種子をまいて1年で開花するサクラの幼樹開花原因遺伝子の解明とその果樹育種への応用
Project/Area Number |
22K05613
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 39030:Horticultural science-related
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
江角 智也 島根大学, 学術研究院農生命科学系, 教授 (30548764)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
白澤 健太 公益財団法人かずさDNA研究所, 先端研究開発部, 室長 (60527026)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,030,000 (Direct Cost: ¥3,100,000、Indirect Cost: ¥930,000)
Fiscal Year 2024: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2022: ¥2,340,000 (Direct Cost: ¥1,800,000、Indirect Cost: ¥540,000)
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Keywords | ワカキノサクラ / 幼樹開花 / 一年生 / サクラ / 実生 / 開花促進 / RAD-seq解析 / 稚木の桜 / 種間雑種 / 遺伝子解析 |
Outline of Research at the Start |
サクラ遺伝資源の中に、種子をまいて1年で開花する‘稚木の桜’(わかきのさくら)があります。このサクラの幼樹開花性の原因遺伝子を次世代シークエンサーによる解析で解明し、木本植物が初開花するまでに長い期間が必要な理由ついて知見を得ることを目指します。さらに、バラ科サクラ属における種間雑種の作出により、種をまたいで幼樹開花性形質を橋渡しすることを試みます。また、ゲノム編集技術を用いて遠縁の果樹への形質導入も試みます。
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Outline of Annual Research Achievements |
一昨年度,ワカキノサクラとソメイヨシノの交雑による実生後代の幼樹開花形質の分離集団(約70個体)を用いてRAD-seq解析を行って,幼樹開花個体に特異的なSNPsの探索を試みたが,集団が小さかったためか,形質に関連したSNPsを検出できなかった.そこで,後代集団の拡張が必要と考え,新たなF1集団の作出,さらに,既に幼樹開花した9個体を用いた戻し交雑(BC)集団やそれらの総当たりの正逆交雑によるF2集団の作出を行った.作成した新たな集団のいずれでも幼樹開花性の形質の分離が観察されたため,現在,これら個体を用いてRAD-seq解析を進めている.後代実生の数は全部で,R4年度作出分が約500個体,R5年度作出分が約800個体となっている. また同時に,採種や播種から初開花までの期間を短縮する栽培法の検討も行った.特に採取後の層積貯蔵(冷蔵庫)から取り出して発芽させる時期について検討を行った.通常は採種翌年の春に発芽させるが,R4年度は11月下旬に発芽させて育成を開始し,翌年7月から9月にかけて幼樹開花する個体を観察できた.採種からおよそ1年程度で開花に至らせることに成功した.そこでR5年度は,10月上旬に発芽させて育成を開始し,2~3月に開花する個体を観察できた.採種から7~8か月,発芽から4~5か月で,開花させることに成功した.幼若期間が長く初開花まで数年~十数年を要するのが一般的な木本植物において,1年以内で1世代の更新が可能であることが示された. さらに,この幼樹開花の形質を果樹に導入するため,幼樹開花した個体とオウトウとの種間交雑を行い,雑種作成も進めている.これまでに2個体獲得して育成しているが,2年目の春でも開花はみられなかった.雑種の種類や数を増やす試みを行っている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
幼樹開花性の原因遺伝子の探索・特定の解析については,サンプルの集団拡張のために時間を要したが,十分な数の後代実生個体が確保できたと考えられ,現在,遺伝子解析の実験進行途中である. また,発芽時期を早めるよう育成方法を工夫することで,交配による交雑種子の獲得から次の交配までの期間,つまり交雑世代更新のサイクルを1年以内に短縮できることが示された.これは木本植物におけるフロリゲン遺伝子(FT遺伝子)を用いた遺伝子組換え体等のバイテク育種実験で得られているような成果と同等かそれ以上の画期的発見であり,有用な技術・植物素材を獲得・作出できた. 幼樹開花の形質を食用できる果樹に導入する試みとして雑種の作出を進めている.適切なタイミングで交配を行えば,種間交雑でもある程度の果実着果や交雑種子獲得が可能であることもわかってきた.雑種の種類と数を増やすために,3月最終週から4月1週目ぐらいの時期に集中的な交配試験を行っている.
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Strategy for Future Research Activity |
現在進めている遺伝子解析の結果が獲得でき次第,幼樹開花性にまつわる遺伝子発現の解析や制御機構解明など,研究を次のステップへ移行させる. この研究目的として“播種同年開花育成法”の開発を掲げているので,採集時期を通常の6~7月から5月中に早めたり,発芽させる時期を8月中に早めたりするなど,交雑種子獲得から発芽・育成法の工夫について追求し,年内の12月中に開花させることを目指す.ワカキノサクラを片親とする交雑種子やその後代の種子は,他のものに比べて種子休眠が浅いのではないかとも感じており,種子の休眠性に関するデータを得て,種子休眠に関与するとされる植物ホルモンや遺伝子と幼若期間との関係についても調査したい. 雑種育成については,様々な組合せでの交配試験を行い,より多くの後代雑種実生を獲得していくことを進める.
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Report
(2 results)
Research Products
(3 results)