Project/Area Number |
22K05667
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 39050:Insect science-related
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Research Institution | Obihiro University of Agriculture and Veterinary Medicine |
Principal Investigator |
熊野 了州 帯広畜産大学, 畜産学部, 教授 (90621053)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菊池 義智 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究グループ長 (30571864)
日室 千尋 琉球大学, 農学部, 協力研究員 (60726016)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
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Keywords | イモゾウムシ / ナルドネラ / 配偶行動 / 性選択 / 交尾器 |
Outline of Research at the Start |
イモゾウムシでは,外骨格や交尾器の硬化に必要なクチクラ形成を共生細菌ナルドネラに依存する.外骨格や交尾器は,体サイズが強く関与する雌による選択や精子輸送で重要で,共生細菌が宿主の性選択に直接関与することを示す.本研究では,クチクラ形成を操作し宿主の性的対立を緩和し,交尾器挿入時の雌内部構造の観察や雄由来物質輸送を定量化することで,宿主の配偶行動での共生細菌の役割を明らかにする.
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Outline of Annual Research Achievements |
サツマイモは暑さや乾燥に強く痩せた土地でも栽培でき,世界的な食糧問題を解決する可能性を持つ.しかし,害虫(イモゾウムシ,アリモドキゾウムシ)の食害は,サツマイモに防御物質として強毒性の生理活性物質を産生させるため,被害許容水準は極めて低く経済的損失が大きい.サツマイモ塊根内部で生育するゾウムシ類の化学的防除は困難で,従来にない手法での害虫管理技術の確立が世界的に求められている.日本では不妊虫放飼による防除が進められているが,より効果的に防除を進めるためには,配偶行動に関する知見が必要とされている.本研究で,配偶行動における共生細菌の役割や,野外での機能の変動を明らかにすることで,不妊虫として生産する放飼虫の虫質向上や,防除効果の高い季節の特定が可能になり,世界的な課題の解決に貢献できる.
不妊化した雄が野生雌と交配し父性を獲得することが防除効果につながるため,父性獲得のメカニズム解明が重要になる.本種の交尾器にはトゲが付属するが(Kumano et al. 2013),その位置や形状は,精子や再交尾抑制物質の輸送を高めている可能性を強く示唆しており,トゲ機能の解明が防除効果の向上につながる可能性がある.
交尾器のトゲは,硬さを伴い初めてその機能を果たすが,イモゾウムシでは共生細菌ナルドネラがその役を担う.このことは共生細菌が宿主の性選択を激化・駆動させている可能性があることを示しており,従来検討されたことがない系である.申請者の予備調査では,ナルドネラ機能を低下させた雄はコントロールと比べ,トゲ数の減少や交尾時間の短縮が観察されており,こうした結果が,共生細菌が性的対立を激化・駆動させていることを強く予感させる.そこで本研究では宿主体内のナルドネラを操作したオスを用いた配偶行動の観察を行い,宿主生物の配偶行動における共生細菌の役割について明らかにする.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請者らのこれまでの研究によって,イモゾウムシの蛹期の14日間に通常の飼育温度(25℃)に比べて高温(31℃)に暴露すると(以下,高温処理と呼ぶ),宿主であるイモゾウムシの性成熟時(羽化後14日齢)のナルドネラの数が減少することが明らかになっている.この手法によりナルドネラ数をコントロールしたオス成虫の交尾器のトゲの観察を行ったところ,トゲの数は減少しないものの,トゲ先端の尖度が有意に大きくなり,尖が鈍くなることが明らかになった.こうした変化は,トゲを形成するクチクラを作る共生細菌自体の減少もしくは宿主による共生細菌への投資(栄養物質など)の減少が引き起こしたものと考えられる.
昨年度の実験では,交尾器形態だけではなく配偶行動についても観察しており,高温処理を施したオスはそうでないオス(コントロール)に比べ,求愛行動の頻度(マウント回数)が有意に増加すると同時に交尾成功も有意に増加することが明らかになった.一方で,それぞれの処理で次世代数を比較したところ,高温処理を施したオスの適応度はコントロールに比べて低いことが明らかになった.当初「共生細菌失うと交尾成功が低下し,結果的に適応度が低下する」と予測したものの,「交尾成功の上昇と適応度の低下」という一見矛盾する結果が得られた.しかしこの結果は,交尾器のトゲの機能の低下(トゲの鈍化)による不完全な交尾姿勢が射精物の輸送量を減少させた,と考えることで現象を十分に説明できるものと考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の配偶行動の観察から,高温処理を施したイモゾウムシのオスはそうでないオス(コントロール)に比べ,求愛行動の頻度(マウント回数)と交尾成功がいずれも増加することが明らかになった.交尾成功が上昇する理由として,昨年度の実験で示された求愛の定量的な変化(マウント回数)の他に,求愛行動の質的な変化の可能性も考えられる.これまでのイモゾウムシの配偶行動の研究で,オスは求愛時に鞘翅と腹部を摩擦することで生じる「求愛声」を発することが明らかになっている.本研究で利用する高温処理を施したオスは,外骨格の形成が十分ではなく,通常の個体と比べ,求愛声の質的な変化が生じている可能性がある.そこで今年度の実験では,配偶行動を観察する際に,交尾時間と共に,求愛声の周波数・持続時間・頻度を,ICレコーダーを利用して録音し,処理区とコントロールで比較する.この実験により,本種のメスが好むオスの求愛声の特性を明らかにすることができる.また,配偶後のメスの解剖により,貯精のうに輸送された精子の数を処理区とコントロールで比較する.昨年度の結果より,処理区の輸送精子数はコントロールに比べて少ないことが予測される.
イモゾウムシは化学的防除が適用できない難防除害虫で,沖縄では不妊虫放飼による防除が進められているが,本研究により配偶行動における共生細菌の役割が明らかになることで,共生細菌管理の方向性を示し,より効率的な防除を進めることができると考えている.
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Report
(1 results)
Research Products
(11 results)