分子夾雑環境におけるヌクレオソームDNAの塩基配列依存的アンラッピングの解析
Project/Area Number |
22K06176
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 43040:Biophysics-related
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Research Institution | National Institutes for Quantum Science and Technology |
Principal Investigator |
角南 智子 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子生命科学研究所, 主幹研究員 (50554648)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,030,000 (Direct Cost: ¥3,100,000、Indirect Cost: ¥930,000)
Fiscal Year 2024: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2023: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2022: ¥2,730,000 (Direct Cost: ¥2,100,000、Indirect Cost: ¥630,000)
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Keywords | ヌクレオソーム / 光ピンセット / FRET / DNA / 配列特異性 / 転写 / 分子夾雑 |
Outline of Research at the Start |
DNAは単なる生命の設計図の記録媒体ではない。塩基配列によって異なる力学的な性質を有する分子である。ヌクレオソームはクロマチンの最も基本的な単位であるが、遺伝情報が読み出される際には必然的にヌクレオソームDNAがヒストンタンパク質からほどけなければならないので、塩基配列によるDNAのほどけやすさの違いを明らかにすることが重要な課題である。 近年、細胞内は種々の分子が混み合った環境(分子夾雑環境)であることが指摘されている。本研究では、FRET法と光ピンセット法を用いてヌクレオソームDNAのほどけやすさとほどける過程を分子夾雑環境下で解析することで、塩基配列の遺伝子発現制御への寄与を解明する。
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Outline of Annual Research Achievements |
ヌクレオソームは真核生物のクロマチンを構成する基本的構成因子であるが、遺伝子の読み出しの際にはヌクレオソームのDNAが解かれなければならないため、ヌクレオソームDNAの解けやすさに塩基配列の力学的性質がどのように関わっているのかを明らかにすることは生物学的に重要な課題である。 近年、細胞内は、種々の分子が混み合った環境(分子夾雑環境)であり、DNAやタンパク質が希釈状態とは異なる構造・異なる相互作用を持っている可能性が指摘されている。本研究では、ヌクレオソームDNAのほどけやすさとほどける過程を分子夾雑環境下で解析することによって、生体環境における遺伝子発現制御に対するDNAの塩基配列の寄与を解明する。 以下、交付申請書に記載した2つの事項について説明する。 (1)FRET法によるヌクレオソームのほどけやすさの解析: 22年度は、蛍光物質を付与したモノヌクレオソームで異なるDNA配列を持つものを作成し、通常の溶媒下で、時間相関単一光計数法によるFRET測定を行うことで、DNAのほどけやすさを調べた。結果、AA配列を含むヌクレオソームDNAが他の配列よりもほどけやすいことを見出した。これによって、この方法で塩基配列特異性の差が定量的に計測可能であることを確認した。 (2)光ピンセット法によるヌクレオソームのほどける過程の解析: 22年度は、通常溶媒下で光ピンセット実験に適したDNAの長さを検討した。最終的に、約8.5kbpのDNA上にヌクレオソームが12個並んだものを作成し、光ピンセットで固定して、DNAのアンラッピングの過程を観察可能であること、実際に平均して12個のヌクレオソームがDNA上に存在することを確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1) FRET法: ヌクレオソーム形成配列である601配列に基づいた何種類かの蛍光モノヌクレオソームを再構成によって作成した。次に、通常溶媒下で、時間相関単一光計数法を使用して蛍光強度の減衰を測定し、モデルにあてはめて計算することでFRET効率を求めた。その結果、AA配列を持つものが他の配列と比較すると、塩添加に対して不安定であることを見出した。これによって、この手法を用いることで、塩基配列によるヌクレオソームDNAのほどけやすさの差を定量的に検出できることを確認した。 (2) 光ピンセット法: 光ピンセット実験に適切なDNAの長さを検討し、最終的に、約8.5kbpの線状化プラスミドDNAの両末端にビオチン化を入れることで、ビーズ間にDNAをトラップでき、DNA間に掛かる力の測定ができることを見出した。そこで、このプラスミドDNA上に12個の601配列を有するDNAを導入し、DNAの末端にビオチン標識を行ったあとに、ヌクレオソームの再構成を行った。そして、平均して12個のヌクレオソームが実際にDNA上に作成できていることを光ピンセット実験によって確認した。 以上の実験を行ったことによって、次年度以降に分子夾雑環境下での測定を行う準備をすることができた。そのため、研究はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
研究実施計画で記載した2つの研究目的について、今後の研究の推進方策を記載する。 (1) FRET測定: 22年度は、通常溶媒で時間相関単一光計数法による蛍光測定を行うことで、ヌクレオソームDNAのFRET効率の解析方法を確立できた。今後は、まずは、光ピンセット実験で溶媒の条件の検討を行った後に、得られた溶媒条件についてFRET実験を行うことでヌクレオソームDNAの自発的なほどけやすさがどの程度分子夾雑の影響を受けるのかを明らかにしていく。 (2) 光ピンセット法:22年度は、光ピンセット実験に適したヌクレオソームDNA試料の作成方法を検討した。次年度以降はこの試料を用いて分子夾雑環境下での実験条件の検討を行う。分子夾雑環境を作り出すのに必要な薬剤として、PEG、デキストリンなどの合成高分子、および、タンパク質分子夾雑剤としてBSAを試みる。更に、光ピンセットで観察される力の変化がどのような相互作用によるものなのかを詳細に検討するために、蛍光ヒストンを導入したヌクレオソームやヌクレオソームの数を減らした試料を調製する。(1)で見出された塩基配列を導入した試料を作成し、塩基配列の影響を検討する。 本研究で起こった予定外の事象として、蛍光装置および光ピンセット装置の故障がある。これらは、既に本年度中に修理が終わっており、やり残したFRET測定については次年度以降に実施する。
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Report
(1 results)
Research Products
(4 results)