Project/Area Number |
22K05262
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 35030:Organic functional materials-related
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
中野 恭兵 国立研究開発法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, 研究員 (00726896)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,950,000 (Direct Cost: ¥1,500,000、Indirect Cost: ¥450,000)
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Keywords | 有機太陽電池 / 分子配向 / 電子状態 / 状態密度 / 有機薄膜太陽電池 / 有機半導体 / 状態密度分布 / 光強度依存性 / 光電子収量測定 |
Outline of Research at the Start |
柔らかく・軽い有機薄膜太陽電池をわれわれの生活空間に取り入れれば,散逸する光エネルギーを再び電気エネルギーに変えることができ,社会のエネルギー使用効率の改善が見込める。それには室内光など弱い光の下で効率的に発電できる有機薄膜太陽電池が必要である。本研究では,光量によらずに高い光電変換効率を示す有機薄膜太陽電池の創成を目標とし,有機半導体の状態密度分布エンジニアリングでその実現を目指す。申請者の独自手法である超高感度光電子収量測定法を駆使して有機半導体の状態密度分布を実測評価,微弱光下での太陽電池特性と状態密度分布の関連を解明,さらに状態密度を積極的にコントロールする手法の開拓を行う。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,光量によらずに高い光電変換効率を示す有機薄膜太陽電池の創成を目標とし,有機半導体の状態密度分布エンジニアリングでその実現を目指すものである。昨年度は、高い光電変換効率を示す有機電子ドナー材料のPM6と有機電子アクセプタ材料のY6に着目し検討を進めた。2種材料を混合した薄膜を光電変換層とするバルクヘテロジャンクション構造と、2種材料を混ぜずに薄膜のヘテロジャンクションとした平面積層構造で太陽電池を作成し、素子特性の違いを詳細に解析した。
(1)同じ材料を用いているにも関わらず、平面積層構造では電荷生成過程が電場に依存、バルクヘテロジャンクション構造では非依存、という違いがあった。 (2)その違いの理由を調べたところ、一つには2種材料の接触界面における電子状態エネルギーが素子構造によって変わっていることが見出された。平面積層構造では電荷生成に必要なエネルギー差が不足していた。 (3)また、接触界面における分子配向も、電荷生成過程の電場依存性に影響していた。Y6はその共役平面が基板に対して水平に配向することが知られている。別のアクセプタ分子を用いて分子の配向を変えて同じ評価をしたところ、共役平面が垂直に配向しているときに効率的な電荷生成が実現される傾向があった。これらの結果はJournal of Materials Chemistry A誌にて報告した(DOI:10.1039/D3TA06835H)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述のPM6:Y6という有機薄膜太陽電池分野の現在のデファクトスタンダードとも言える材料系の検討を通じて、材料の状態密度の形状が太陽電池特性にどのように効いているのかが少しずつわかってきた。 平面積層構造において、ドナー分子とアクセプタ分子の状態密度の形状を実測すると、フェルミ・ディラック分布を用いて電荷量が計算できる。一方で、同じ素子を用いて、過渡電流・電圧測定計測を行うと、素子内部の電荷量を実験的に評価することができる。素子に当てる光の強度を変化させながら測定を行い、各光量における電荷量をプロットした。同時に状態密度の実測値から計算した電荷量もプロットしたところ、これらがおおよそ一致した。すなわち、状態密度の形状という材料のパラメータから、太陽電池内に形成される電荷量を予測することが可能である。状態密度の形が異なるドナー材料を用いた比較から、状態密度の分布幅が狭い材料ほど、光強度が弱くなっても電荷量が減少しにくいことがあきらかになった。太陽光照射下から室内光照射下まで幅広い光強度で太陽電池を駆動することを考えると、状態密度の分布幅が狭い材料を使うことで光電変換効率を平均して高く保つことができる。この知見は本研究の提案内容2で目標としていたものであり、2022年度には提案内容1を達成したことと合わせて考えると、順調に研究が進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究提案の内容3は、低照度下でも高効率に光電変換できる太陽電池の創出を目指して、状態密度を積極的にコントロールする方法論を確立することである。これについては2つの方策を立てた。 (1)高分子ドナー材料の成膜時に使用する溶媒の影響。一般的には高分子ドナー材料の成膜には高い溶解性を持つクロロホルムを使用することが多い。これを同じくハロゲン系溶媒で沸点の高いクロロベンゼンやジクロロベンゼンに変更する。沸点が高くなると成膜時に溶媒がゆっくりと揮発することになるので、高分子の主鎖の配向や結晶性が変わり、結果として状態密度の分布幅も変わる可能性がある。分布幅が狭くなればよいということがわかっているので、その方向で溶媒の影響を検討する。 (2)ドナー・アクセプタ型高分子内の構造欠陥があると、状態密度の分布幅が広がっているような測定結果が得られつつある。構造欠陥の密度と状態密度の分布の形にどの程度強い因果関係があるのか、太陽電池特性にどういった影響があるのかなど、検討すべきことが出てきた。構造欠陥の密度を正確に定量することがまず難しい課題であるので、定量精度の評価から始めて状態密度への影響までを明らかにしたい。
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