Project/Area Number |
22K05450
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 38040:Bioorganic chemistry-related
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
岡田 洋平 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (80749268)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
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Keywords | 中分子 / 液相合成 / 中分子医薬品 |
Outline of Research at the Start |
生物の高効率な物質生産プロセスは,光エネルギーによる電子移動反応の制御と,主としてリン脂質によって水中に構築された疎水性反応場の活用が基盤技術となっている.研究代表者はこのような生物プロセスから着想を得て,これまでに電子移動反応の制御に基づく独自の分子変換技術ならびにナノ反応場を活かした中分子の液相合成技術に関する研究開発を推進してきた.これまでの研究において,いずれの手法も生体分子の選択的な活性化や高度な修飾に広く応用可能であることを実証している.本研究ではこれらの学術基盤を深化・融合させることでhead-to-tail型の環状ペプチドを高純度かつ大量に供給できる新たな化学合成法を確立する.
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Outline of Annual Research Achievements |
化学合成による大量供給が可能な低分子医薬品に対して、近年では主として抗体を用いるバイオ医薬品が大きな注目を集めている。バイオ医薬品では副作用のリスクを低減させることで低分子医薬品を凌駕する薬理活性が期待されるものの、化学合成による供給は不可能であり製造に大きなコストを要する。また、代謝によって分解されてしまうことから経口投与が不可能であり、QOLの低下に繋がってしまうこともデメリットとなっている。このような背景を踏まえて、最近になってペプチドを中心とする「中分子」の創薬研究が世界的に進められてきた。従来、短鎖ペプチドには高い薬理活性が期待できないと考えられていたものの、近年では特殊アミノ酸や分子内環状構造の導入によって極めて有望な医薬品候補となり得ることが見出されている。しかしながら、特に分子内に環状構造を有するペプチドについては引き続き合成が極めて困難な化合物群として認識されており、活性試験に必要な量を供給することさえ全く容易ではないのが実情である。また、特殊アミノ酸には高価なものが多く、特に過剰量の試薬を必要とする従来の固相合成法では、大量供給の障壁となっている。このような背景を踏まえて、研究代表者らは疎水性の低分子化合物を可溶性の「タグ」として用いる液相合成技術の研究開発を推進してきた。タグそのものの高機能化に加えて合成プロセスの検討を進めることで、薬理活性が報告されている様々なペプチドをグラムスケールで合成することが可能となっている。これまでの研究において、単位体積当たりの生産効率を高めることを志向して、溶解性を高めた新たなタグの創出を実施している。また、縮合剤の使用量を低減することを目指して、電気化学の手法を採り入れた方法論の開発にも注力している。現在までの研究において、立体的に嵩高く縮合することが困難な特殊アミノ酸も含めた様々なペプチドの液相合成に成功している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究代表者らが研究開発を進めてきたペプチドの液相合成技術では、長鎖アルコキシ置換基を有する疎水性のベンジルアルコールが可溶性のタグとして極めて重要な役割を果たしている。これらの化合物は没食子酸や脂肪酸といった天然物あるいはその誘導体から容易に合成することができ、大量供給も可能である。2年目となった2023年度には、1年目に引き続きタグそのものの合成方法を見直し、効率的に大量製造が可能となる技術開発を進めた。その結果、タグの合成において各反応工程における収率を高めるとともに、分離精製においても大幅な改善が見られた。また、得られたタグを用いる液相ペプチド合成のプロセスについても検討を進め、タグに結合したペプチドの溶解性を高めつつ、使用する溶媒量を削減することに成功している。また、研究代表者らによってこれまで研究開発を進めてきた電気化学的な手法を用いる有機反応の技術を応用することで、ペプチド合成において繰り返されるアミド結合形成反応についても技術革新を図っている。通常、アミド結合の形成には量論量の縮合剤が必須であり、反応終了後にはこれらが全て廃棄物として蓄積することになる。アミノ酸のカルボキシ基はそのままでは反応性に乏しいため、縮合剤によって予め活性化した上で、アミノ基と反応させることが定石となっている。本研究では足りない反応性を電気エネルギーによって供給する独自のアミド結合形成反応について研究開発を進め、天然型のみならず立体的に嵩高く縮合反応に供することが困難な非天然型のアミノ酸についても広く適用可能な方法論を見出している。特に2年目となった2023年度においては、これまでアミノ酸の種類によって左右されていた反応性をより一般化し得る方法論を確立し、より穏やかな反応条件でアミド結合を作ることに成功している。これらの理由から今年度の研究をおおむね順調に進展しているものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究を推進する上で極めて重要となるものは、可溶性タグの高機能化とプロセスそのものの最適化である。特にプロセスについては合理的な予測だけに基づくものではなく、試行錯誤によって得られるノウハウも大きなウェイトを占めるものとなる。特にペプチドの場合には、アミノ酸配列の僅かな違いが大きな物性や反応性の違いを与えるケースが頻出するため、単一の方法論が常に適用できるわけではないという本質的な課題を抱えている。実際に本研究においても、アミノ酸配列や全長が僅かに異なるだけのペプチドであっても溶解性が全く異なるケースや、縮合反応が劇的にスローダウンしてしまう例が見られているのが実情である。これらの情報は二次元に描き起こされた構造式から合理的に予測することは事実上不可能であり、実際に合成した上で、一つ一つの事例を蓄積していくことによってのみ傾向を掴んでいくことが求められる。現時点では、ペプチドのアミノ酸配列と物性の関係性を合理的かつ体系的に報告している例はほとんどなく、多くの場合、ペプチド合成は「実際に作ってみるまでどうなるかわからない」状態である。このような背景を踏まえて、今後の研究の推進方策として、引き続き研究代表者らの取り組みとしては、合成実施例を蓄積し、少しでもこれらを体系的に理解できるように努める。また、近年では機械学習を活用した研究が活発に行われており、多くの分野で大きな成果を挙げている。これらは学習させるべきデータ量が成否を分けるものであり、ペプチドのアミノ酸配列と反応性や物性については、十分な報告例がないのが実情である。本研究課題で取り組むべき範囲からは逸脱するものの、中長期的には機械学習による物性予測が可能になるレベルで、分子構造と物性の関係性についてのデータが提供できることを目指して今後の研究を推進していく。また、引き続き電気化学を採り入れた方法論についても検討を進める。
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