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チョウの食草選択的産卵行動における「食草品質検査器官」としての産卵管の役割の解明

Research Project

Project/Area Number 22K06329
Research Category

Grant-in-Aid for Scientific Research (C)

Allocation TypeMulti-year Fund
Section一般
Review Section Basic Section 44050:Animal physiological chemistry, physiology and behavioral biology-related
Research InstitutionJT Biohistory Research Hall

Principal Investigator

宇賀神 篤  株式会社生命誌研究館, その他部局等, 研究員 (00747032)

Project Period (FY) 2022-04-01 – 2025-03-31
Project Status Granted (Fiscal Year 2023)
Budget Amount *help
¥4,030,000 (Direct Cost: ¥3,100,000、Indirect Cost: ¥930,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Keywords化学感覚 / 味覚 / 産卵管 / チョウ / 食草選択 / Odorant-binding protein / 食草認識 / 化学物質受容 / 味覚受容体
Outline of Research at the Start

チョウの仲間は,自身は花蜜を摂取するのみのメス親が,幼虫の食草となる特定の植物種を正確に認識し産卵する能力を持つ。ミカン科植物を利用するナミアゲハを用いた先行研究から,「メス成虫が前肢先端の味覚感覚子において植物化学物質を受容し,食草か否かの識別をしている」ことが明らかとなっている。しかし,前肢にミカン葉を提示した際でも,産卵管の突き立ては高頻度に生じるものの必ずしも卵の産み付けに至るわけではなく,最終的な産卵可否の決定には前肢以外からの情報が鍵となると考えられる。本研究では産卵管を産み付け箇所の質を確認する「最終品質検査器官」として捉え,化学物質受容の生理機構とその生態的意義の解明を行う。

Outline of Annual Research Achievements

チョウの仲間は,自身は花蜜を摂取するのみのメス成虫が,幼虫の食草となる特定の植物種を正確に認識し産卵する能力を持つ。植物の匂いや色を手掛かりに飛来したメス成虫は,前肢で葉の表面を叩く「ドラミング」を経て,産卵へと至る。しかしながら,注意すべき事実として,産卵プロセスにおいて最後に基質に触れる器官は前肢ではない,ということが挙げられる。卵産み付けのまさにその瞬間,植物に触れるのは産卵管である。チョウ・ガの仲間の産卵管は,主としてPapilla analis (Pa)と称されるクチクラからなる一対の外皮とその中の卵管から構成される。過去の解剖学的な研究から,様々なチョウ・ガにおいてPaには多数の機械感覚子に加えて数本の化学感覚子が存在することが報告されている。本研究では,産卵管が単なる「卵の産み付け装置」ではなく「食草の最終品質検査器官」として機能する可能性を想定し,産卵管が担う前肢と異なる化学感覚受容の分子機構の解明を目指す。
2022年度の解析から,Paには多数の機械感覚子が分布するものの,産卵基質に触れると思われる背側外縁部にのみ10本の味覚感覚子の特徴を有する橙色の感覚子(以下,味覚感覚子として扱う)が限局することが明らかとなった。また,味覚受容体(GR),嗅覚受容体(OR),イオノトロピック受容体(IR),化合物結合タンパク質(OBP)といった化学感覚関連遺伝子群のうち,OBP12,18と名付けた2つのOBP遺伝子が産卵管で前肢や触角,口吻よりも顕著に高発現することを見出している。特にOBP18は性成熟や交尾経験依存に発現が上昇する。2023年度は,①これらのOBP遺伝子のPa内での発現箇所の可視化,②産卵管における化学感覚受容の役割を明らかにするための行動実験を中心に実施した。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

