Project/Area Number |
22K05881
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 41030:Rural environmental engineering and planning-related
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
石井 敦 筑波大学, 生命環境系, 教授 (90222926)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
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Keywords | 灌漑管理 / 水利費 / 従量制 / 水田灌漑 / 土地改良区 / 節水 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、日本の水田灌漑地区において、従量制による水利費賦課方式を導入した場合の節水効果等を実証的に明らかにするものである。土地改良区が個々の水田圃場単位で取水量に応じて水利費を賦課(個別従量制)している灌漑地区と、100 ha程度の灌漑ブロックごとに従量制で水利費を賦課(ブロック従量制)する地区とを対象に、灌漑用水利用量およびダム貯水量のデータを分析し、現地聞き取り調査を行って、1)個別従量制水利費賦課方式の節水効果、2)同方式によるムラの灌漑管理の軽減効果、3)ブロック従量制水利費賦課方式によるダム貯水量の温存効果を明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
R5度は、従量制水利費賦課方式をとる大規模畑地灌漑地区の宮古土地改良区(灌漑面積約9000 ha)と、定額制水利費賦課方式をとる大規模水田灌漑地区の宮川用水土地改良区(同約4000ha)と岡堰土地改良区(約1600ha)で、現地調査と調査データの分析を行った。 宮古土地改良区では、4つの灌漑ブロック(灌漑面積約1000ha)の日灌漑水量と降雨量データ(土地改良区より入手)を用いて土壌水分量を簡易な水収支で求め、灌漑取水量との関係を求め、その関係を従量制導入前後で比較した。結果、土壌水分量が小さい状態での灌漑取水量について、従量制導入による節水効果が大きいことがわかった。一方、土壌水分量が大きい状態では、従量制導入後でも圃場用水量を超える灌漑取水が多数あり、十分な節水効果は得られていないことがわかった。これには、各農家ごとの取水日が週ごとに決められているため、取水日には一定量以上の取水をしてしまうことが考えられる。 宮川用水地区では、平常時と渇水時について、6つの灌漑ブロック(灌漑面積300 ha程度)への配水量の日データを土地改良区から入手し、その違いを分析した。結果、渇水時は番水によって配水量の差が10mm/d程度にまで縮小できていることがわかった。定額制の水利費賦課方式でも農家間の公平感は維持できていることが示唆された。 また、岡堰土地改良区では、約40の灌漑ブロックごとの排水の反復利用の状況を求め、各ブロックの取水可能量を試算した。結果、下流のブロックではポンプを用いた排水の反復利用で上流ブロックとほぼ同等の用水を確保できていることがわかった。また、ポンプ費用を土地改良区全体で負担することで、定額制水利費賦課でも公平性が確保できていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
大規模水田灌漑地区の従量制については、三重用水地区での現地調査・分析により、平常時において節水効果があることを明らかにし、さらに、それによりダム貯水の温存効果があり、渇水のリスク軽減効果があることを明らかにしている。その成果は、令和4年度農業農村工学会大会講演会ですでに発表した。 また、大規模畑地灌漑地区についても、取水量についてのデータはすでに収集できており、月別の取水量の分析から従量制の節水効果を確認できている。その成果は、令和5年度農業農村工学会大会講演会で発表した。また、雑誌「土地改良」にも要旨を投稿している。また、農家の行動分析については、令和6年度の農業農村工学会で発表予定であり、すでに要旨は投稿している。 また、ウガンダの定額制水利費賦課地区において、取水量が不足する下流部で水利費の徴収率が低いことが明らかになり、国際学術誌に論文を投稿してすでに出版されている。 さらに、従量制以外の節水方式をとっている大規模水田灌漑地区についても調査分析を進めており、1)茨城県の岡堰地区で用水の反復利用、2)三重県の宮川用水地区で番水についての用水使用データを入手・分析した。これにより、従量制の節水効果の程度を、他の節水手法と比較することで検証することが可能になると考えている。また、このうち1)はR4年度農業農村工学会大会およびPAWEES 2022で口頭発表している。また、2)はPAWEES2023でポスター発表を行った。 以上、研究目的の従量制の節水効果およびダム貯水の温存効果については明らかにできており、学会発表も行っていることから、おおむね順調に進捗している。 その一方、従量制による個々の農家の節水行動の分析については、農家のインタビューがまだできておらず、現地調査が不足している。また、学術論文の投稿にまではいたっておらず、全体として、やや遅れている、とした。
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Strategy for Future Research Activity |
宮古土地改良区の現地調査を行う。日ベースの使用水量と作期、降雨の関係について分析し、受益農家を対象に実際の取水についての聞き取り調査を合わせて行い、農家の灌漑用水取水行動のモデルを構築する。また、三重用水地区でも同様の調査・分析を行う。 また、宮古土地改良区と同様のシステムを導入している石垣島土地改良区を新たに調査地に加え、両者を比較検討し、従量制の効果について検討する。 また、従量制以外の水利費賦課方式として、定額制の大規模水田灌漑地区の宮川用水地区、中勢用水地区(いずれも三重県。受益面積4000 ha程度)を対象に、灌漑用水使用量のデータを土地改良区から入手し、河川からの地区全体の取水パターンについて従量制の三重用水地区との比較分析を行い、従量制の節水効果について検証を行う。 また、従量制水利費賦課方式以外の、大規模水田灌漑地区における代表的な節水方式として、番水、用水の反復利用、配水の公的管理についても検討し、従量制の節水効果についての比較分析を行う。番水は宮川用水地区(三重県)、用水の反復利用は岡堰地区(茨城県)、配水の公的管理については韓国の農業開発公社(KRC)を事例対象とし、それぞれ現地で河川取水方法についての聞き取り調査を行う。
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