Project/Area Number |
22K05275
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 36010:Inorganic compounds and inorganic materials chemistry-related
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
平石 雅俊 茨城大学, 理工学研究科(理学野), 研究員 (80712653)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2024: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2023: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2022: ¥2,600,000 (Direct Cost: ¥2,000,000、Indirect Cost: ¥600,000)
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Keywords | ミュオン / 不純物水素 / 周波数シフト / 局所構造 / 化学シフト / DFT |
Outline of Research at the Start |
半導体や太陽電池材料などの機能性物質において、ごく僅かに含まれる不純物水素がその特性に影響を与えることが知られている一方で、不純物水素の電子状態を直接調べることは極めて難しい。本研究では、水素の軽い同位体であるミュオンを用いるミュオンスピン回転法に着目した。ミュオンの化学シフトと呼ばれる局所的な電子状態を反映する物理量を測定し、第一原理計算による局所的な構造歪み計算の結果と組み合わせることで、希薄極限にある擬似水素としてのミュオン化学シフトと構造パラメータの相関関係を調べ、機能性物質中における水素の電子状態に関する知見を得ることを目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
2023年度に採択されたビームタイムにおいて、単純な結晶構造のZnO, VO2, RuO2, CeO2, β-Ga2O3を用いて高横磁場でのミュオンスピン回転 (μSR) 実験を行った。いずれの試料も、茨城県東海村にあるJ-PARCのMLFにて零磁場でのμSR実験を行っており、本研究で着目する反磁性ミュオン (Mu+または、物質中で電子を2つ捕獲したMu-) の収量の温度依存性などが明らかになっている試料である。その中で、本研究では着目しない中性状態 (ミュオニウム) の収量が0で、かつ磁性も存在しないRuO2のデータを中心に解析を行った。得られたミュオン周波数シフトと、あらかじめ行っていた構造緩和計算で得られた水素の構造パラメータは、これまでに報告されている水素化物でのH-NMRによる化学シフトと構造パラメータの間で見られる直線関係と矛盾しない結果を得た。本研究で提案する手法が、他の手法では検出が難しい希薄水素の電子状態 (局所構造、荷電状態) を調べる新たな手法となりうることを示唆している。ただし周波数シフトの補正に必要な磁化率はRuO2の文献値を用いたものであるため、今後、本測定で使用した試料そのものの磁化率を測定して補正し直す予定である。 解析で得られた擬似水素としてのミュオンの周波数シフトと構造パラメータの相関関係は、H-NMRで報告されている直線関係からわずかに負のオフセットを示している。データ点が予備測定のデータを含めて現時点では3点しかないこともあり、詳しい原因はまだ分かっていないため、今後の検討課題である。現時点では、H-NMRの構造パラメータでは水素結合の角度が180度となっている一方で、本研究で着目する不純物水素では、局所的な歪みが誘起されるため、その角度が180度からずれていることが原因ではないかと推測している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
高横磁場下でのミュオン実験は、現状では海外施設でのみ行える実験であり、研究初年度である2022年後期 (10月-12月) 用のビームタイム申請では不採択となってしまった。2023年度では前期 (4月-10月) 用のビームタイム申請が高い優先度で採択されたものの、実験の実施が10月であったため、研究の進捗が当初の想定から遅れてしまっている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で必要なμSR実験のデータの取得は完了したので今後は解析を進めていく。解析で得られる周波数シフトの補正に必要な磁化率の測定はまだ行っていないので、順次進めていく。また、複雑な形状の試料の反磁場係数の正確な評価も行う予定である。不純物水素としてのミュオン近傍の構造パラメータを得るために必要な第一原理計算による水素がもたらす構造緩和計算は概ね終了しているが、より高精度な計算 (超格子数の増加、計算精度に関わるパラメータの変更) をする必要があり、順次進めていく予定である。 これらのデータを用いて、擬似水素としてのミュオンの周波数シフトと局所構造パラメータを関係付けるモデルを構築する。既報の水素化物におけるH-NMRでは、水素結合しているOH-とO^{2-}間の距離 (H+)、またはヒドリドイオンH-と陽イオン間の距離と水素の化学シフトに直線関係が見出されている。不純物水素としてのミュオンの実験データでは、局所的に歪んだ効果を取り入れる必要があると考えているが、それだけにとらわれず、水素や近傍原子のBader電荷や、電子密度分布の空間異方性のデータなどで補正が可能かどうかなど、幅広い視点でデータ解析とその解釈を行う。
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