新規酵素によるいもち病菌の植物免疫回避とイネのカウンター防御の分子機構の解明
Project/Area Number |
22K05447
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 38030:Applied biochemistry-related
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
大沼 貴之 近畿大学, 農学部, 教授 (60446482)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2024: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2022: ¥2,080,000 (Direct Cost: ¥1,600,000、Indirect Cost: ¥480,000)
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Keywords | 植物免疫 / いもち病菌 / キチナーゼ / キチンオリゴ糖 / 植物病原菌 / エリシター |
Outline of Research at the Start |
本研究は、イネいもち病菌Magnaporthe oryzae(M. oryzae)の分泌するGH18キチナーゼであるMoChia1のキチンオリゴ糖エリシター分解活性を利用した、植物の免疫応答であるパターン誘導性免疫PTI(Pattern-Triggered Immunity)の回避と、イネのMoChia1に対して阻害活性を示すOsTPR1タンパク質を利用した、M. oryzaeのPTI回避を妨げる“カウンター防御”の分子機構を明らかにすることにより、感染の成立と不成立をもたらす要因を分子レベルの解像度で明らかにしようとするものである。
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Outline of Annual Research Achievements |
蒸気拡散法によりMoChia1の結晶を作製後、X線結晶構造解析によって立体構造を決定した。結晶化条件の初期スクリーニングにおいて数条件下で結晶を得ていたが、それらを用いたX線の回折実験では構造解析に十分な回折像が得られなかった。その後、結晶化条件の最適化およびタンパク質のトリミングを行うことにより、構造決定に至った。構造決定においては、AlphaFold2を用いて作製したモデル構造を分子置換法に使用して位相決定を行った。既報のエンド型GH18キチナーゼには、分子表面を横断するような基質結合クレフトがよくみられるが、MoChia1の分子表面にはエキソ型の酵素に特徴的なポケット型の基質結合部位が形成されていることが明らかとなった。基質結合部位を詳しく見てみると、基質結合サブサイト+2に相当する位置にAsn195が存在し、同アミノ酸残基を含むループ構造が“壁”を形成することにより、+2から先のプラス側サブサイトを塞いでいることがわかった。MoChia1とキチンオリゴ糖とのドッキングシミュレーションを行った結果、Asn195の側鎖と基質のアノマー位のヒドロキシ基が水素結合を形成していること、さらにこの水素結合がMoChai1の基質分解におけるβアノマー選択性に寄与していることが示唆された。 還元末端を修飾した特殊オリゴ糖を基質に用いて、比色法によりMoChia1の酵素反応の速度論的解析を行った。その結果、キチンオリゴ糖5糖に対する kcat/Km値は、3糖に対する同値よりも約9倍大きいことがわかった。また、両基質に対するkcat値はほぼ同じであることから、kcat/Km値の差はKm値の違いによるものであることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
全長のOsTPR1の組換え型タンパク質の発現を試みたところ、封入体が形成された。そのため発現条件の検討を行ったが改善されなかったことから、OsTPR1をSUMO(small ubiquitin-related modifier)タグとの融合タンパク質として発現させた。その結果、発現量および溶解度が大幅に改善されたことから、同融合タンパク質を精製後、MoChia1との結合実験および阻害実験に使用した。ITCを用いてMoChia1_E116Q変異体と(GlcNAc)nおよび野生型MoChia1とOsTPR1の結合実験を行ったところ、いずれの実験においても相互作用に伴う吸熱もしくは発熱反応が観測されなかった。そのため、それぞれの相互作用における熱力学的パラメーターの決定に至っていない。また、OsTPR1存在下でpNP-Chitobiosideに対するMoChia1の加水分解活性を測定したが、同タンパク質によるMoChia1の阻害活性は検出されなかった。OsTPR1はSUMOタグとの融合タンパク質の形で実験に使用したため、SUMOタグ部分がOsTPR1本来の機能に干渉した可能性が考えられた。OsTPR1単独およびMoChia1とOsTPR1の共結晶の結晶化条件の初期スクリーニングを約600条件下で行ったが、現在までのところ結晶は得られていない。
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Strategy for Future Research Activity |
OsTPR1はSUMOタグとの融合タンパク質の形では、MoChia1との結合および阻害活性発現に影響を及ぼす可能性が考えられた。そのため、今後はSUMOプロテアーゼによりタグ部分を切断後、精製したノンタグのOsTPR1を用いて、再度MoChia1との結合実験および阻害実験に使用することを計画している。ITCを用いたMoChia1_E116Q変異体と(GlcNAc)nの結合実験では熱の出入りを観測することはできなかった。しかし(GlcNAc)nはMoChia1の良好な基質であることから、両者が相互作用することは明確である。今後は結合実験の実験条件を変更し、結合の熱力学的パラメーターの決定を試みる。 MoChia1の立体構造の決定に成功したことから、今後はMoChia1と(GlcNAc)n複合体の構造決定を試みる。(GlcNAc)5がMoChia1と比較的強く結合し、溶解度も高いことから、同リガンドとの複合体構造の決定を目指す。複合体の結晶は、MoChia1結晶への(GlcNAc)5のソーキングと両者の共結晶により作製を試みる。複合体結晶が得られた場合は、高エネルギー加速器研究機構でのX線回折実験を速やかに遂行し、複合体構造の決定を行った後、MoChai1の基質認識機構の詳細を明らかにする。
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Report
(2 results)
Research Products
(1 results)