脊索崩壊に着目した両生類変態における尾部退縮機構の解析
Project/Area Number |
22K06239
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 44020:Developmental biology-related
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
中島 圭介 広島大学, 両生類研究センター, 助教 (60260311)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田澤 一朗 広島大学, 両生類研究センター, 助教 (10304388)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,290,000 (Direct Cost: ¥3,300,000、Indirect Cost: ¥990,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
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Keywords | 脊索 / 硬骨 / 生体染色 / 受容体 / 変態 / 尾部退縮 / カルセイン / アリザリンレッド / olfm4 / scppa2 / thyroid hormone / receptor / metamorphosis |
Outline of Research at the Start |
変態現象は殆どの動物門において観察され、極めて普遍性の高い生存戦略である。甲状腺ホルモンによる無尾両生類の変態において、急激な尾部退縮は劇的であり、筋細胞死はアポトーシスの典型例である。しかし、甲状腺ホルモン受容体βノックアウトカエルの尾では、筋細胞死が起きているにも関わらず、尾部の退縮と脊索の崩壊が顕著に抑制された。この結果は、急激な尾部の退縮には脊索の崩壊が必須であることを示唆する。本研究は、「脊索の崩壊が急激な尾の退縮の本質的な要因である」という新たな発想に基づき、マイクロCT を用いた形態学的解析とノックアウト技術を組み合わせ、尾部退縮における脊索崩壊の役割と分子機構を明らかとする。
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Outline of Annual Research Achievements |
変態現象は殆どの動物門において観察される、極めて普遍性の高い生存戦略である。無尾両生類の変態において、最も劇的な変化は尾部の退縮である。急激な尾部退縮における筋細胞死はアポトーシスの典型例であり、多くの研究が行われてきた。ところが、甲状腺ホルモン受容体βノックアウトカエルの尾では、筋細胞死が起きているにも関わらず、尾部の退縮が大幅に抑制された。そして、脊索の崩壊が顕著に抑制されていた。申請者らによるこの最新結果は、急激な尾部の退縮には脊索の崩壊が必須であることを強く示唆している。本研究は、「脊索の崩壊こそが急激な尾の退縮の本質的な要因である」という全く新しい発想に基づき、尾部退縮における脊索崩壊の役割と分子機構を明らかとする。本研究により得られた知見は、尾部の退縮機構の解明に向けたブレークスルーとなり得るだけでなく、甲状腺ホルモンの作用機序に新展開をもたらすことも期待できる。 マイクロCTによる脊索の直接観察が困難であったため、生きたまま硬骨を染色・観察する方法の開発を行なった。この結果を論文にまとめ、インパクトファクター3を超える Development, Growth & Differentiation 2022; 64 (7): 368-378に発表した。 また、変態期の脊索において強い発現上昇が観察される4遺伝子の発現を甲状腺ホルモン受容体βノックアウトカエルの脊索で測定したところ、olfm4以外の3遺伝子は発現量の減少が観察されなかった。このことは受容体αによる補償作用を示唆していると同時にolfm4遺伝子は受容体β特異的な制御を受けていることも示唆している。二つの甲状腺ホルモン受容体の機能的な差を明らかとするためにolfm4のプロモーター解析を進めており、途中経過をシンポジウムや学会において発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
脊索の崩壊は脊椎骨の形成と深い関わりがある。「研究実績の概要」において述べたように、マイクロCTによる脊索の直接観察が困難であったため、生きたまま硬骨を染色・観察する方法の開発を行なった。これまでに報告されていたアリザリンレッドとカルセインを用いて前変態期から変態終了後の小ガエルまでの染色条件を検討し、発生段階61以前と以後では染色性が大きく異なり、染色条件を変える必要があることを明らかとした。また、カルセインはエラなどを染色してしまい、バックグラウンドも高いことから、アリザリンレッドによる染色の方がカルセインによる染色よりもネッタイツメガエルの染色には適していることを明らかとした。これらの結果を論文にまとめ、Development, Growth & Differentiation 2022; 64 (7): 368-378に発表した。想定外の状況から派生的に生じた研究ではあるが、インパクトファクター3を超える査読付き原著論文として発表できたため、研究はおおむね順調に進展していると評価する。 また、二つの甲状腺ホルモン受容体の機能的な差を明らかとするためにolfm4のプロモーター解析を進めている。プロモーター領域をGFPの上流にクローニングし、このコンストラクトを用いたトランスジェニックガエルを変態期まで育成し、GFPの発現量を指標としてプロモーター活性を評価している。転写開始点上流13kbpと1kbpのfirst intronを用いたところ、変態期に転写活性があることを示唆するデータを得ている。この結果を学会やシンポジウム等で発表している。このことからも研究はおおむね順調に進展していると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は「脊索崩壊は、いつ、どこで、どのように起こっているのかを明らかとすることを目的としている。そのため今後の研究は以下の方策で推進していく。 いつ:変態期の様々な発生段階の個体の形態観察を行い、尾の退縮と脊索崩壊のタイミングを明らかとする。脊索全体の形態だけではなく、脊索内の空胞化細胞の形態も観察する。組織切片の観察により、尾部退縮時の筋細胞死との関連なども明らかとする。脊索崩壊の重要性が示された場合は、受容体βノックアウト個体の観察も行い、尾部退縮における脊索崩壊の重要性を確認する。 どこで:意外なことに、「体幹部と尾部の脊索が同時に崩壊するのか」、または「尾部が先なのか」といった基本的なことすら不明である。体幹部の脊索は脊椎骨と強力に癒着しているために背腹方向に潰れると思われるが、尾部の脊索は頭尾軸に沿って縮む可能性も高い。組織観察による解析によりこれらの点も同時に明らかにする。もしも体幹部よりも早く尾部脊索が崩壊する場合は、これを制御する分子機構を明らかとするために、変態期の尾部脊索で空間的・時間的に特異的に発現量が上昇する4つの遺伝子(oflm4, scppa2, mmp9th, mmp13)の発現を、 in situ hybridization を用いて比較する。 どのように:上記4遺伝子のうち、mmp9-th と mmp13 は細胞外基質分解酵素であり、脊索退縮の実行遺伝子であると推察される。olfm4 は腸の幹細胞マーカーとしてよく知られ、scppa2 は、骨や歯の形成時にカルシウム沈着の足場となる scpp ファミリーの一員である。olfm4, scppa2 の既知の働きは、脊索の退縮と関連するとは考えにくいため、脊索崩壊を誘導する未知の機能を持っている可能性が考えられる。KO動物の解析により、これら二つの遺伝子の機能や制御機構を明らかとする。
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Report
(1 results)
Research Products
(14 results)