島嶼域の氷期遺存植生をモデルとした温暖化による森林植生の維持・成立機構
Project/Area Number |
22K05727
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 40010:Forest science-related
|
Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
久保 満佐子 島根大学, 学術研究院環境システム科学系, 准教授 (70535468)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
崎尾 均 新潟大学, 佐渡自然共生科学センター, フェロー (20449325)
須貝 杏子 島根大学, 学術研究院農生命科学系, 助教 (20801848)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
|
Budget Amount *help |
¥4,290,000 (Direct Cost: ¥3,300,000、Indirect Cost: ¥990,000)
Fiscal Year 2025: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
|
Keywords | 隠岐諸島 / ヒメコマツ / 球果 / ミズナラ / 堅果 / 佐渡島 / 対馬諸島 / 樹木組成 / 日本海 / 氷期遺存樹種 |
Outline of Research at the Start |
隠岐諸島は世界的に貴重な地質や生態系に恵まれ,ユネスコ世界ジオパークに認定されている。隠岐ユネスコ世界ジオパークは「大地の成り立ち」,「独自の生態系」,「人の営み」の3つをテーマとし,「独自の生態系」の一つに隠岐諸島特有の植生がある。この特有の植生として,暖温帯にあるにも関わらず冷温帯の樹種が生育することが知られている。こうした植生は氷河期からの温暖化の中で現在も残っていると考えられており,本研究では温暖化の中で隠岐諸島の森林植生がどのように維持されているのかを明らかにする。
|
Outline of Annual Research Achievements |
日本海島嶼の隠岐諸島は大陸と日本列島の間に位置し,氷期には本州本土の島根半島と陸続きになっていた。隠岐諸島には暖温帯林の中に冷温帯や亜高山帯に生育する樹種が混生する固有の森林植生がある。これは氷期の遺存樹種が生育しているためと考えられるが,その生態や形態,生育条件は不明である。 隠岐諸島を代表する氷期遺存樹種のヒメコマツは,暖温帯の岩尾根や崖,岩盤上に多く生育している。本種は明るい環境では直径2cm高さ2mの個体から結実し,その球果の形態は本土のものより大きいことが観察されている。そこで隠岐諸島に最も近い本土のヒメコマツ生育地(鳥取県洗足山)の球果および種子の形態と比較した結果,球果の長さは隠岐が大きく,球果当たりの合計種子数に差は無いものの,隠岐では不稔種子数が多いことが明らかになった。隠岐よりさらに大陸側には韓国の鬱陵島があり,変種のオオミノゴヨウ(球果も種子もヒメコマツとキタゴヨウより大きい)が報告されている。隠岐のヒメコマツの球果の形態は,本土のヒメコマツとオオミノゴヨウの中間的な形態をしている可能性が示唆された。 隠岐諸島を代表する冷温帯樹種のミズナラは,暖温帯の海岸沿いから生育するが,堅果が一般的なミズナラより大きいことが観察されている。そこで,堅果の形態を海岸沿いと山地帯のものを比較すると,海岸沿いは大型のものが多く山地帯は一般的なサイズのものが多いことが明らかになった。堅果の発芽実験を行った結果,堅果サイズが大きい方が初期成長が大きく,暖温帯のミズナラの堅果の形態は実生更新において有利に働く可能性が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
隠岐諸島と対馬諸島,佐渡島の日本海島嶼の樹木組成の比較を行った結果の公表が決定した。隠岐諸島のヒメコマツの球果の形態は本土のものとは異なり,隠岐独自の形態である可能性を明らかにした。また,気象データを測定するための温湿度計の設置がすべて完了してデータを蓄積しているため,これまでのデータをまとめる作業に着手した。標高差に伴う樹木組成の変化を把握するための調査地を選定し,フロラ調査に着手した。
|
Strategy for Future Research Activity |
隠岐のヒメコマツの球果および種子の形態の特性を本土のものと継続して比較し,隠岐固有の形態かを明らかにする。さらに,ヒメコマツの群落の分布特性をGISによる解析と現地調査により明らかにし,隠岐諸島におけるヒメコマツの生育立地と個体群の維持機構を明らかにする。 ミズナラについては,堅果の形態の違いによる発芽実験を隠岐と本土で行い,堅果サイズと場所による生残の違いを明らかにする。 カツラの分布と遺伝特性を調べ,雌雄の分布と受粉距離などの繁殖特性を明らかにする。 隠岐最高峰の大満寺山を調査地として,標高差による樹木組成の変化を明らかにする。温湿度データを整理すると共に,樹木組成と気象条件の関係を明らかにする。本土のものと比較することで,隠岐固有の森林植生の不明瞭な垂直分布の実態を明らかにする。
|
Report
(2 results)
Research Products
(2 results)