糸状菌における環境応答と酵素生産を協調的に制御する分子機構の解明とその応用
Project/Area Number |
22K05413
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 38020:Applied microbiology-related
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Research Institution | Osaka Metropolitan University |
Principal Investigator |
谷 修治 大阪公立大学, 大学院農学研究科, 准教授 (80405357)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
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Keywords | 糸状菌 / Aspergillus aculeatus / セルラーゼ / キシラナーゼ / 遺伝子発現制御 / 酵素生産 / 形態形成 / 糖質加水分解酵素 / 酵素高生産 |
Outline of Research at the Start |
糸状菌の糖質加水分解酵素を利活用するには、種々の基質特異性を有す複数の酵素を包括的に高生産する技術を開発する必要がある。これまでに申請者は、A. aculeatusにおける糖質加水分解酵素生産を調節する新規制御因子を複数同定し、各因子が異なるシグナル伝達経路に関与していることを明らかにした。そこで本研究では、申請者らが同定した制御因子の機能を多面的に解析し、シグナル伝達経路のクロストーク機構を解明すると共に、同定した制御因子の機能改変による種々の酵素の包括的な酵素高生産技術を開発する事を目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
多糖分解酵素生産糸状菌 Aspergillus aculeatus において、我々が同定した酵素遺伝子の発現を制御する複数の因子が、糸状菌の形態形成や環境応答機構など、複数のシグナル伝達経路を制御することを見出した。本研究では、それぞれの因子が異なるシグナル伝達経路を制御する分子機構を解明することを目的としている。 UDP-glucose 4-epimerase (Uge5): A. aculeatusにおけるセルラーゼ遺伝子群の発現は、セロビオースとマンノビオースに応答して発現が誘導される。この内、Uge5はマンノビオースに応答した遺伝子発現制御のみに関与することを明らかにした。この選択的遺伝子発現制御にUge5の反応産物が関与している可能性を検証している段階であり、新たな知見を得られるものと期待している。 Serine-arginine protein kinase F (SrpkF): 416アミノ酸からなるSrpkFは、328番目以降のアミノ酸を欠失した場合に、セルロースに応答した酵素遺伝子発現が低下し、塩ストレス条件下における胞子形成能が低下する。本年度、328-416アミノ酸領域内の推定リン酸化部位をアスパラギン酸或いはアラニンに置換したSrpkFを作出して解析したところ、酵素生産量向上に関わるアミノ酸とSrpkFのN末端とC末端の分子内相互作用に関わるアミノ酸を同定するに至った。 Dipeptidyl peptidase IV (DppIV): dppIV遺伝子破壊株では、セルラーゼ遺伝子の発現が低下する一方で、高発現株では参加ストレス耐性を獲得する。この酸化ストレス応答にはDppIVのペプチダーゼ活性が関わる場合と関わらない場合があることを発見し、現在その機能ドメインの同定を目指している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
A. aculeatusにおけるセルラーゼ遺伝子群の発現は、セロビオースとマンノビオースに応答して誘導される。この誘導はいずれも転写因子ManRを介して制御されている。この誘導経路に関わる因子として同定されたUge5は、マンノビオースに応答した遺伝子の発現を誘導する。また、uge5破壊株は細胞壁合成阻害剤に感受性になる。これはUge5が細胞壁構成糖の供給に関わっており、uge5破壊株の細胞壁が脆弱になることに起因すると考えられる。一方で、隔壁形成に関わる因子の破壊株は同様に細胞壁阻害剤に感受性になるが、こちらの因子は主にセロビオースに応答した遺伝子発現に関わることを見出した。現在、この現象を引き起こす分子機構を解析しており、新たな知見が得られるものと期待に胸を膨らませている。加えて、ManRを介した選択的遺伝子発現制御に関わる候補転写因子の限定に成功した。現在、機能を解析している。 SrpkFの推定リン酸化部位を限定し、糖質加水分解酵素遺伝子の発現抑制因子creAの破壊株でリン酸化・非リン酸化を模したSrpkFを発現することにより、酵素生産量を増加することに成功した。 A. aculeatusにおいてdppIVを高発現すると酸化ストレス耐性を獲得する。このメカニズムにペプチダーゼが関わる機構と関わらない機構があることが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
Uge5はUDP-glucoseとUDP-galactoseの相互変換を触媒する酵素である。そこで、uge5の機能を調べるにあたり、Uge5の反応産物が酵素遺伝子発現に与える影響を解析することを計画した。Uge5の反応産物による酵素遺伝子発現への影響を解析するにあたり、Uge5 パラログ因子を破壊し、反応産物の影響をより解析しやすいように工夫している。また、Uge5を介した誘導物質に応答した選択的な遺伝子発現制御に関わる因子の同定を目指して研究を進めている段階である。 SrpkFのC末端側328-416アミノ酸部分のセリン残基がSrpkFの活性調節に寄与していることが示唆された。推定リン酸化アミノ酸の役割を解明することにより、形態形成と酵素生産のクロストーク制御機構の一端を明らかにする。 DppIVはN末端から2番目のアミノ酸がプロリンかアラニンの場合、そのC末端側を加水分解してジペプチドを生じる酵素である。この基質特異性は大腸菌、カビ、ヒトで保存されているものの、カビにおける生理的な基質は未同定である。引き続きDppIVの基質の探索を行う。
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Report
(2 results)
Research Products
(10 results)