Project/Area Number |
22K05345
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 37030:Chemical biology-related
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
鈴木 紀行 千葉大学, 大学院薬学研究院, 准教授 (10376379)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,030,000 (Direct Cost: ¥3,100,000、Indirect Cost: ¥930,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
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Keywords | 生体微量元素 / セレニウム / 酸化ストレス |
Outline of Research at the Start |
セレン糖は生体内のセレン代謝物としては特異な化学形態を有する重要な生体分子群であるが、現在に至るまで生合成経路や生体内における役割などの基礎的な知見すら得られていない。申請者らは最近、セレン糖の生合成中間体と考えられているSeSugar Aの合成に世界で初めて成功し、そのサンプルを用いて分析条件を再構築することで効率的な分析法を確立した。このような背景のもと、本研究においてはセレン糖、特に従来はセレン糖生合成の単なる中間生成物と捉えられてきたSeSugar Aについて、その生合成経路と生体内における役割の解明に挑む。
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Outline of Annual Research Achievements |
セレン糖は生体内のセレン代謝物としては特異な化学形態を有する重要な生体分子群であるにも関わらず、現在に至るまで生合成経路や生体内における役割などの基礎的な知見すら得られていない。申請者らは最近、セレン糖の生合成中間体と考えられているSeSugar Aの合成に世界で初めて成功し、そのサンプルを用いて分析条件を再構築することで効率的な分析法を確立した。このような背景のもと、セレン糖、特に従来はセレン糖生合成の単なる中間生成物と捉えられてきたSeSugar Aについて、その生合成経路と生体内における役割の解明することが本研究の目的である。 令和4年度までに、本研究によって、従来は肝臓中にのみ存在すると考えられていたSeSugar Aが、実は腎臓や腸管、血液などの様々な組織中にタンパク質結合型として存在しており、さらにそのSeSugar Aがセレンタンパク質の生合成に利用されていることを明らかにしてきた。その研究成果を踏まえ、令和5年度においては、SeSugar Aを静脈内投与した際の各組織中のセレン量およびセレンタンパク質量の経時変化を追跡し、SeSugar Aがどのように各組織に輸送され、利用されているかをより直接的かつ詳細な解析を行なった。また培養細胞レベルでのセレン利用の検討も行い、HepG2に対してSeSugar Aを処理した際にそのセレンが細胞内に取り込まれ、セレンタンパク質の生合成に利用されるのかについて検討を行なった。その結果、実験動物および培養細胞レベルでSeSugar Aをセレン栄養源として利用する機構が存在することが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の申請書においては当初、令和5年度の研究計画として生体内におけるセレン輸送担体としてのSeSugar Aの評価を行うことを計画していた。本研究の目的を達成するためには、様々な条件下におけるSeSugar Aの体内分布および動態を詳細に検討する必要があるため、セレンの栄養源として通常摂取されるセレノアミノ酸類やセレン酸、亜セレン酸などのセレン化合物を投与後、生合成されるSeSugar Aの各組織中濃度を定量分析し、その経時変化を解析することでSeSugar Aが主にどの組織中で生合成されているのかについて明らかにすることを予定していた。しかしながら実際にはこの検討は令和4年度までに完了していたため、令和5年度においてはその次の段階として、生合成されたSeSugar Aがどのように輸送され、分布し、利用されているのかを解明するための検討として、化学的に合成したSeSugar Aを実験動物に静脈内投与し、その分子内に含まれるセレンがセレンタンパク質の生合成に利用されるのかについて検討を行なった。また培養細胞株であるHepG2に対しても同様の検討を行い、SeSugar Aがセレン栄養源として利用されうる、すなわちSeSugar Aが生体内におけるセレン輸送担体としての役割を果たしていることを明らかにした。本研究は、この部分においては当初の計画以上に進展している。 その一方で、令和4年度の実績報告書に記載したGlcNAc型、GalN型などの生体内のセレン糖としてはマイナーな糖部分の構造の異なるセレン糖類の有機合成を行う計画に関しては、合成が計画と通りに進展しておらず、GalN型については合成を完了していない。 以上のように予定以上に進展している部分と遅れている部分を併せた評価として、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究によって、令和5年度までに生体内におけるSeSugar Aの役割について、その大枠を解明するに至った。そこで令和6年度においては、糖付加体であるSeSugar A、またそのメチル化体であるSeSugar Bの生合成経路の解明に焦点を絞り研究を進めていくこととする。昨年、哺乳類のみならず細菌類もSeSugar Aを生合成するという報告がなされ、セレン糖は生物が利用可能な天然のセレン化合物として、いわば生物界におけるセレンのプールとして自然界に広く分布しているということが示唆されている。そこで本研究においては、セレンの代謝に関わる遺伝子を動物界や菌界など界を跨いだ遺伝子探索と機能予測を行い、哺乳類におけるSeSugar A合成酵素、SeSugar B合成酵素の同定を行う。さらに明らかにした代謝経路を既存のセレン代謝マップに当てはめ、マップの完成を目指す。 またSeSugar Aについてその主たる糖部分としてなぜGalNAcが選択されているのか、またセレン化合物については多くの場合、その硫黄等価体が存在するにも関わらず、セレン糖についてはセレンと硫黄が置換された化合物が全く存在しないのは何故なのか、といったセレン糖が発見されてから20年近くも未解明の問題に対する解答を得るために、令和5年度に引き続き、GalNAc型のセレン糖類だけではなく、GlcNAc型、GalN型などの生体内のセレン糖としてはマイナーな、糖部分の構造の異なるセレン糖類についても有機合成を行い、同様の検討をおこなっていく。
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