スギ樹皮に含まれる機能性抽出成分の総合的利用に関する研究
Project/Area Number |
22K05759
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 40020:Wood science-related
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
小藤田 久義 岩手大学, 農学部, 教授 (40270798)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,030,000 (Direct Cost: ¥3,100,000、Indirect Cost: ¥930,000)
Fiscal Year 2024: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2023: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2022: ¥2,470,000 (Direct Cost: ¥1,900,000、Indirect Cost: ¥570,000)
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Keywords | スギ / 樹皮 / 抽出成分 / テルペン / ポリフェノール |
Outline of Research at the Start |
樹皮は樹木乾燥重量の約1割を占める重要なバイオマス資源であるが、これまで高い商品価値を生み出すような利用法は見つかっていない。本研究では、国内で最も排出量が多いスギ樹皮のカスケード利用を実現するための手法として、その主要な機能性抽出成分であるテルペン類とタンニンの一括抽出・分離法を開発することを目的としている。本研究は樹皮成分全体を活用する総合的利用形態を志向するものであり、廃樹皮から付加価値の高い商品を生み出すことができれば、地域林業と木材産業の活性化にも貢献できるものと期待される。
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Outline of Annual Research Achievements |
樹皮は重要なバイオマス資源のひとつであり、原木丸太の製材副産物として排出されるが、高い商品価値を生み出すような成分利用法は見出されていない。特に生産量の多いスギの樹皮には有用な抽出成分が多く含まれることが明らかにされており、それらを利用するための効率的な分離回収法の開発が望まれている。 これまでに、粉砕樹皮を流動パラフィンおよび熱水の混合溶媒を用いて抽出する手法(複相抽出処理)を行うことにより、親油性成分であるテルペンと親水性成分であるポリフェノールを同時並行的に分離回収することを試みた。また、回収した抽出液を用いて繰り返し処理を行う戻し複相抽出処理の効果についても検討した。複相抽出処理によるパラフィンおよび熱水抽出物の乾燥樹皮に対する収率はそれぞれ5%および10%前後であった。成分分析の結果、パラフィン抽出物はジテルペン類が主体であり、熱水抽出物中ではプロシアニジンが主体であった。戻し複相抽出処理では各抽出物濃度が処理回数に応じて上昇することが確認された。以上より、複相抽出処理(および戻し複相抽出処理)の有効性が示された。 本年度は、スギ樹皮の有用成分であるジテルペン類およびプロシアニジンのスキンケア関連の機能についての検討を行った。評価項目として、はじめに抗酸化作用に関する検討を行った。パラフィン(n-ヘキサン)抽出物および熱水抽出物はいずれも一定の抗酸化活性を示した。次いで、抗酸化に関連するスキンケア関連作用として抗糖化活性について検討した。アルブミンとフルクトースを用いる抗糖化アッセイを実施したところ、スギ樹皮のジテルペン類およびプロシアニジンには抗酸化作用と同様に抗糖化作用が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
複相抽出処理の有効性に関する検討では、分離対象成分であるテルペン、ポリフェノール、可溶性糖類のいずれも本処理法を適用することで高選択的に分離回収可能であることを明らかにした。さらに、戻し抽出処理の効果についても当初の期待通り処理回数に応じた各成分の濃度増加が確認され、本処理法は実用化に向けての改良法の一つとして採用すべき手法であることが分かった。 また、スギ樹皮成分の有効利用法を開発するための基礎的知見を得るために、各成分の機能についても一定の成果をあげることができた。具体的には、ジテルペン類およびプロシアニジンにはいずれも抗酸化作用としてのラジカル消去活性、抗糖化作用としてのAGEs生成阻害活性が認められた。これらの生理活性はスギ樹皮成分がスキンケア関連製品として利用可能であることを示しており、今後の展開が期待される。 スギ樹皮プロシアニジンの作用特性に関しては、有機合成したダイマーおよびポリマーとの抗酸化・抗糖化作用の違いについても検討した。その結果、抗酸化活性と抗糖化活性いずれにおいてもスギ樹皮抽出物と標品・合成物はほぼ同等であり、重合度による活性の違いも認められなかった。以上の結果よりフラバン-3-オール骨格を有する2量体から5量体のプロシアニジンには、いずれも強い抗酸化・抗糖化能が認められたことから、生体内の酸化反応や糖化反応に由来する組織の老化を抑制・改善するための機能性物質としてこれらの利用が期待できるものと考えられる。 次年度以降は以上の研究成果に基づいてより実用的な成分分離方法の開発を進めるとともに、得られた各画分からの有用成分の精製および用途について検討していく必要があるが、本研究課題におけるこれまでの成果としては概ね順調であると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
スギ樹皮に含まれる有用成分の分離回収法については、複相抽出処理および戻し抽出の有効性が確認されたが、実用的には設備投資等のイニシャルコストの問題や操作の煩雑さなどの課題が残されている。 合板工場における原木丸太の剥皮では前処理として蒸煮を行う方法があり、この際に発生する蒸煮排液は実質的に熱水抽出液と類似の成分組成を持つ可能性が高い。この蒸煮廃液からプロシアニジンを効率的に回収することが出来れば、実用的にはより優れた手法になると思われる。また、蒸煮・剥皮後の樹皮にはフェルギノールをはじめとするテルペノイド成分が残存していると考えられる。別途これらの残存テルペン類を加熱乾燥により揮発させたのち、水蒸気とともに冷却回収することができれば有効成分の総合的な分離・回収のための新たな手法の開発につながることが期待される。 一方、分離回収された各成分の用途に関しては、スキンケア関連の機能としてスギ樹皮のパラフィン(n-ヘキサン)抽出物および熱水抽出物に抗糖化活性が確認された。糖化はタンパク質と糖のメイラード反応により引き起こされる現象で、コラーゲンの変性などの皮膚の老化に深く関わることが報告されている。今後は、基礎的な検討として抗糖化活性に寄与する各成分の評価が必要である。そのため、スギ樹皮に含まれるフェノール成分の組成分析を進めるとともに、機能性について化合物レベルでの評価を行うことにより有効成分を特定し、今後の製品開発を行うための基礎データを収集する。
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Report
(2 results)
Research Products
(5 results)