Project/Area Number |
22K06247
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 44020:Developmental biology-related
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Research Institution | Sophia University (2023) Kanazawa University (2022) |
Principal Investigator |
八杉 徹雄 上智大学, 理工学部, 准教授 (90508110)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2024: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
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Keywords | ショウジョウバエ / 視覚中枢 / 数理モデリング / 数理モデル |
Outline of Research at the Start |
組織の発生現象において、未分化細胞の増殖と分化は細胞内、あるいは細胞間の様々なシグナル経路の相互作用によって厳密に制御される。本研究では、未分化細胞の増殖と分化が時空間的に制御された中で起こるショウジョウバエ視覚中枢の発生に着目する。生物学的な実験と数理モデリングの手法を組み合わせることにより、未分化細胞から分化細胞が規則正しく産生される機構の理解を目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
生物の発生現象において、未分化細胞の増殖と分化は様々なシグナル経路の相互作用によって厳密に制御される。この組織形成ダイナミクスの解明は、発生現象の解明に必須なだけでなく、ダイナミクスの破綻に起因する種々の疾患の理解や治療への応用も期待できる。本研究では、未分化細胞の増殖と分化が時空間的に制御された中で発生するショウジョウバエ視覚中枢の発生をモデルとし、実験生物学的手法と数理生物学的手法を組み合わせることにより組織形成ダイナミクスの解明を目指している。視覚中枢の発生では、発生初期に未分化な神経上皮細胞の増殖が起こり、発生後期に神経上皮細胞は神経幹細胞へと分化する。神経上皮細胞から神経幹細胞への分化は一方向的に進行する(「分化の波」)。本研究では、「分化の波」の進行に関与する種々のシグナル経路に加え、神経上皮細胞の増殖に関与するシグナル経路の働きを正確に記述することで、組織形成ダイナミクスを規定するシグナル間相互作用の解明に取り組んでいる。2023年度は下記の3課題に重点をおいて研究を推進した。 1. 神経上皮細胞の増殖能の時空間的な定量解析と、定量データから得られるパラメータを数値計算に導入することを試みた。 2. 細胞の大きさや細胞格子の形状の情報を保存したまま空間離散モデルを連続化する手法とその応用について「応用数理」誌で発表した。 3. 2022年度に行った実験から、これまで生殖系列特異的と考えられた遺伝子が、幼虫脳でも発現することを発見した。この遺伝子についてグリア細胞においてこの遺伝子の機能を阻害した時の発生異常について解析を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1. 幼虫脳を用いて視覚中枢のライブイメージングを行うことにより神経上皮細胞の増殖と「分化の波」の進行の定量解析を試みた。今後、より精細なデータを得るために、細胞種の特異性が高いと考えられる系統を用いて実験を継続する。 2. 生殖系列特異的遺伝子についてはグリア細胞特異的に機能を抑制すると幼虫脳の形態異常の表現型が観察された。さらに詳細に観察すると、グリア細胞における機能抑制は神経幹細胞の増殖異常の表現型を示すことがわかった。また、この遺伝子は幼虫期において前胸腺や唾液腺など複数の体細胞組織で発現することを明らかにした。前胸腺および唾液腺における機能抑制は核サイズ、細胞サイズ、組織サイズの減少を示した。現在、グリア細胞における機能抑制が神経幹細胞の増殖に影響するメカニズムの解明を進めている。また、この遺伝子の下流で作用する因子を特定するため、唾液腺をモデルとしてRNA-seq実験を実施するための条件検討を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
1. ライブイメージング実験を継続し、最適の条件を調べる。また、Hippoシグナルやインスリンシグナルを阻害した場合の神経上皮細胞の増殖能についても定量し、得られたパラメータを数理モデルの数値計算に用いて、正常な分化パターンが再現できるか調べる。さらに、パラメータサーチを行うことで、これまで知られていないシグナル経路の機能や、シグナル間相互作用の存在が予測できる。その存在を明らかにするために。シミュレーション結果を再現する実験をデザインする。ショウジョウバエの遺伝学的手法を駆使し、数理モデルから予測される発生パターンが観察されるか、生物学的実験により検証する。これらの知見を統合して、未分化細胞から規則正しい分化パターンを生み出す組織形成ダイナミクスの理解に導く。 2. 生殖系列特異的遺伝子についてはグリア細胞、前胸腺、唾液腺での機能を明らかにする。グリア細胞については、グリア細胞のサブタイプ特異的に機能抑制実験を行い、どのグリアサブタイプの発現が重要か調べる。さらに、グリア細胞における機能抑制が神経幹細胞の増殖に影響を与える影響を明らかにする。また、前胸腺、唾液腺における役割を明らかにする。これらの組織は「核内倍加」と呼ばれる特殊な細胞周期によって細胞内の染色体数が増加し、細胞サイズと組織サイズが増大することが知られている。生殖系列特異的遺伝子の機能抑制は細胞サイズと組織サイズの減少の表現型を示すことから、この遺伝子はこれらの組織での核内倍加に必要なのではないかと仮説を立てている。この仮説を検証するために、細胞周期や下流で作用する因子について詳細に調べる。
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