Project/Area Number |
22K05892
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 41030:Rural environmental engineering and planning-related
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Research Institution | Okinawa National College of Technology |
Principal Investigator |
三宮 一宰 沖縄工業高等専門学校, 生物資源工学科, 准教授 (10462152)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井口 亮 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 主任研究員 (50547502)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2024: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2022: ¥2,080,000 (Direct Cost: ¥1,600,000、Indirect Cost: ¥480,000)
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Keywords | 廃ガラス / ケイ酸 / イネ / 収量 / 耐暑性 / 形態学 / 島嶼 / 稲 |
Outline of Research at the Start |
ガラスの主成分はケイ素化合物シリカである。我々は、予備的に、廃ガラスを粉砕・焼成した新素材を用いてイネ科作物を栽培し、収量が顕著に増加することを発見した。我々は、この収量増機構の仮説として、この新素材からケイ酸が溶出し、そのケイ酸がイネ科作物に取込まれ、そのケイ酸由来のシリカがイネ科植物体内に蓄積し、そのシリカがイネ科植物に耐暑性を与え、結果として、成長促進、光合成量増、収量増となった、と考えた。本研究では、この新素材栽培によるイネ科作物の耐暑性付与と収量増の分子機構を解明する。
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Outline of Annual Research Achievements |
新素材からのケイ酸溶出について、農業で使われるかんがい水との比較で、十分に高濃度であることを確認した。かんがい水については、石垣島宮良川の上流が下流より、ケイ酸濃度が高かった。なお、この河川流域は、下流においても、沖縄県を代表する稲作地帯である。また、新素材由来のケイ酸にLsi遺伝子が応答することを確認した。この結果は、新素材由来のケイ酸がイネに取込まれていることを示している。さらに、取込まれたケイ酸がイネ体内でシリカとして蓄積することを、燃焼重量法で確認した。以上の結果は、新素材がイネの成長過程全体に関与することを示唆する。 新素材栽培によるイネの形態への関与を、形態学により解析した。新素材栽培で、イネ植物体量が増加したことを確認した。中でも、分げつ数の増加が顕著であった。また、分げつに関与するTab1およびLux2遺伝子は、新素材由来のケイ酸に応答した。このことは、ケイ酸が分げつ誘導に働く可能性があることを示している。 新素材栽培によるイネ耐暑性の付与の可能性を、高温(夏季)栽培により検討した。高温栽培では、コントロール(秋季)栽培との比較で、より高収量であった。このことは、新素材がイネに耐暑性を与える可能性があることを示している。光合成速度の律速は、高温下において、タンパク質が関与する反応である。新素材栽培によってイネ植物体内に蓄積したシリカが、本来高温で活性が低下する光合成関連タンパク質を、高温において保護した可能性がある。 本研究の当初計画に無かった以下の研究を行った。イネが取込むケイ酸の分子種仮説は、Si(OH)4と言われているが、このことを明らかするため、FAB-MS解析を行った。結果として、はじめて、Si(OH)4が実際に取込まれていることを明らかにした。また、もう一つ別の分子種SiX(分子式非公開)が取込まれていることを、はじめて検出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
新素材栽培に関わるケイ素化合物について、新素材からのケイ酸溶出、イネのケイ酸取込み、イネ植物体内へのシリカ蓄積、を解析した。これらのことにより、イネの新素材栽培におけるケイ素化合物の動態の大部分を明らかにすることができた。 新素材栽培による収量増加の分子機構および形態学的原因については、新素材由来のケイ酸に、Lsi遺伝子が応答すること、新素材栽培によるイネの形態は、分げつ数が顕著なこと、新素材栽培により、分げつ遺伝子であるTab1およびLux2が応答すること、が明らかになった。以上の知見により、新素材由来のケイ酸がイネに取込まれ、シリカとして蓄積することにより、イネ植物体が大きくなり、そのことで葉が増え、イネ個体当たりの光合成量が増加することにより、イネ収量が増加する、という本研究当初の仮説が補強された。なお現在、新素材栽培による収量増加に関与する分子機構をさらに詳細に明らかにするため、RNA-Seq解析を進めているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
新素材由来ケイ酸による収量増加の分子機構の解明については、Lsi1が新素材由来ケイ酸を取込むこと、新素材栽培で誘導された分げつに、Tab1およびLux2が関与することを明らかにした。さらに詳細な解明に向け、現在RNA-Seq解析を推進している。 本研究の実施過程で新たな課題となった、ケイ酸分子種研究は、現在、予備的結果が得られている状況である。これまでの実績は、広く一般に知られている「イネが取込むケイ酸はSi(OH)4である」という仮説につき、本研究ではじめて、この分子種が検出されたこと、また、Si(OH)4以外にもSiX(分子式非公開)が取込まれていること、である。この課題については、再現性を確認し、確かな結果とする。 また、もう1つの新しい課題として、社会実装がある。この研究推進については、新規肥料が、より受け入れられやすいという理由から、海外の稲作地域を研究圃場として考えている。現在、共同研究に向けて、打合せが進展している。 本研究の総まとめとしては、特許取得、学会発表、論文発表、等を予定している。
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