マウスの体温を決定する胎生初期エピジェネティクス機構の解明
Project/Area Number |
22K06055
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 42040:Laboratory animal science-related
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
吉村 祐貴 鳥取大学, 医学部, 助教 (50771242)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2024: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2023: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2022: ¥2,470,000 (Direct Cost: ¥1,900,000、Indirect Cost: ¥570,000)
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Keywords | 初期胚 / 温度 / 次世代解析 / 体温 / マウス / 遺伝子発現制御 / エピジェネティクス |
Outline of Research at the Start |
本研究の目的は、私たちの体温がなぜ37℃で維持されているのか、それはいつ、どのようにして決まるのかを明らかにすることである。恒温動物の多くは抱卵もしくは胎生動物であることから、親の体温、つまり発生期の胚の環境温度に着目したところ、着床前のマウス胚の環境温度が高くなると、出生後成体となったとき、体温が低下することを明らかにした。この現象にはエピジェネティック制御が関係していると考えており、本研究では、マウスの初期胚を用いて温度に依存して変化するエピジェネティクス制御を網羅的に解析する。また、温度に依存して生じたエピジェネティック因子の変化が、体温にも影響を及ぼすか検討したい。
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Outline of Annual Research Achievements |
申請者は、マウス初期胚培養中のわずかな温度変化が、出生後の体温を変化させることをこれまでの研究で明らかにしており、このことは着床前の胚の環境温度が個体の体温決定に関与している可能性を示唆している。本申請では、マウス初期胚の培養温度の変化が、遺伝子発現やエピジェネティック修飾に及ぼす影響を網羅的解析を用いて検討するものである。令和4年度は、マウス初期胚培養において、培養温度の変化によってどのような遺伝子の発現に変化が見られるのか網羅的に解析した。マウス前核期胚を37度(コントロール群)、または38度で約3日間培養し、発生した胚盤胞からTotal RNAを回収しRNA-sequence解析を行った。その結果、37度培養群と38度培養群との2群間で56遺伝子の発現が優位に変化していた。これら56遺伝子についてエンリッチメント解析を行ったところ、解糖系やヌクレオソーム構築に関連する遺伝子群がマウス初期胚の培養温度変化の影響を受けることが示唆された。ヌクレオソームに関連する遺伝子はエピジェネティック制御に重要な役割を果たすことから、マウス初期胚の培養温度が1度上昇するだけで、解糖系やヌクレオソーム構築など、胚の遺伝子発現も変化していることがわかり、かつ、エピジェネティック制御にも影響を及ぼしている可能性が示唆された。したがって、今後はAssay for Transposase-Accessible Chromatin with high-throughput sequencing(ATAC-seq)解析によって、38度培養群においてクロマチン状態が変化するゲノム領域を網羅的に探索したい。この結果を足がかりとし、マウス初期胚における培養温度の変化とエピジェネティック制御との関連、ひいては体温制御との関連について解析を進めていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和4年度は、RNA-sequence解析を中心とした遺伝子発現解析を行った。当初の計画では令和4年度にATAC-seq解析を行い、その後に遺伝子発現解析を行う予定としていたが、さまざまな研究者と議論する上で、ATAC-seq解析はRNA-Sequence解析と比較すると技術的に難易度が高いことや、マウス初期胚の培養温度変化によってクロマチン状態に変化が起こっているとするならば、その近傍にある遺伝子の発現も変化が見られるはずという考えを踏まえた上で、初めにRNA-sequence解析による網羅的遺伝子発現解析を先行させた。その結果、期待していた遺伝子群の発現に優位な差が見られ、ATAC-seq解析を行う有用性がより高まり、堅実に研究を進めることができた。したがって、当初計画していた実験が前後したものの、進捗状況としては概ね良好である。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度は、マウス初期胚培養において1度の温度差で変化するエピジェネティック制御が存在するのか、その可能性を検討する。まずは、ATAC-seq解析を用いて、マウス初期胚の培養温度変化によってクロマチン状態が変化するゲノム領域を網羅的に探索する予定であり、現在その準備を進めている。ATAC-Seq解析の結果は、先に実施したRNA-sequence解析の結果と照らし合わせ、1度の温度差に依存してエピジェネティック状態が本当に変化するのか、またもし本当であるならば先の遺伝子発現解析とどのような因果関係にあるのか調べていきたい。ATAC-seq解析により期待した結果が得られなかった際には、先のRNA-sequence解析で見つけた56遺伝子、特に解糖系やヌクレオソーム構築関連遺伝子に焦点をあて、各遺伝子の発現調節領域や、その領域に関連するエピジェネティック因子についてクロマチン免疫沈降法や免疫染色法を用いて、温度依存的に変化するエピジェネティック制御の有無を検討したい。
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Report
(1 results)
Research Products
(1 results)