Project/Area Number |
22K05645
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 39040:Plant protection science-related
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
杉本 貢一 筑波大学, 生命環境系, 助教 (00511263)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2024: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
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Keywords | 化学防衛 / 植物-植食者相互作用 / 二次代謝 / Solanum lycopersicum / 野生種 / 生物多様性 / 食害誘導遺伝子 |
Outline of Research at the Start |
植物が植食者からの攻撃に対抗する戦略として、常に防衛物質を蓄積する恒常的防衛と食害に応じて防衛物質を作り始める誘導的防衛が知られており、それぞれの種が生育と防衛に割くことができるリソース量の分配によって異なる戦略を選択してきた。しかし恒常的/誘導的な代謝制御がそれぞれどのようにして進化・成立してきたのかは明らかになっていない。本研究では食害誘導性フェノール化合物の生合成制御をモデルとして「植物種による防衛戦略の違いが、遺伝子発現調節領域の変化によってもたらされる」という仮説の実証とそのメカニズムの検証を行う。
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Outline of Annual Research Achievements |
LC-MS/MSによる精密質量分析により、食害誘導性化合物の構造がスペルミン(ポリアミン)とダイハイドロカフェ酸(フェノール化合物)の重合体であることを明らかにした。構成成分であるポリアミンおよびフェノール化合物はそれぞれストレス応答や細胞構造の形成に必須の化合物であるため、食害誘導性化合物特異的な生合成ステップはこの2つの構成成分を結合させる反応である。異なるポリアミンを基質として、同様の反応をin vitroで担う酵素が昨年プレプリント論文で発表され、その酵素と同様のアミノ酸配列をコードすると考えられるBAHD アシルトランスフェラーゼ遺伝子がトマトゲノムの中に5遺伝子存在することを明らかにした。この5遺伝子をターゲットとするガイドRNAを設計し、ゲノム編集コンストラクトを作製した。このコンストラクトをアグロバクテリウムに導入し、アグロバクテリウムをトマト子葉に感染させることでゲノム編集カセットをトマトゲノムに挿入した。アグロバクテリウムが感染したカルスからシュートおよびルートを再分化させ、合計25個体の再分化個体を得た。フローサイトメーターによる倍数性の測定から、このうち16個体にゲノム倍加が起こっていたことを明らかにした。最終的に合計11系統のT0植物の葉からゲノムDNAを抽出し、ターゲットサイト前後を含むPCR産物をダイレクトシーケンスで解析したところ、様々なパターンでの編集個体が得られていることが明らかになった。11系統の中には、複数の遺伝子に対してフレームシフトを引き起こしている系統や、特定の遺伝子のみに対して編集が働いているものなど様々な編集パターンを得ることができた。中にはヘテロアレルではあるものの、5遺伝子すべてに編集が入った系統も得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の核となる、新規食害誘導性化合物の構造が明らかになりつつある。現在までの解析によって構成ユニットであるポリアミンとフェノール化合物が重合した化合物であることを明らかにしたのは大きな進展である。一方で結合位置の異なる同位体が予想されたため、引き続き立体構造の解析が必須である。当該化合物の生合成経路の同定は当初の予定では化合物の構造から推測する計画であったが、別のグループから食害応答とは異なる文脈において、網羅的な生化学的機能の解析に関するプレプリントとして発表された。当該プレプリントに掲載されたデータを参照し、推定された食害誘導性化合物の生合成候補遺伝子を5つ抽出し、ゲノム編集によってひと足先にin plantaでの生化学的機能を明らかにする実験を開始した。この切り替えによって、計画していたin vitroでの遺伝子機能よりもより一段深いレベルでの植物遺伝子の機能を明らかにすることができる。また、ゲノム編集によって当該遺伝子の変異体が得られた際には、植害虫のバイオアッセイを行うことによって当該化合物がトマトの食害防衛においてどれくらいの役割を担っているかを明らかにすることができる。これは遺伝子機能を植物生理学的に明らかにすることができる実験になるため、当初の計画により深い生理・生態学的な考察を与えてくれることになる。現在ゲノム編集による変異体の作出が進んでおり、本研究計画が順調に進んでいることを示している。
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Strategy for Future Research Activity |
作出されたT0植物から種子を収穫し、T1世代においてT-DNAが脱落し、かつ変異がホモになった系統の選抜を行う。合計5遺伝子の完全ノックアウトの選抜は翌年度までかかることが予測されるが、各遺伝子の単独ノックアウトもしくは組み合わせパターンの異なる数遺伝子のノックアウト系統が作出できると期待される。作出した各系統に食害を模倣した植物ホルモン(ジャスモン酸)を処理することで防衛応答を誘導し、本研究で対象としている化合物の蓄積量に変化が起こるかどうかを解析する。コントロールとしては全く別の代謝経路に属する化合物もしくは遺伝子発現量の変化を測定する。この実験によって当該化合物の生合成に関与する新規生合成遺伝子の同定ができる。 遺伝子のin plantaでの機能同定には時間がかかることから、全候補遺伝子の発現変動を解析する。遺伝子発現解析用のサンプルには、上記ジャスモン酸処理の有無によるものを準備し、各候補遺伝子特異的なプライマーを用いて定量的RT-PCRによって解析する。可能であれば食害に応じた遺伝子発現変化の解析も行う。遺伝子発現変動に関しては、恒常的に化合物を蓄積させる野生種がもつホモログ遺伝子の発現変動も解析し、化合物蓄積量と遺伝子発現量の相関を解析する。また、当該遺伝子のプロモーター配列のクローニングを行う。
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