Project/Area Number |
22K05781
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 40030:Aquatic bioproduction science-related
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Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
藤田 大介 東京海洋大学, 学術研究院, 准教授 (70361813)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
秋田 晋吾 北海道大学, 水産科学研究院, 助教 (80828195)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,290,000 (Direct Cost: ¥3,300,000、Indirect Cost: ¥990,000)
Fiscal Year 2024: ¥260,000 (Direct Cost: ¥200,000、Indirect Cost: ¥60,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2022: ¥2,730,000 (Direct Cost: ¥2,100,000、Indirect Cost: ¥630,000)
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Keywords | コンブ / 漁港 / 分布南限 / 空撮 / 系統地理 / 遺伝的多様性 / 水温 / 高温耐性株 / 漁港斜路 / 生育環境 |
Outline of Research at the Start |
コンブは温暖化の影響を受けやすく,資源の減少や分布南限の北上が懸念されている。 コンブ資源の保全や動向予測の基礎資料とするため,茨城~福島県のコンブ分布港で水平・深度分布や季節消長の調査,消失港との生育環境(水温,生物相など)の比較,海水・底質のメタゲノム解析による生育痕跡の比較により,コンブの分布決定要因を探る。 また、藻体片の一塩基多型マーカーにより遺伝的多様性を解析し系統株を保存するとともに,培養藻体の光合成活性測定による水温応答解析を行い高温耐性株を検出する。 さらに,コンブ分布漁港の空撮画像解析結果を教師として港内全域や周辺域生育地での群落探索も試みる。
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Outline of Annual Research Achievements |
コンブ資源の保全や動向予測の基礎資料とするため,日本の天然コンブ群落の分布南限にあたる茨城県北部~福島県中部の漁港で現地調査を行った。 2022年6月~2023年3月に11漁港中7漁港でコンブの生育を確認したが,1980年代に記録された最南端の茨城県1港湾では確認できなかった。コンブが生育していた漁港は全般的に透明度が低く,摂餌圧の高いウニなどの植食動物が少ないことが判明し,4漁港で成熟個体も確認できた。コンブの生育は,概ね漁港内の船揚場とその周辺および船舶係留ロープに生育が限られていたが,2漁港で防波堤内側や泊地にも分布することがドローンや水中ドローンによる観察によって確認された。初夏から秋の水温はコンブ消失港(旧南限)で17.4~26.9℃,コンブ出現漁港(新南限)を含む生育5漁港で16.1~28.5℃で,栄養塩(6月採水)はコンブ消失港でやや低かった(測定継続中)。文献調査および関係者への聴き取りにより,調査海域のコンブは,北洋基地となる北方の漁港との漁船の往来,漁港改修に伴う台船の来港,餌料用コンブ養殖などによりもたらされた可能性もあることが判明した。 上記漁港港のほか,宮城県~岩手県8漁港および北海道7地点で採集したコンブ(合計 168 個体)について,ミトコンドリアDNAのnad3-16S rDNA 領域(2,050 bp)を用いて系統地理学的解析を行った結果,43(各産地1~6)のハプロタイプを検出し,福島県内でも固有のハプロタイプ(最多は福島県1漁港)が認められたほか,茨城県~北海道で共通する型が認められ,常磐沿岸の漁港内に生育しているコンブには古くから自生している集団が含まれている可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①コンブ生育確認調査は順調に進行しており,各漁港におけるコンブの分布および季節消長をその他の生物の生息状況について,水温(連続測定)と栄養塩(隔月に採水分析)とともにデータを継続蓄積中である。また,大学図書館のみならず,現地の図書館においても過去のコンブ出現状況に関する文献調査を行い,漁協関係者への聴き取り調査を行うことができた。 ②コンブ同定・遺伝的地域性の評価においては,第一段階のミトコンドリアDNAのnad3-16S rDNA 領域(2,050 bp)を用いた系統地理学的解析がほぼ終了した。また,茨城県内では過去のコンブの生育記録に用いられた標本の所在が明らかになったため,その藻体片の一部を採取し解析に備えた。 ③高水温耐性株作出に関しては,調査海域の4漁港で成熟藻体が得られたので,遊走子を放出させ,配偶体を保存培養中である。 ④空撮写真・ドローン画像に基づく漁港周辺域での生育確認では,漁港の斜路と防波堤などでドローン撮影および泊地における水中ドローン撮影により漁港内のコンブ生育分布を把握した。また,良好な画像を用いて,マスキングや強調などの画像処理を試み,透明度が高かった漁港斜路の周辺での海藻群落の把握は可能となった。ただし,膜状紅藻や褐藻アラメなどが共存する場合にはコンブとの識別が課題となった。 ⑤コンブ消失域におけるメタゲノム解析による生育痕跡の検出については,次年度に備えて,手法の検討のみを行った。
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Strategy for Future Research Activity |
①コンブ生育確認調査では,コンブの分布,季節消長およびその他の留意すべき生物の生息状況を調査するとともに,環境測定(水温・栄養塩)を継続して行う。 ②コンブ同定・遺伝的地域性の評価では,第二段階として一塩基多型領域を効率的に検出するddRad-seq法により各漁港と以北の生育地との間で遺伝的近縁関係を推定し,分布南限域漁港のコンブ由来を解明するとともに,各漁港内の遺伝的多様性や近親交配の程度を調べる。同時に,茨城県の博物館所蔵標本についても遺伝子レベルでの比較検討を行う。 ③初年度の成熟個体採集により既に得ている培養株を用い,北海道産マコンブで既知の配偶体の生育上限水温の周辺温度で生残を調べ,生残株が見つかれば高水温耐性株とする。受精を経て得た幼胞子体については酸素電極法で水温毎の光合成測定により高水温耐性を評価し,高水温耐性に関連しているマーカーの探索を行う。 ④コンブの空間分布に関しては,明瞭な漁港斜路のドローン画像を教師とし,畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を用いセマンティック・セグメンテーションによる漁港周辺も含めたマッピングを行う。ただし,現在まで漁港外では磯廻りの漁業者の間にもコンブ生育情報がなく,過去の養殖試験でも成功例がないこと,透明度が高まる冬季にはコンブの衰退・消失時期にあたり,強風によりドローン操作が困難なことから,漁港の外側では直近に限って探査を行うことにし,状況次第では漁港内のコンブの分布域の把握に注力する。 ⑤コンブが消失した漁港とコンブの生育を確認した漁港の海水および斜路基質の砕破懸濁物を採集し,rbcL遺伝子によるメタバーコーディング解析を行いコンブの検出・種同定を試みる。
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