1. 産卵管に高発現するOBPの局在
蛍光in situ hybridizationによりPaにおける発現箇所を可視化した。味覚感覚子が100本近く分布する前肢と異なり,産卵管にはわずか10本しか存在しないため,味覚感覚子との対応関係を調査するためには正確なオリエンテーションの切片回収が重要となる。幸い良質な切片を作成することができ,OBP18が味覚感覚子近傍に限局して発現する様子が観察された。対照的にOBP12はPaに広範に発現していた。このことから, OBP18は化学感覚受容に関わるものの,OBP12は全く異なる役割を持つと考えられる。
2. 行動実験系の確立
前肢における化学感覚受容に着目した先行研究で行われてきた行動実験では,ろ紙や模造葉の片面に抽出物や水溶液を塗布することで,前肢にのみ化学物質が触れる状態にして行動観察がなされている。本研究では,プラスチック製の模造葉の一方の面にミカン葉抽出物を,他方の面に様々な物質を塗布した。ミカン側を前肢で触れさせると腹部が屈曲し,露出した産卵管が反対側に接触するため,産卵管が基質に触れた際に任意の物質を提示可能である。本年度は,前肢と同様に「食草か否か」の識別に寄与する可能性を検証した。産卵管が非寄主植物の抽出液や苦味物質の溶液に触れた場合でも全ての試行で産卵が確認された。前肢が非寄主植物や苦味物質に触れた場合には産卵は生じないことから,「食草か否か」の識別は前肢が担っており,産卵管における化学物質受容は前脚と異なる独自の役割を持つ可能性が考えられる。

Strategy for Future Research Activity

1. 行動実験および電気生理学的解析による産卵管で受容する化学感覚情報の同定
「食草か否か」の識別は産卵管ではなされていないことが2023年の行動実験から明らかになった。では,一体何をしているのだろうか?オオモンシロチョウにおいては,同種の卵殻表面の化学物質がメスの産卵を抑制し,Paの味覚感覚子で電気生理応答が生じることが報告されている。本研究においても,この可能性を検討する必要がある。それ以外に,ミカンの葉にはコナジラミという微小な吸汁昆虫が多数付着しており,こうした昆虫による葉の変質箇所を認識している可能性を考えている。前肢で「食草か否か」を,産卵管で「食草の品質」をそれぞれ認識するというような分業が存在するのかもしれない。
前肢でミカン葉成分を受容さえすれば産卵管が苦味や他の植物に触れても産卵はなされることから,産卵管の味覚感覚子が受容する化学物質やその応答の神経生理学的パターンは前肢のものとは大きく異なると予想される。長い機械感覚子に埋もれ,数自体も少ないことから産卵管の味覚感覚子の電気生理応答を記録するのは困難と予想されるが,基礎的データとして重要なものであるため,記録取得を試みる。
2. 幼虫における発現解析
産卵は(メス)成虫に特異的な行動であることから,直感的には産卵管に高発現するOBP遺伝子は幼虫では発現しないと予想される。しかし,「食草の品質」を捉えるのに寄与する場合,幼虫でも発現していても不思議ではない。

Report

(2 results)
  • 2023 Research-status Report
  • 2022 Research-status Report
  • Research Products

    (3 results)

All 2024 2023

All Presentation (3 results) (of which Invited: 1 results)

  • [Presentation] アゲハチョウの産卵管に高発現するOdorant binding protein(OBP)の解析2024

    • Author(s)
      廣嵜由利恵,宇賀神篤,尾崎克久,二河成男
    • Organizer
      日本昆虫学会第84 回大会・第68回日本応用動物昆虫学会大会合同大会
    • Related Report
      2023 Research-status Report
  • [Presentation] アゲハチョウの産卵管における化学物質受容の分子機構に関する解析2023

    • Author(s)
      廣嵜由利恵,宇賀神篤,尾崎克久,二河成男
    • Organizer
      昆虫DNA研究会第19回研究集会
    • Related Report
      2023 Research-status Report
  • [Presentation] Figure 1のためのデータ解析:チョウの味覚関連遺伝子の機能解析のために2023

    • Author(s)
      宇賀神 篤
    • Organizer
      第67回日本応用動物昆虫学会大会
    • Related Report
      2022 Research-status Report
    • Invited

URL: 

Published: 2022-04-19   Modified: 2024-12-25  

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