Project/Area Number |
22K05259
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 35030:Organic functional materials-related
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
金井 要 東京理科大学, 創域理工学部先端物理学科, 教授 (10345845)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,030,000 (Direct Cost: ¥3,100,000、Indirect Cost: ¥930,000)
Fiscal Year 2026: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2025: ¥260,000 (Direct Cost: ¥200,000、Indirect Cost: ¥60,000)
Fiscal Year 2024: ¥260,000 (Direct Cost: ¥200,000、Indirect Cost: ¥60,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
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Keywords | PHI / 暗触媒 / 電荷蓄積現象 / イオン電流 / 光伝導 / 二酸化炭素還元 / ポリヘプタジンイミド / 暗触媒活性 / フォトクロミズム / Poly(heptazine imide) / 光触媒 |
Outline of Research at the Start |
Poly(heptazine imide) (以下、PHI) は、ヘプタジン骨格が二次元状に重合した窒化炭素ポリマーであり、「暗触媒活性」という特異な機能を示す光触媒である。暗触媒活性とは、光が照射されることで光のエネルギーを蓄積し、暗状態でも光触媒活性を示す機能である。暗触媒を実用化することができれば、天候などの条件によって左右されにくい光触媒を実現することが可能である。しかし、現在まで、PHIの暗触媒活性のメカニズムは未解明である。そこで、本研究では、主に、光照射によって生じるPHIの電子構造の変化を直接観測することで、PHIの暗触媒活性のメカニズムを解明することを目的とする。
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Outline of Annual Research Achievements |
近年、酸化チタンに代わる光触媒として、窒化炭素ポリマーが注目されている。窒化炭素ポリマーは、安価かつ合成方法も簡便という特徴がある。そんな窒化炭素ポリマーの最大の利点は、可視光によって光触媒活性を示すことである。このことは、紫外線を必要とする従来の光触媒より太陽光のエネルギーを効率的に利用できることを意味している。 本研究では、窒化炭素ポリマーの中でも特にmetal-poly(heptazine imide) (以下、M-PHI) に注目した。M-PHIは一価の金属(M)を含む2次元窒化炭素ポリマーであり、他の窒化炭素ポリマーよりも電荷分離能力や光吸収に優れていることから、高い光触媒性能を示すことが知られている。また、M-PHIは構造中に含む金属イオンを交換することにより、簡便に物性を制御できるという利点もある。その扱いやすさや、材料設計の柔軟性の高さから、M-PHIの水素発生能力に注目した研究は、これまでにも数多く行われている。しかし、その他の応用先については現状殆ど検討されていない。そこで、2023年度では、金属イオンの異なる複数のM-PHIを合成し、それらの基礎的な物性と光触媒性能の関係を調べ、高性能なPHIの合成における開発戦略を得ることを目的として研究を遂行した。その結果、M-PHIの粒子径を小さくすることが、有機汚染物質の還元や二酸化炭素の分解における光触媒性能の向上に有効であることを明らかにした。特に、焼成によって合成するM-PHIの粒子径は、金属の種類に強く依存することを見つけた。さらに、焼成条件によってM-PHIの粒子径を制御する方法を確立し、それを応用して粒子径の小さなRb-PHIの試料を合成することにも成功し、実際に、二酸化炭素分解効率が向上することを示した。以上の研究成果は、論文にまとめ、現在、光触媒の専門誌に投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、M-PHIの示す暗触媒を含む光触媒のメカニズムを解明することを目的としている。2022年度は、K-PHIとH-PHIが、白色光照射によって示すフォトクロミズムのメカニズムについての基礎研究を行い、その一端を解明することに成功した。この成果は論文として成果発表することができた(Chemistry of Materials, 35, 3, 1283-1294 (2023))。2023年度は、M-PHIの実際の光触媒についての研究を進め、さまざまな金属イオンを内包したM-PHIの合成方法を確立し、その二酸化炭素還元能等を評価した。この研究成果は、論文にまとめ、現在、光触媒の専門誌に投稿している。さらに、2023年度では、K-PHIの暗触媒のメカニズムに迫る基礎研究も継続して来た。現在までに、K-PHIの粉末試料からナノシートを単離することに成功し、K-PHIの薄膜を作製した。その上で、光照射条件などを変えて、一連のインピーダンス測定を行った。インピーダンス測定などの電気特性の評価は、従来の粉末試料では困難であったことから、これまでK-PHIの電荷蓄積やイオン伝導といった暗触媒のメカニズムの解明にとって重要な知見が得られない状況であったが、K-PHIの薄膜の作製に成功したため、これらの測定が可能になった。現在は、その実験データの解析と、その結果を論文にまとめる作業を進めている状況である。 このように、本研究は、M-PHIの光触媒に関して、基礎、応用の両面からの研究計画を順調に進めている状況であり、研究期間内に当初の研究目的をじゅうぶん達成することができると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は、これまでに作製方法を確立したK-PHIナノシートを用いた薄膜を作製し、その電気特性評価や電子構造の直接観測などを進め、これまでに本研究で得られている知見と総合的に検討することによって、K-PHIの光触媒のメカニズムを解明する。特に、光電子分光や逆光電子分光を用いた電子構造の測定によって、K-PHIのエネルギーギャップ近傍の電子準位の情報が得られるため、エネルギーバンド計算などの理論計算との比較をすることによって、K-PHIの示すフォトクロミズムと光触媒の関係を明らかにできることが期待できる。また、K-PHIやH-PHIが光触媒を示すためには、TEOAなどの正孔犠牲剤などを添加することによって、電子が試料内に蓄積された励起状態を安定化する必要がある。このような犠牲剤を使用しない状態では、光吸収によってPHI内に生成した励起子の再結合確率は高く、安定して光触媒反応における酸化還元反応に必要な電荷を供給することできない。しかし、この励起状態にあるPHIは大気中の酸素によって容易に酸化されてしまうために、励起状態の寿命が短くなってしまう。そのため、十分に光触媒活性を示すことができない。そこで、2024年度からは、従来の正孔犠牲剤に代えて、電子受容体を電子犠牲剤として使用することによって、正孔が試料内に蓄積された安定な励起状態を実現することを計画している。これが実現すれば、大気中でも安定に光触媒活性を示す材料を得ることができる。
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