンパラジウム触媒に加え、今後の進展も考慮し、反応可能残基を生成できるスチレンオキシドとの反応も選択することに決定した。反応性の高いR 体およびS 体のエポキシ化合物であるスチレンオキシドの開環反応によりテオフィリンに不斉炭素を導入した新規な配位子を合成する計画である。合成したR 体およびS 体の配位子をパラジウムと錯形成させることで、不斉パラジウム触媒を作製する。作成したキラルパラジウム触媒は種々の機器分析によるキャラクタリゼーションを行い構造やキラリティを評価する。キラルパラジウム触媒を用いた不斉合成への展開は、これまでの実験から多くの知見がある鈴木・宮浦カップリング反応を利用し、反応基質には軸不斉を生じさせることができるような官能基を有する基質を選択し合成する。合成転化率の評価はPdBTC7との比較により評価する。得られたビフェニル化合物のCDを測定し不斉合成の評価を行う。 また、カップリング反応の展開の足がかりを模索するべく、PdBTC7の薗頭カップリング反応への展開を追加検討することも計画している。
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Report
(1 results)
Research Products
(2 results)