Project/Area Number |
22K05299
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 36020:Energy-related chemistry
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
森川 全章 九州大学, 工学研究院, 助教 (10363384)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,290,000 (Direct Cost: ¥3,300,000、Indirect Cost: ¥990,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
Fiscal Year 2022: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
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Keywords | ビスアゾベンゼン誘導体 / 光異性化 / 光相変化 / 光化学蓄熱システム / マルチアゾベンゼン誘導体 / 固液相変化 / 配位エンタルピー |
Outline of Research at the Start |
本研究は、分子凝縮系における光異性化反応に基づいて、光エネルギーを化学エネルギーとして高密度に貯蔵し、熱エネルギーとして放出する光化学蓄熱システムを開発する。そのため、融合型マルチアゾベンゼン誘導体を分子設計・合成し、分子内異性化エンタルピーを高めるとともに、凝固や配位結合の形成と異性化反応を同期させることにより貯蔵エネルギー密度を最大化させる。また、分子の結晶性や集積状態を制御することにより光応答速度を向上させ、各性能が高次元でバランスした光蓄熱性分子材料を創製する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、分子凝縮系における光異性化反応に基づいて、光エネルギーを化学エネルギーとして高密度に貯蔵し、熱エネルギーとして放出する光化学蓄熱システムの開発を目的とする。その戦略として、マルチアゾベンゼン誘導体を分子設計・合成し、分子内異性化エンタルピーを高めるとともに、凝固や配位結合の形成と異性化反応を同期させることにより貯蔵エネルギー密度を最大化させる。また、分子の結晶性や集積状態を制御することにより光応答速度を向上させ、各性能が高次元でバランスした光蓄熱性分子材料を創製する。 昨年度までに、二つのアゾ基をメタ位で連結したビスアゾベンゼン誘導体を系統的に合成した。側鎖にメトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、ネオペントキシ基を導入したトランス体の化合物について、希薄溶液から結晶性キャスト膜を作製した。これらの薄膜に対してUV光照射を行ったところ、側鎖にネオペントキシ基を導入した化合物は光照射前後において、全く光異性化は進行しなかった。一方、その他の化合物については、トランス体からシス体への光異性化に伴って結晶が光融解した。また、可視光照射によってシス体からトランス体へ光異性化し、液体から結晶へ可逆的に光相変化することを見出した。このような光相変化現象と結晶構造との関係について調査するために、各化合物の単結晶X線構造解析を行った。その結果、光相変化を示さなかったネオペントキシ基を側鎖に有する化合物は、分子が逆並行にインターデジテイトした密な充填構造を取っていることが示された。一方、メトキシ基を導入した化合物は隣接分子がπ-πスタッキングせずにエッジオン配向していることが判った。このように、光相変化現象は化合物の結晶構造と密接に関係することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画では、マルチアゾベンゼン誘導体を系統的に合成し、溶液中における光・熱異性化特性を明らかにし、側鎖の置換基により室温にて液体および固体結晶の化合物を合成することを目標に掲げていた。昨年度までにこれらの目標を達成するとともに、結晶性キャスト膜について光相変化と結晶構造の相関を明らかにした。また、示差走査熱量測定(DSC)から各化合物のトランス体の融点・凝固点を調べるとともに、UV光照射により得られたシス体の化合物が室温では液体として得られることを見出した。シス体の各液体化合物についてDSC測定を行ったところ、40℃から80℃の範囲でブロードな発熱ピークが観測された。これはシス体からトランス体への熱異性化に伴う発熱と帰属される。興味深いことに、側鎖にメトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基を導入した化合物では熱異性化による発熱に加えてトランス体の液体から結晶への相変化に基づく鋭い発熱ピークも同時に観測された。単位重量当たりの蓄熱量は異性化熱に相変化潜熱が上乗せされることにより著しく増大した(約 400 J/g)。この蓄熱量は、構造の明確なアゾベンゼン誘導体を基本骨格とする光蓄熱性分子の中では最も高い値であり、当初予期していた通りに研究が進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度までに得られた知見を基にして、本年度は金属イオンと配位子の可逆的な結合特性に着目し、光異性化により配位結合の形成/解離を制御し、配位エンタルピーと異性化エンタルピーを同時に獲得できる新しい光化学蓄熱システムを開発する。これまでに、光異性化能を有する金属錯体は数多く報告されてきたが、電子・磁気特性や粘弾性の光制御などが主目的であった。これに対して、本研究では光化学蓄熱性分子材料の貯蔵エネルギー密度を増大させることが目的である。そのため、ピリジル基を有するマルチアゾベンゼン誘導体とロジウム二核錯体を用い、光異性化による一次元配位高分子の重合制御について検討する。シス体の配位子では片方の軸配位が解離してモノマーとなり、トランス体では両方のピリジル基が配位して一次元配位高分子を形成させることができれば、配位熱と合わせて約200 kJ/mol の巨大なエンタルピー変化が見込まれる。また、上述の高分子材料の薄膜を作製し、光吸収効率を高め可視光照射などにより実用的な熱エネルギーを取り出すために必要な要件を明らかにする。
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