海洋の貧栄養化はイカナゴの行動リズムを乱す ~夏眠と潜砂様式からの検証~
Project/Area Number |
22K05823
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 40040:Aquatic life science-related
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
阿見彌 典子 北里大学, 海洋生命科学部, 講師 (20588503)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2024: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2022: ¥2,210,000 (Direct Cost: ¥1,700,000、Indirect Cost: ¥510,000)
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Keywords | 夏眠 |
Outline of Research at the Start |
近年,イカナゴの漁獲量は激減し,有効な資源管理策の導入が急務となっている.本研究では,海洋の貧栄養化による餌環境の悪化が,イカナゴの 「生存・成熟に必須な夏眠」 と 「捕食回避」 に関連する行動に異常を生じさせているという仮説を立て,行動生理学を基盤として資源の減少要因を特定する.具体的には,低い栄養状態が(1)夏眠の開始および終了の遅延,(2)夏眠の中断,(3)概日リズムの異常,(4)刺激応答の衰弱化を引き起こすことを飼育実験により検証する.さらに,(5)異常な行動を生じさせる脳の部位および制御物質を明らかにする.
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Outline of Annual Research Achievements |
〔実験1〕給餌量の調節により,高肥満度群と低肥満度群の作出が成功した.詳細な行動観察の結果,栄養状態は夏眠開始までの遊泳行動の減少に影響を与えるが,開始時期には影響しないことが示唆された.また,夏眠開始までの栄養状態が低いと,夏眠開始までの生存率を有意に低下させるが,夏眠開始後は一定を維持することが示唆された.したがって,夏眠を開始することさえできれば,ある程度の期間は生存を維持できる可能性が示唆された.一方,夏眠終了時の行動に関しては得られた情報が少なかったため,現在,再度飼育実験を行っている.また,代謝の促進に関与するレプチン(肝臓)遺伝子は両群ともに5月末に高い傾向を示したことから,夏眠開始に向けた生理学的な変化は肥満度に関わらず同時期に起きる可能性が示唆された.
〔実験2〕順調に飼育実験は実施され夏眠が発現した.攪拌(1回/日)実験は計3回行った.夏眠床である砂を攪拌すると直後に砂からイカナゴが飛び出て遊泳を行ったが,遊泳率は攪拌の回数が増えるにつれ減少傾向を示した.また,攪拌直後に砂から出てきたイカナゴは砂の上で横たわる行動を示したが,この行動を示す個体数も攪拌の回数が増えるにつれて減少傾向を示した.なお,攪拌後に継続的な遊泳は確認されず,斃死個体は外傷のある個体のみであった.連続攪拌(5回/日)実験でも全ての攪拌後に遊泳個体や横たわり個体が観察されたが,その後は再び潜砂を維持し,斃死個体は外傷のある個体のみであった.また,砂中行動の回数は攪拌後に増加した.その後,コントロール群と同様に1月に遊泳を再開して夏眠を終了した.以上より,夏眠の中断はイカナゴの砂中行動に影響を及ぼしたものの,生存に対して影響を及ぼさないことが示唆された.また攪拌後すぐに潜砂行動に移り,その後潜砂を維持したことから,イカナゴは夏眠を中断されてもすぐに夏眠を再開できる可能性があることが示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度は通常より早くにイカナゴを入手できたことから,約1ヶ月も早くに飼育実験を開始できた.これにより,夏眠までの飼育期間が長くさまざまな情報を収集することができた.また,夏眠を開始して摂餌が停止するまでの期間が長かったために,給餌量の調節による肥満度の差を明確につけることができ,十分な肥満度の個体に育てることができた.そして,2022年度はメラトニンに加えてレプチンも用いて解析を行ったことで,さらに多方面からイカナゴの生理状態を把握することができた.さらに,本研究の要となる飼育が順調に進んでいることから,全体としておおむね順調に進展していると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度の実験では,夏眠開始および夏眠開始後の数ヶ月の行動に着目した解析が中心であった.一方で2023年度は夏眠終盤および夏眠の終了時期にも着目して解析を行う.したがって,2022年度での経験を活かしつつ,より長期間の飼育維持を目指す.特に給餌量に差をつけて低栄養状態の個体を作出する際には,夏眠終了まで生存を維持できる程度の肥満度にするように飼育する必要がある.また再現性の確認を行うとともに,より詳細な行動観察と内分泌的な解析を進める.
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Report
(1 results)
Research Products
(5 results)