Project/Area Number |
22K05663
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 39040:Plant protection science-related
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
屋良 佳緒利 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 植物防疫研究部門, 上級研究員 (70354123)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2022: ¥2,080,000 (Direct Cost: ¥1,600,000、Indirect Cost: ¥480,000)
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Keywords | クリタマバチ / チュウゴクオナガコバチ / 伝統的生物的防除 / 土着寄生蜂 / シルベストリコバチ |
Outline of Research at the Start |
伝統的生物的防除は、侵入害虫を防除するために、その原産地から有力な天敵を導入して永続的な効果を狙うもので、その科学的理解の深化は、天敵を活用した減農薬栽培の推進にも寄与する。既往の研究は侵入害虫と導入天敵のみに主眼が置かれた断片的なもので、導入後の長期的かつ土着天敵をも含めた解析はない。本課題では、日本の2つの成功事例をモデルケースとして①導入・土着天敵は互いに影響しつつ、防除に貢献してきたのではないか、②既に定着した導入天敵が、別の新たな侵入害虫の抑止力となったのではないか、という疑問に答える。導入時には想定外の相互作用を解明し、今後、伝統的生物的防除を行う際に何が起こり得るかを推察する。
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Outline of Annual Research Achievements |
侵入害虫クリタマバチの導入寄生蜂チュウゴクオナガコバチが茨城県つくば市(現在)に放飼された1982年から40余年分の調査結果を整理、再解析した。これまでの知見は放飼後10年までで、その後30年の害虫、天敵の動態は明らかでなかった。解析の結果、防除成功と判断された放飼後10年以降に、一時的な害虫密度増加が3回認められたが、そのいずれもに連動した天敵密度増加が認められ、これにより害虫密度が速やかに低下しており、結果的に導入天敵が長期間にわたり害虫密度を抑えていることが明らかとなった。以上について論文公表した。 以上は自生のクリにおける調査結果であったため、栽培クリ園(現、茨城県かすみがうら市、1985年放飼)における36年分の調査結果を整理、解析した。自生グリの解析結果とは異なり、害虫密度低下以降に再増加は認められず、天敵もごく低密度で推移していた。栽培クリと自生クリとでの動態の違いに注目し、更に解析を進めている。 別の栽培クリ園(長野県小布施町、1992年放飼)についても10-15年分の調査結果を整理した。前述2つの調査地とは異なり、土着寄生蜂クリマモリオナガコバチ以外の土着寄生蜂の動態にも注目して解析を進めたところ、導入天敵放飼後に密度低下する土着寄生蜂(クリノタカラモンオナガコバチ)がいる一方、新たに発生が認められるようになった土着寄生蜂(クリタマオナガコバチ)もいることが明らかとなった。導入天敵放飼後に新たに発生、密度増加した土着寄生蜂についての報告はこれまでになく、このことについて論文投稿した。 北日本におけるチュウゴクオナガコバチ放飼後の害虫と天敵の動態の知見は、関東以西のそれと比較して極めて乏しい。そこで盛岡(岩手県)の天敵発生を調査した結果、2年1化と考えられる寄生蜂がごく少数だが得られた。前年までの調査で得られた試料と共にDNA解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
クリタマバチの伝統的生物的防除について、関東での最初の本格的放飼地における害虫クリタマバチと天敵チュウゴクオナガコバチの長期動態について論文化、公表に至った。並行して栽培クリ園における害虫と天敵の動態調査のとりまとめ、解析、一部投稿、および北日本における導入、土着天敵の分布等の実態把握について調査、解析を進めており、本項目については、概ね予定通りのペースで研究調査が進んでいると言える。 もう1つのモデルケース、寄生蜂シルベストリコバチによる伝統的生物的防除については、寄主(ミカントゲコナジラミ、チャトゲコナジラミ)、寄生蜂の採集を複数回試みたが、シルベストリコバチは全く得られず、代わりに別の寄生蜂(Amitus hesperidum nr.)の発生が認められたため、その分布等の実態把握の調査を検討中で、飼育試験が行えるようにカンキツ(甘夏)とチャの実生を作成している。当初計画で想定された結果とは得られた内容は異なるが、進捗状況は概ね予定通りと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
クリタマバチの伝統的生物的防除については、栽培クリ園における害虫、天敵の長期動態解析を進める。また、北日本におけるクリタマバチ寄生蜂の実態把握のための調査、解析を進める。ともに論文化、投稿化を目指す。 寄生蜂シルベストリコバチによる伝統的生物的防除については、サンプルの採集と解析を進めるとともに、相互作用解明のために随時各種室内操作試験が行える環境を確立するためのシルベストリコバチ、Amitus hesperidum nr.の継代飼育を検討する。 いずれも寄生蜂間の相互作用の解明を目的として解析を進めているが、当初の予想とは異なる結果が得られている。今後は想定外の結果が出たところに注目して解析を進め、今どのようになっているか、その現状を可能な限り調査し、解析を進めることとする。
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