Project/Area Number |
22K05955
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 42010:Animal production science-related
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
鈴木 貴弘 九州大学, 農学研究院, 准教授 (80750877)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2022: ¥2,080,000 (Direct Cost: ¥1,600,000、Indirect Cost: ¥480,000)
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Keywords | 筋幹細胞 / 衛星細胞 / 機能的不均一性 / 野生型マウスの系統 / 筋管 / 筋線維型 / 動物の系統 / 筋管形成 / 筋分化 / 筋幹細胞(衛星細胞) / 野生型マウス / HSCs / LmSCs |
Outline of Research at the Start |
本研究は、野生型マウス系統間という比較基準のもとで、筋幹細胞(衛星細胞)の機能的不均一性を捉えることを目標とする。衛星細胞には、筋再生に留まらず筋肥大にも寄与する高いポテンシャルをもつ細胞集団と、対極な性質を示す集団とが存在すると考えられている。そこで、それぞれの細胞集団を保有する系統を正確に見極め、かつ各特性の解明に繋がる基礎的知見の捻出を目指す。本研究から得られる知見は、系統間でポテンシャルが異なる可能性を示すので、衛星細胞をターゲットとした筋生理学的研究を行う際に適切な系統を選択するための有益な情報となる。さらに、成熟個体における効率的な筋肥大誘導の技術開発へ学術的な発展も期待される。
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Outline of Annual Research Achievements |
成熟した動物個体であっても、持続的かつ効率的に骨格筋が肥大化するシステムの理解は、食肉科学分野への貢献に直結するため有意義である。そこで我々は、筋再生の要である筋幹細胞(衛星細胞)に着目した研究を展開している。近年、衛星細胞は活性状態にあるものと、休止状態にあるものとが同一筋線維上に共局在する機能的不均一性をもった細胞集団と認識されている。我々は、よりマクロな視点から衛星細胞の機能的不均一性を捉えるため、「野生型マウスの系統間」という比較基準の元で検証作業を遂行しており、筋分化能ならびに新生筋線維(筋管)の形成能に系統間で差異が生じる可能性を突き止めている。衛星細胞には、超再生ならぬ筋肥大誘導機能を有する集団がいることを予想しているが、当該集団はマウスの系統間の比較検証からピックアップできる可能性を期待している。そのアプローチとして本研究課題では、各系統に局在する衛星細胞の特性、すなわち、形成する筋管の筋線維型(遅筋型や速筋型で大別される)組成や、細胞系譜の変化などを捉え、ポテンシャルの高い衛星細胞を保有するマウスの系統と、その反対の性質をもった細胞を保有する系統の特定を目指す。 2023年度は、形成された筋管の筋線維型組成について検証作業を行った。野生型マウスの系統(ICR、C57BL/6[B6]、およびBALB/c[C]の3系統)ごとで、衛星細胞の単離に用いた筋組織レベルでは筋線維型組成に違いが認められなかったにも関わらず、それぞれの衛星細胞が形成した筋管の筋線維型には差異が生じることを明らかとした。衛星細胞は、自身が局在していた筋組織の筋線維型に準じて分化能に差があることが報告されているが、本結果は培養した衛星細胞が同じ筋線維型組成を示す同筋部位を由来とするにも関わらず、形成した筋管の筋線維型については野生型マウス系統間で差異が生じるという新規知見を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
野生型マウス系統間という比較基準の元で、衛星細胞が形成する筋管の筋線維型組成の検証を行った。ICR、B6、およびCの3系統の野生型マウスより、脊柱起立筋群、大臀筋、大腿四頭筋、および腓腹筋の各部位をミックスした筋組織試料から衛星細胞を単離・培養して、分化誘導後に形成された筋管の筋線維型マーカーの発現量を比較した。なお、いずれの系統においても、各筋組織間での筋線維型組成に違いはないことを確認した。衛星細胞が形成した筋管の筋線維型組成を調べたところ、ICRでは遅筋型を、B6とCとでは速筋型の筋管をそれぞれ形成しやすいことが明らかとなった。 過去の知見より、速筋型の筋線維を由来とする衛星細胞では、遅筋型より単離した細胞と比較して、分化・融合能が高いとされている。なお、これまでに我々が得た研究成果からは、ICRの衛星細胞は筋分化制御に関わる転写因子群の発現レベルおよび筋管形成能が他の2系統より低いことが明らかとなっている。これらの知見を照らし合わせると、ICRに局在する衛星細胞は遅筋型筋管を形成しやすい特性を獲得しているため、筋分化能が低くなった可能性があると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究成果を踏まえて、ICRの衛星細胞がB6やCの細胞に比べて、遅筋型筋管を形成しやすい制御機構が発達しているため、筋分化能の低下が生じると予想している。今後は、その詳細な制御メカニズムに関する検証を中心に行う予定である。具体的なアプローチとして、これまでの我々の研究より明らかとした遅筋型筋管の形成促進に関わる細胞外因子 semaphorin 3A、および受容体候補因子(neuropilin-1,-2, およびplexinA1-4)の、衛星細胞における発現レベルを系統間で比較する。ICRで突出して発現レベルが高い因子をターゲットに、発現制御実験(過剰発現系や発現抑制系)を用いて機能解析する。同時に、速筋型筋管形成に関わるnetrinファミリーならびにその受容体候補因子(neogenin, Unc5A-C)に着目したアプローチも同時に展開する。 さらにICRの衛星細胞が、筋組織の線維化や脂肪化の起源となる間葉系前駆細胞(FAPs)とコミュニケーションを活発に行う、または衛星細胞自身がFAPs様の細胞へと系譜が変化しているなどの可能性についても検証する。特に、FAPs様細胞へと衛星細胞の特性変化が認められる場合には、ICRと他の2系統の衛星細胞とを共培養し、B6とCの細胞の筋管形成能への影響について調べる。
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