非硫酸化型HNK-1糖鎖による腎保護機構の解明と腎機能障害マーカーとしての展開
Project/Area Number |
22K06126
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 43030:Functional biochemistry-related
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
森瀬 譲二 京都大学, 医学研究科, 准教授 (60755669)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,030,000 (Direct Cost: ¥3,100,000、Indirect Cost: ¥930,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
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Keywords | 非硫酸化型HNK-1糖鎖 / 腎機能障害 / meprin α / aminopeptidase N |
Outline of Research at the Start |
慢性腎臓病の予防と早期発見は喫緊の課題であるが、疾患初期には自覚症状が少なく、尿タンパク量や糸球体濾過量も正常値を示す場合もあるためその異常の早期発見は難しい。それに対し近年、糖尿病性腎症で腎臓内糖鎖パターンが変動する報告がなされ、腎臓内糖鎖の機能性が注目され始めた。さらに尿を試料とし、糖尿病性腎症の進行を予測するレクチンアレイ法が最近開発され、糖鎖は腎機能を知る新たな鍵として期待され始めた。以上の背景を元に、本研究では多様な糖鎖の中でも特に非硫酸化型HNK-1糖鎖に焦点を置き、本糖鎖による腎保護作用の可能性およびその発現制御機構の解明に挑戦するものである。
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Outline of Annual Research Achievements |
腎臓内糖鎖は様々な腎疾患に伴いその発現パターンが変化することから、その機能的役割は重要であると考えられる。特に非硫酸化HNK-1 (nonsulfated human natural killer-1; nsHNK-1)糖鎖は、腎臓特異的な発現を示し、老化に伴い増加するといった特徴的発現パターンを示す。本研究はこのnsHNK-1糖鎖の機能的役割およびその発現制御機構の解明を目指すとともに、腎機能障害の早期検出マーカーとしての可能性を探索するものである。 2年度目は、腎臓内nsHNK-1を欠失するグルクロン酸転移酵素GlcAT-S遺伝子欠損(SKO)マウスの表現型の詳細な解析を行った。腎機能マーカーを用いた生化学的解析の結果、老齢SKOマウスでは尿細管ではなく糸球体が障害されている可能性が示唆された。次に、腎臓内で主要なnsHNK-1キャリア分子である膜貫通型メタロプロテアーゼmeprin αとaminopeptidase N (APN)を中心に解析した。meprin αとAPNの共通分解基質として繊維化分子fibronectinとcollagen IVが挙げられることから、nsHNK-1がそれら活性を調節し、腎繊維化を抑制することで腎機能保護的な作用を発揮する可能性が考えられた。実際に、SKOマウスではmeprin αおよびAPN活性が低下しており、collagen IV量の増加が観察された。このことから、腎線維化へのnsHNK-1の関与が示唆された。一方、ヒト近位尿細管株HK-2を用いてAPNに過剰にnsHNK-1を発現させたところ、その活性は低下したことから、nsHNK-1の適切な付加量がその活性を最適化することが示唆された。まとめると、meprin αやAPNへのnsHNK-1の付加がその活性を調節し、腎繊維化を抑制していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は①nsHNK-1の腎機能に対する役割②nsHNK-1の発現制御機構③腎機能障害を早期検出するためのバイオマーカーとしての展開、これら3つのテーマをもとに研究を進める。 初年度では③の内容を中心に進め、2年度目は①の内容を中心に進めた。これまで老齢SKOマウスでは腎機能の指標である尿中アルブミン/クレアチニン比(uACR)が上昇しており、腎機能の異常があることがわかってきた。しかし他のマーカーを用いた解析や、腎臓内のどの部位の障害が強いかまでは明らかとなっていなかった。そこでその表現型を詳細に知るために、血中シスタチンC濃度および尿中NAG活性を調べた。前者は糸球体機能を反映し、後者は尿細管障害の程度を反映するマーカーである。結果、老齢SKOマウスでは尿中NAG活性に差がなく、血中シスタチンC濃度が高いことが明らかとなった。すなわちSKOマウスでは糸球体機能が低下していることが示唆された。 nsHNK-1は近位尿細管に強く発現し、糸球体には見られない。またnsHNK-1の主要なキャリア分子はmeprin αとAPNであり、ともに線維化分子分解酵素であることから、腎繊維化抑制を通じて腎保護作用(特に糸球体)をもたらしているのではないかと考えた。そこでSKOマウスやHK-2細胞を利用し、nsHNK-1の発現有無によるそれら活性への影響および線維化分子の発現量変化を調べた。結果、SKOマウス腎臓ではcollagen IV量が増加しており、meprin α活性およびAPN活性はSKOマウスで減少していたことから、nsHNK-1の発現低下が腎繊維化を誘導している可能性が示唆された。HK-2細胞から得たnsHNK-1過剰発現APNの活性を調べると、nsHNK-1の無いAPNより活性が低かったことから、nsHNK-1の適切な付加量がその活性を最適化することが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は②のnsHNK-1発現制御機構について調べていく。腎臓内nsHNK-1の発現量は加齢とともに増加するが、同じく酸化ストレスも増強することが知られる。GlcAT-S遺伝子(B3GAT2)のプロモーター近傍には酸化ストレス関連転写因子の予測結合部位が存在することから、GlcAT-Sは酸化ストレスにより発現制御されることが予想された。そこで酸化ストレス誘導時のnsHNK-1量の発現変化や、その上流を司る可能性のある分子の阻害または活性化を誘導し、その解析を試みる。一方で薬剤投与により高血糖を誘導したマウスでは、腎臓内nsHNK-1量が顕著に増加することが我々の事前の解析で明らかとなっている。この際GlcAT-S量に大きな変動は見られないことから、nsHNK-1発現制御には別の要因も関わる可能性が考えられる。ここでグルクロン酸供与体はグルコースを元に細胞内で生合成されることに着目すると、グルコース量増加に伴いグルクロン酸供与体量が増加し、結果的に腎臓内nsHNK-1量が増加する可能性が新たに考えられた。そこで各腎機能障害を誘導したマウスや若齢・老齢マウスにおいてグルクロン酸供与体量を比較し、グルクロン酸供与体量が腎臓内nsHNK-1発現量に関与しうるかを調べる。老化や腎機能障害に伴う腎臓内nsHNK-1発現量の増加がどちらの現象に起因するかを調べた上で、その経路の阻害または活性時にmeprin aおよびAPN上のnsHNK-1の発現量がどのように変化するかを解析することで、詳細なnsHNK-1発現制御機構を明らかにしていく。
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Report
(2 results)
Research Products
(17 results)