Project/Area Number |
22K06198
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 44010:Cell biology-related
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
細金 正樹 東北大学, 医学系研究科, 助教 (30734347)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
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Keywords | 翻訳制御 / tRNA / 小胞体 / スプライシングバリアント / リボソーム |
Outline of Research at the Start |
本研究では肝臓の発生段階におけるリボソームヘテロジェネイティに注目し、翻訳調節への意義、その構成と構造、生じるメカニズムを明らかにする。我々は細胞に必須と考えられてきたリボソームタンパク質(RP)を欠損したリボソームを胎仔肝臓において発見したので、1) RP欠損による翻訳調節の肝臓発生における役割、2) 胎仔肝臓におけるリボソームの構成・構造とそれを生み出すメカニズム、3) 細胞モデルを樹立し肝臓のリボソーム機能の詳細な解析を進める。これらを通して、肝臓発生過程におけるリボソーム制御を理解し、細胞種特異的にリボソームヘテロジェネイティが生じる機構とその役割を理解する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は発生段階における翻訳制御の多様性に注目し、翻訳調節への意義、その構成と構造、生じるメカニズムを明らかにすることである。複数の翻訳関連遺伝子の様々なマウス組織での遺伝子発現を再解析し、当初計画していたRPS6よりも顕著な組織特異的発現を示す翻訳伸長因子のEef1d小型バリアントを見出した。Eef1dは小胞体(ER)膜上のKtn1タンパク質を介して小胞体に局在し、このEef1dとKtn1のER膜上での結合がEef1dの組織特異的スプライシングにより制御されることを初年度の実験で明らかにした。当該年度の実験では、さらにKtn1の組織特異的スプライシングに着目し、Ktn1のスプライシングバリアント特異的にtRNA合成酵素が小胞体に動員されることを明らかにした。翻訳の場で、翻訳伸長反応が円滑に進まないとmRNA上で翻訳中のリボソームが停滞する。そのような翻訳の不調は、異常タンパク質の蓄積や細胞のストレス応答を誘発し、結果として疾患発症の原因になると考えられる。細胞内で翻訳を円滑に進めるためには、リボソームに加えて翻訳伸長に必須な翻訳制御因子を翻訳の場に適切に供給することが必要であるが、その詳細なメカニズムは明らかではない。ER膜タンパク質であるKtn1がERに動員するEef1dやtRNA合成酵素は翻訳反応に必須分子である事実を考えると、我々の研究はERにおける翻訳伸長を制御する新しいタンパク質翻訳制御システムの解明につながることが期待される。次年度ではこれらの「Eef1d-Ktn1-MSC axis: 翻訳伸長因子のERと細胞質間での局在制御の知見」を発展させ、Eef1d-Ktn1-MSC axisがタンパク質翻訳制御に与える影響について調べる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の最初の実験として、胎仔肝臓のリボソームの構成と構造の全容解明のために、質量分析で胎仔と成体の肝臓の精製リボソーム中の全リボソームタンパク質を定量解析した。その結果、質量分析レベルでは残念ながら当初想定していたRPS6やRPL8の発現減少は観察されなかった。申請時はRPS6のリボソームヘテロジェネイティに着目した解析を予定していたが、計画を変更し、より顕著な組織間での発現変化が観察できる他の因子の解析に移行することにした。翻訳伸長因子EEF1Dは粗面小胞体に存在する膜タンパク質のひとつKinectin1(KTN1)と結合することが報告されていた。初年度の研究ではこの知見を発展させ、EEF1Dの組織特異的スプライシングバリアントに結合するタンパク質を免疫沈降し質量分析で解析した。その結果、KTN1とEEF1Dの結合がEEF1Dの選択的スプライシングで制御されており、免疫染色実験によってKTN1結合の有無によってER局在型と細胞質局在型のEEF1Dバリアントが存在することを明らかにした。さらに、当該年度ではKTN1の組織特異的スプライシングバリアントに結合するタンパク質を免疫沈降し質量分析で解析した。その結果、KTN1の特定のスプライシングバリアントはMulti-tRNA Synthetase Complex (MSC)を形成するアミノアシルtRNA合成酵素群全てと結合することを見出した。さらに、免疫染色実験によりKTN1とMSCの結合の有無によって、MSCのER局在が制御されることを明らかにした。これらの知見は、申請時に予期したものではなかったが、ERと細胞質という異なる翻訳の場に翻訳伸長因子やtRNAを供給するメカニズムと、組織特異的スプライシングがそれをコントロールしていることを実例として示すことが期待され、世界を驚かす独創的な研究成果になると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
我々のデータは、細胞がKTN1とEEF1DやMSCとの相互作用を調節して、翻訳必須分子のER局在を制御していること(EEF1D-KTN1-MSC axis)を示している。現時点での新たな重要課題はEEF1D-KTN1-MSC axisによる制御が翻訳に与える影響を具体的に示すことである。翻訳への影響を観察する重要な実験方法にプロテオーム解析やリボソームプロファイル法がある。円滑なプロテオーム解析やリボソームプロファイル解析を行うために豊富な解析経験をもつ国内の専門家との共同研究を開始した。今後はEEF1DやMSCがER局在、または細胞質局在を示す実験条件でどのようなクラスの遺伝子に翻訳の影響がでるか網羅解析を行う。EEF1DはリボソームへのtRNAの供給に関わる分子、MSCはtRNAのアミノアシル化に関わる分子であることから、観察される翻訳への影響はtRNAの供給やアミノアシル化レベルの調節を介する可能性が高い。そこで、EEF1DやMSCがER局在、または細胞質局在を示す実験条件でtRNAノーザンブロットやtRNA-sequenceでのデータ取得を想定している。またEEF1Dのスプライシングバリアント特異的ノックアウトマウスを作成しており、マウスの表現型解析を通してKTN1を介したEEF1DのER局在の生体内での機能的意義を解明する。
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