原始的な繊毛虫における交配フェロモンの多様性とその受容機構の解明
Project/Area Number |
22K06315
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 44050:Animal physiological chemistry, physiology and behavioral biology-related
|
Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
杉浦 真由美 奈良女子大学, 自然科学系, 准教授 (60397841)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
臼杵 克之助 大阪公立大学, 大学院理学研究科, 准教授 (30244651)
春本 晃江 奈良女子大学, ダイバーシティ推進センター, 特任教授 (80198936)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
|
Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2025: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
|
Keywords | 繊毛虫 / 交配フェロモン / 有性生殖 |
Outline of Research at the Start |
本研究では、原生生物繊毛虫の中でも進化的に初期に分岐したグループと考えられているブレファリズマ属(繊毛虫類異毛綱)に注目し、より原始的な繊毛虫にみられる独創的な有性生殖(接合)の分子機構を探る。ブレファリズマの接合には、繊毛虫の中で唯一糖タンパク質とアミノ酸誘導体を交配フェロモンとして用いるなど多くの独特な特徴がみられる。本研究では、交配フェロモン受容体や接合誘導に関連する新たな因子の同定を行い、交配フェロモンの受容機構の解明を目指す。また、ブレファリズマ属の種間認識に関わる交配フェロモンの多様性を探る。
|
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、原生生物繊毛虫の中でも進化的に比較的初期に分岐したグループであり、交配フェロモンや接合過程に独特な特徴をもつブレファリズマ属に注目し、繊毛虫の有性生殖(接合)のより原始的な分子機構を探ることを目的としている。ブレファリズマは二種類の相補的な接合型(I型、II型)をもち、I型細胞は交配フェロモン、ガモン1(糖タンパク質)を、II型細胞はガモン2(トリプトファン誘導体)を分泌する。本研究では、ブレファリズマの接合前相互作用において重要な役割をもつガモンの受容体の探索、接合型特異的にはたらく接合関連因子の同定、ブレファリズマ属の種間認識に関わるガモン1の多様性の探求を計画しており、令和4年度は主に以下のことに取り組んだ。 【交配フェロモン受容体候補の探索】II型細胞がもつガモン1受容体候補を探索するため、II型細胞におけるガモン1結合タンパク質を生化学的に検出する方法を検討した。I型細胞がもつガモン2受容体に関しては、これまでに我々が構築した性成熟度や接合型の異なるブレファリズマを用いた網羅的遺伝子発現解析データをもとに、ガモン2受容体候補遺伝子を選別し、複数種における配列決定を行った。また、ビオチン標識ガモン2を合成し、ガモン2受容体に結合する可能性を検証した。さらに、ビオチン標識ガモン2で処理したI型細胞におけるガモン2受容体の局在検出を試みた。 【ブレファリズマ属内の交配フェロモンの多様性の検討】ブレファリズマ属の中でより初期に分岐した種であるBlepharisma hyalinumのガモン1相同遺伝子の配列の確認を行い、タンパクレベルでの検出を試みた。 【接合型特異的にはたらく接合関連因子の探索】ブレファリズマの網羅的遺伝子発現解析の結果をもとに、I型細胞で特異的に高発現している可能性のある配列を選別して全長ORF配列を決定し、配列の特徴を明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和4年度は、以下の各研究課題に取り組み、着実に新たな知見を得た。 【交配フェロモン受容体候補の探索】II型細胞がもつガモン1受容体候補の探索を目的として、II型細胞におけるガモン1結合タンパク質を生化学的手法によって検出するため、様々な工程の条件検討を行った。また、I型細胞がもつガモン2受容体候補の探索を目的として、性成熟度や接合型の異なるB. stolteiにおける網羅的遺伝子発現解析データをもとに、ガモン2受容体候補として飢餓状態のI型細胞で優位に発現する配列を選別し、B. stolteiのI型細胞における全長配列、及び他種における相同配列の部分配列を決定した。また、ビオチン標識ガモン2を合成し、I型細胞に作用させて接合への影響をみることによって、合成したビオチン標識ガモン2がガモン2受容体に結合することを明らかにした。ビオチン標識ガモン2を用いてI型細胞におけるガモン2受容体の局在解析を行い、ガモン2受容体が局在している可能性が高い部位を検出した。 【ブレファリズマ属内の交配フェロモンの多様性の検討】ブレファリズマ属の中でより初期に分岐した種であるB. hyalinumのガモン1相同遺伝子について、ゲノム配列とcDNA配列の全長クローンを単離し、配列の特性を調べた。また、B. hyalinumの細胞外液から分泌糖タンパク質の検出を試みた。 【接合型特異的にはたらく接合関連因子の探索】ブレファリズマの網羅的遺伝子発現解析の結果をもとに、Ⅰ型細胞で特異的に高発現している可能性のあるRNA配列を選別した。ドイツのマックス・プランク生物学研究所のDr. Estienne Swartとの共同研究により構築したB. stoltei(ATCC30299株、I型細胞)のゲノムデータを用いて、候補RNAが由来するゲノム配列の全長を予測、実験的に確認し、配列の特徴を明らかにした。
|
Strategy for Future Research Activity |
令和4年度に得られた成果をもとに、今後は以下のように研究を進めていく予定である。 【交配フェロモン受容体候補の探索】様々な工程の条件検討結果をもとに、同種のガモン1で処理したII型細胞におけるガモン1-ガモン1結合タンパク質複合体の検出を試みる。候補タンパク質が検出された場合は、質量分析による同定を行う。また、I型細胞がもつガモン2受容体候補として選別したI型細胞で優位に発現する候補配列については、複数種のI型、II型細胞における全長配列を決定し、種間での構造比較、及び発現解析を行うことによりガモン2受容体である可能性を検証する。ビオチン標識ガモン2を用いたI型細胞におけるガモン2受容体の局在解析については、これまでに検出されたシグナルがガモン2受容体に特異的なシグナルかどうかを検証する。 【ブレファリズマ属内の交配フェロモンの多様性の検討】B. hyalinumのガモン1相同遺伝子について、他種のガモン1と同様に接合誘導に関与している可能性を検証するため、接合に適した条件においたB. hyalinumにおけるガモン1相同遺伝子に由来するRNA、タンパク質の発現の有無を調べる。 【接合型特異的にはたらく接合関連因子の探索】Ⅰ型細胞で特異的に高発現している可能性のある候補配列について、接合型特異的な発現を示すかを確認する。さらに、接合誘導時や一連の接合過程における発現パターンの変化を調べ、接合に関与している可能性を検証する。また、II型細胞で特異的に高発現している可能性のある配列にも注目し、接合時に重要なはたらきをしている可能性がある「接合型特異的にはたらく接合関連因子」の探索を進める。
|
Report
(1 results)
Research Products
(4 results)