汽水域生態系における気候変動の影響を歴史生態学の手法で評価する
Project/Area Number |
22K05702
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 39060:Conservation of biological resources-related
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Research Institution | Fukui Prefectural Satoyama-Satoumi Research Institute |
Principal Investigator |
宮本 康 福井県里山里海湖研究所, 研究部門, 研究員 (10379026)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金谷 弦 国立研究開発法人国立環境研究所, 地域環境保全領域, 主幹研究員 (50400437)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,030,000 (Direct Cost: ¥3,100,000、Indirect Cost: ¥930,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
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Keywords | 海の歴史生態学 / 古資料 / データベース / 三方五湖 / 高塩分化 / 貧酸素化 / 底生生物群集 / 歴史生態学 / 気候変動 / 汽水域 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、海の歴史生態学の手法で、歴史的な人間活動と近年の海面上昇や温暖化が汽水域の水環境とベントス群集に与えた影響を評価し、成果を地域の寄稿変動適応策に実装することを目指す。まず、モデルサイト(三方五湖)の生物と水環境に関する古資料を収集し歴史生態学DBを構築する。次に、このDBを活用して、歴史的な人間活動と日本海の海面上昇が水環境とベントス群集に与えた影響を推定する。最後に、成果を地域の寄稿変動適応策に実装する。
*海の歴史生態学:様々な古資料を活用して海洋生態系の時間変化を復元する研究分野。近年確立した研究分野で、国内では研究例が少ない。
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Outline of Annual Research Achievements |
海の歴史生態学とは、様々な古資料(漁業統計・観測資料・古文書など)を活用して海洋生態系の過去の状態を推定する新たな研究分野である。本研究では「海の歴史生態学」の手法を用いて、過去の人間活動と近年の海面上昇が汽水域の環境と底生生物群集に与えた影響を評価し、成果を地域の気候変動適応策に実装することを目指す。 2022年度は、まず、汽水湖沼群である三方五湖の一部、水月湖を対象として、過去約100年間に行われた水質と底生生物に関する調査結果をデータベース化した。水質については、生物の分布に強い影響を与える塩分と溶存酸素量の情報を、最古のもの(1926年)から最新のもの(2022年)まで可能な限り収集し、単位を統一したうえで(塩分はpsu、溶存酸素量はmg l-1)、年・月・水深毎に整理した。底生生物については、定量的な調査の結果である1928~1930年の調査結果、および2019年と20222年の調査結果を、1m2あたりの分類群毎の密度として、年・月・水深毎に整理するとともに、定性的な情報(主に優占種の確認情報)も整理した。これらのデータを数値解析に供した結果、水月湖では過去約100年間に湖水が高塩分化するとともに、底生動物群集がユスリカ幼虫を主体とする淡水性の群集からヤマトシジミとカワゴカイ科多毛類が優占する汽水性の群集に変化したことが示唆された。併せて、湖水の高塩分化は1930年代以降の河川改修と1980年代以降の海面上昇による、海からの高塩分水の遡上量増加が原因であることが示唆された。 また、優占種であるカワゴカイ科多毛類についてPCR法を用いた種判別を行った結果、調査地点で出現したカワゴカイ属は全個体がヒメヤマトカワゴカイであることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度は当初の計画通り、(1)水月湖における環境と底生生物群集の現状調査を完遂するとともに、(2)過去(1928~1930年)と較べて湖水の高塩分化と生物群集における汽水種の優占が確認され、気候変動(海面上昇)の影響を示唆することができた。併せて、(3)水月湖の水質と底生生物の歴史的な観測資料に関するデータベースも計画通りに作成することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、気候変動適応の一環として久々子湖で実施された沿岸ハビタット再生事業の効果検証を、環境と底生生物に注目して実施する。併せて、久々子湖の環境と底生生物に関する過去の観測資料等を収集し、データベース化を進める。また、2022年度に行ったデータベース化の作業過程で、過去(1928~1930年)に報告された底生生物に再同定が必要な種が見つかった。これらの種の同定に関する文献の収集と当時の標本の探索・再同定を試みる。
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Report
(1 results)
Research Products
(5 results)