Project/Area Number |
22K05741
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 40010:Forest science-related
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
石田 清 弘前大学, 農学生命科学部, 教授 (10343790)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石田 祐宣 弘前大学, 理工学研究科, 准教授 (60292140)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2025: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
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Keywords | 開葉時期 / 開芽積算温度 / 集団間変異 / 消雪早期化 / 気候温暖化 / 晩霜 / 局所適応 / 遺伝率 / 開芽日 / 晩霜害 / ブナ / 自然選択 / 進化 / 落葉樹稚樹 / 多雪山地 / 進化的応答 |
Outline of Research at the Start |
温帯多雪山地では、気候温暖化で消雪が早くなると、落葉樹稚樹の開芽時期に作用する自然選択の主要因が「林冠被陰」から「晩霜害」へとシフトし、最適開芽日と実際の開芽日とのミスマッチ(ずれ)が生じて晩霜害が発生する可能性がある。また、そうした集団で晩霜害が生じた後に進化的応答が生じてミスマッチが縮小するのかが問題となる。そこで、多雪山地のブナを対象に栽培と観測を行い、稚樹の開芽時期に作用する自然選択、温暖化した環境下での開芽時期の遺伝率、及び稚樹と林冠木の開芽時期の可塑性を解明する。さらに、気候温暖化で生じる稚樹開芽日のミスマッチと進化的応答を推定し、ブナ稚樹の季節適応に及ぼす温暖化の影響を予測する。
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Outline of Annual Research Achievements |
青森県八甲田山の標高と晩霜体制の異なる5地点に生育するブナ集団の稚樹(積雪下で越冬する稚樹)を対象に、標高の異なる3植栽試験地(低標高植栽試験地、中標高植栽試験地、高標高植栽試験地)で栽培実験と開芽観察を行い、消雪時期の早まりに対する稚樹の開葉時期の応答パターンとその集団間変異について分析した。その結果、5集団全てで消雪日が早まると開芽日が早くなる一方で、開芽積算温度が増加する傾向が認められた。高標高植栽地と比べて消雪日が一ヵ月程度早くなる低標高植栽地では、このような開芽積算温度の増加が頭打ちとなることも明らかとなった。この結果は、短日条件による冬芽成長速度の制御が消雪早期化に伴う消雪時気温の低下の影響を受けて弱くなることを示唆している。また、消雪早期化に伴う開芽積算温度の増加の程度は、晩霜発生時期が遅いために遅い開芽時期が進化したと考えられている盆地のブナ集団で最も高かった。このことから、晩霜体制の場所間変異に応じたブナ集団の局所適応は、消雪早期化を伴う気候温暖化に対する応答の程度に影響するものといえる。温暖化で消雪時期が早くなると、山腹斜面の集団において、積雪下で越冬する稚樹が被る晩霜害が増加する可能性があることから、消雪時期と稚樹期晩霜害との関係について今後の詳細な検討が必要である。さらに、上記5集団から採取した種子を弘前市内の圃場に播種して発芽時期、子葉展葉日、本葉展葉日を調べた結果、これらの形質の遺伝率は0.40~0.76と中程度であった。今後の温暖化により晩霜害が増加した場合、ブナ稚樹の季節性に進化的応答が生じると予想される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
青森県八甲田山のブナ集団を対象に、標高の異なる3植栽試験地で稚樹の栽培実験を行い、短日条件による冬芽成長速度の制御が消雪早期化に伴う消雪時気温の低下によって弱くなること、及び、晩霜体制に応じた局所適応が気候温暖化に対する応答の程度に影響する可能性を示す結果を得た。また、温暖化した気候条件下でブナ稚樹が示す葉フェノロジー諸形質の遺伝率を明らかにし、気候温暖化に対する本種の進化的応答の可能性を示唆することができた。以上のことから、本研究課題はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降についても青森県八甲田山の標高と晩霜体制の異なる5地点に生育するブナ集団を対象にした栽培実験と開芽観察を継続し、稚樹の適応度(生存率と成長量)に及ぼす晩霜害の影響や適応度と開芽時期との関係について詳細な分析を行い、温暖化した気候条件下での稚樹期の葉フェノロジー形質に作用する自然選択の方向と強度を推定する。また、2023年に大規模な晩霜害が観察された八甲田山田代平のブナ成木を対象に晩霜害と開芽時期との関係、及び葉フェノロジー形質の遺伝率を推定する。
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