刺胞動物が持つ「刺胞」による「化学攻撃」の詳細解明
Project/Area Number |
22K05817
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 40040:Aquatic life science-related
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Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
永井 宏史 東京海洋大学, 学術研究院, 教授 (50291026)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2025: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
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Keywords | 刺胞動物 / クラゲ / 毒素 / 生物活性物質 / 構造決定 / ラン藻 / 生理活性物質 / 化学攻撃 |
Outline of Research at the Start |
基本的にすべての刺胞動物は「刺胞」を使って、餌生物や外敵などに毒針を注射し、さらに毒素などを用いた「化学攻撃」を行うことが広く知られている。ところが、それらの「化学攻撃」の詳細については、ほとんどが未解明のままである。つまり、誰もが知っているような現象なのに、実のところその詳細はよくわかっていない現象の典型である。いずれにせよ、「刺胞」から相手に毒針を発射して、「化学攻撃」を仕掛けるという構図である。これを受けて、本研究において、この刺胞動物に普遍的な「刺胞」による「化学攻撃」の詳細(どのような分子が?どのような役目で?)を明らかにしていく予定である。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は刺胞によって刺症が引き起こされる際にどのような化合物がその現象に関わっているか検証するという内容である。まず、刺胞とはクラゲ、イソギンチャク、サンゴなど刺胞動物が有する、相手に毒液を注射して「攻撃」するための微細な器官である。刺胞内には「攻撃」に関わる毒素を中心とした化合物群が貯め込まれている。さらに、「刺胞」内の化合物群は刺胞外から能動的に運び込まれたものである。このように生物がもつ器官の中でも特に「攻撃」に特化した化合物群を集中して貯蔵している部位は希少である。そこで、本研究では、「刺胞」内に存在する各種構成成分を網羅的に精査し、各成分の化学的性状を明らかにすることを目標としている。この研究は、刺胞動物が保有する「化学攻撃」に関わる多くの機能性分子を解明することで、複雑に化合物が関わる「化学攻撃」の仕組みを理解しようというものである。現在のところ有毒刺胞動物としてハブクラゲとヒクラゲを研究試料としてすでに得ている。ハブクラゲについては刺胞内に存在する主要なタンパク質毒素一つについて単離ならびに化学的性状の解明を行ったが、その研究の途中でいまだ正体不明な複数の毒性化合物があることを見出しいている。また、ヒクラゲは大型の有毒立方クラゲであるが今まで毒素を含む刺胞内成分の研究対象とされたことはない。そこで、本研究がヒクラゲの刺胞内構成成分を明らかにする初めての機会となる。また刺胞動物ではないが、ヒトに対して激しい皮膚炎を起こすことで知られる沖縄産ラン藻について2010年の大量発生時に多量の試料確保に成功している。このラン藻について毒素を中心にさまざまな化合物の単離、構造決定、活性評価につとめてきた。前回報告時は、遺伝子解析の結果、このラン藻をOkeania hirsutaと同定できたことを報告している。今回は本ラン藻についてさらなる成分探索研究を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒクラゲの刺胞の単離ならびに刺胞内成分の抽出については成功したことを、前回の報告時に記している。その後、刺胞内成分について、溶血活性、細胞毒性活性、サワガニに対する致死活性などを検討した。その結果、今まで研究を行ってきたハブクラゲなどその他の立方クラゲ類と比較して、溶血活性が弱く、サワガニに対する致死活性が比較的強いことが判明した。そこで、このサワガニに対する致死活性を指標としてヒクラゲ毒素の単離を行っていくことにした。加熱やプロテアーゼの添加によって、このヒクラゲ毒素の活性が失活することからヒクラゲ毒素はタンパク質性であることがほぼ確定された。そこで、タンパク質毒素の単離・精製によく用いられるイオン交換HPLCや分子サイズ排除HPLCを用いることによってタンパク質毒素の単離を行っている。現時点で、活性本体は約45 kDaのタンパク質がサワガニに対する致死活性を有する毒素本体と考えられる。現在、その完全な構造を決定すべく最終精製を行っているところである。沖縄産のラン藻Okeania hirsutaについては、さらに新規化合物の探索研究を進めている。その結果、新規オキシリピン2個 okeanic acid-Aとokeanoateならびに新規リポペプチド1個N-desmethylmajusculamide Bの単離に成功した。また、これらの化学構造は核磁気共鳴(NMR)や質量分析(MS)といった分光学的手法を駆使して決定された。一部化合物の構造決定には半合成的手法も用いられた。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、ヒクラゲ刺胞からサワガニに対する致死活性を指標としてタンパク質毒素の半精製に成功している。タンパク質毒素本体は約45 kDaの化合物と推測される。このタンパク質毒素についてより効率の良い精製法などを見出すことにより毒素単離を成功させたい。また、毒素単離後は、プロテインシークエンサーによるN末端アミノ酸配列の解析、酵素による分解後LC-MS/MSによる部分シークエンス解析によって内部アミノ酸情報を入手する予定である。これによってその後のヒクラゲ全RNAから1st strand cDNAを合成して3’-RACEや5’-RACE法といった分子生物学的手法を用いてタンパク質毒素をコードする全塩基配列の解明を行う。さらに、得られた全塩基配列から演繹全アミノ酸一次配列の決定が可能となる。また、ヒクラゲやハブクラゲには主要なタンパク質毒素以外にも複数のタンパク質毒素の存在が示されており、これらについても今後単離を行っていく予定である。 沖縄で採取したラン藻Okeania hirsutaについては引き続き様々な化合物の単離を行っていく。このO. hirsutaからはすでに24種類にもおよぶaplysiatoxin(ATX、アプリシアトキシン)関連化合物を単離することができた。これらのATX関連化合物の化学構造からこれらの生合成経路について類推することができるようになった。さらにATX関連化合物を単離・構造決定することにより、ATX生合成についてより強い証拠をもった仮説が示されることを期待している。
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Report
(2 results)
Research Products
(18 results)