Project/Area Number |
22K06091
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 43010:Molecular biology-related
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
石津 大嗣 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (40574588)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,290,000 (Direct Cost: ¥3,300,000、Indirect Cost: ¥990,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
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Keywords | 全能性 / MERVL / レトロトランスポゾン / ブラストイド / シングルセルRNA-seq / TSC / MACS / non-coding RNA |
Outline of Research at the Start |
本研究では、マウスES細胞と2CL細胞を用いて、全能性を規定する核内ゲノム3次元構造を明らかにし、多能性転換におけるMERVLの機能解明を目指す。まず、Hi-C法、LAD-seq、NAD-seqなどの手法によりES細胞と2CL細胞の核内ゲノム構造を比較する。また、アンチセンスオリゴによるノックダウンによりMERVLの機能阻害を行い、ゲノム構造への影響を解析する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、マウスES細胞の培養中にごく稀に現れる2細胞期様細胞(2CLC)のエピジェネティックな特性を解明し、多能性から全能性へのリプログラミング機構の詳細を明らかにすることを目指した。特に、2細胞期胚における胚性遺伝子活性化(ZGA)で活性化されるMERVLレトロトランスポゾンに焦点を当てた。本研究で確立したMagnetic-activated cell sorting(MACS)システムにより、MERVL発現レベルを指標として、ES細胞、2CLC、そしてその移行段階にある中間細胞の三つの集団を効果的に分離することに成功した。各細胞集団に対して行ったシングルセルRNA-seq解析を通じて、それぞれの遺伝子発現ネットワークを推定し、多能性細胞と全能性細胞のそれぞれにおいて特異的に機能する転写因子を同定した。この解析結果から、多能性から全能性への移行にはレチノイン酸シグナル伝達経路が重要であることが示唆された。これを基に、レチノイン酸アナログを用いた全能性細胞誘導法を新たに開発し、通常は胎盤系列に分化しないES細胞が胎盤系列細胞へと分化するかどうかを検証した。誘導型全能性細胞を胎盤系列のtrophoblast stem cell(TSC)の培地で培養した結果、TSCマーカーであるCdx2を発現する細胞の出現を確認した。さらに、これらの誘導型全能性細胞を用いてブラストイドと呼ばれる人工胚盤胞の形成を試みた。その結果、適切なサイトカインを添加した培地で3次元培養することで胚盤胞様構造を持つ細胞構造体が形成された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、MACSシステムを用いてES細胞、中間細胞、および2CLCの分取法を確立した。このシステムにより、数が少なく解析が困難だった全能性細胞を十分量確保し、多能性から全能性への移行過程をシングルセルRNA-seq解析で詳細に調べることが可能となった。解析結果から、全能性と多能性の細胞で重要な役割を果たす転写因子が同定された。特に全能性細胞特異的に働く転写因子の発見は重要な進展となった。これらの転写因子の発現が全能性への移行にどのように関与しているのかを解析することで、全能性リプログラミングの詳細な過程を明らかにすることが期待される。また、今回同定された多能性細胞特異的に働く転写因子は、これまでに多能性との関連が示されていない新規の転写因子だった。これらの転写因子の抑制機構を明らかにすることで全能性リプログラミングの理解を深めることができると期待している。さらに、これらの成果はレチノイン酸アナログを用いた新たな全能性細胞誘導方法の開発に繋がった。この方法により、誘導型全能性細胞から胎盤系列の幹細胞(TSC)を誘導できることが示唆された。従来、このES細胞からTSCへの転換には転写因子Cdx2などの遺伝子導入が必要とされていたが、化合物の添加だけで実現可能であることが示された。これは、胎盤系列細胞の研究にも新たな可能性をもたらす成果と言える。また、誘導型全能性細胞を用いてin vitroでの着床前胚発生を模倣したブラストイドの形成が可能であることが示唆された。これは単一の全能性細胞から自然にES細胞とTSCを分化させるアプローチであり、従来のES細胞とTSCの混合によるブラストイド形成とは大きく異なる。この新しいアプローチは、発生の分子メカニズムをより深く理解するためのin vitroモデルの開発に繋がることが期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
シングルセルRNA-seq解析から同定された多能性細胞特異的な転写因子に着目し、これらの機能を詳細に解明することを目指す。特に、これら転写因子の機能阻害実験を行い、その抑制が全能性マーカーであるMERVLの発現に影響するかどうかを検証する。このアプローチにより、全能性細胞へのリプログラミングプロセスの理解を深め、効率的な誘導法の開発に繋がることを期待している。次に、ES細胞から全能性リプログラミングを経て誘導された全能性細胞が、真の全能性を獲得しているかどうかの検証を行う。これまでにTSC様細胞の形成は達成されたが、エピゲノムレベルでの類似性はまだ確認されていない。これを明らかにするため、エピゲノムの分析を含めた詳細な検証を進める。TSCの形成能力の確認は、全能性細胞の実用化に向けた重要なステップである。さらに、誘導型全能性細胞を使用してブラストイドの形成方法を確立することも計画している。現在、正常な胚盤胞に類似した形態をもつブラストイドの形成効率が低く、内部細胞塊と栄養外胚葉の正常な分化も確認されていない。これらの問題を解決するために、サイトカイン濃度や培養時間を含む培養条件の最適化を行い、効率良く機能的なブラストイドを形成する方法を開発する。これにより、胚発生プロセスをより詳細に模倣したin vitroモデルを作製し、発生生物学の研究に貢献することを目指す。また、このin vitroモデルを基盤として、MERVL発現阻害による全能性細胞形成及び、細胞分化への影響を検証する。
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