ジオパークとの連携によるニッコウキスゲ・ゼンテイカ類の系統関係・多様性の解明
Project/Area Number |
22K06367
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 45030:Biodiversity and systematics-related
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
笹沼 恒男 山形大学, 農学部, 准教授 (70347350)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2024: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
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Keywords | ゼンテイカの系統解析 / 南北の遺伝的分化の解明 / 形態形質の分化の解明 / ニッコウキスゲ(ゼンテイカ) / 系統解析 / 遺伝的多様性 / ジオパーク / トビシマカンゾウ |
Outline of Research at the Start |
中部地方以北に分布する山岳性植物であるニッコウキスゲを代表とするゼンテイカ類を対象にジオパークとの連携のもと各自生地からサンプルを入手し、DNA解析と形態形質調査を行い、分類、地域・集団間の系統関係、集団内の多様性を明らかにする。DNA解析では全ゲノムレベルの配列解析と新たに開発するものを含むDNAマーカーを用いたジェノタイピングを行い系統関係・多様性を明らかにし、形態形質調査では自生地および圃場・鉢植えの栽培条件下で花数、花茎長、花柄長等の形態形質調査を行い分類群間、地域間の形態形質的差異の有無・程度を明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
令和4年度は、これまでサンプルがなかった北海道の最北部の利尻島・礼文島・サロベツ湿原と、中部地方の長野県霧ヶ峰高原、北東北山岳地帯の八幡平、南北の境界線の可能性がある大朝日岳でサンプリングと現地での形質調査を行った。その他、北海道東部の北見市ワッカ原生花園、つがる市のベンセ湿原、新潟県の二王子岳で新たにサンプリングを行った。DNA解析では、新たに採集したサンプルを含め271個体の葉緑体遺伝子間領域2領域のシーケンシングに基づきジェノタイピングを行った結果、合計で23のハプロタイプを同定し、ゼンテイカ類はこれまで言われていた北海道と本州の間ではなく、山形県内陸の南東北を境としてそれより北の北方系統と南の中部系統に大きく分化していること、トビシマカンゾウは北方系統から分化した変種であること、を明らかにした。核DNAの解析では、昨年度までに採集したサンプル184個体を対象にGRAS-Di解析を行い、葉緑体DNAとは対照的に南北の大きな二分化は見られず、地域集団ごとに分化していることが示唆された。核DNAでもトビシマカンゾウは本州のゼンテイカ類とは遺伝的に分化した1グループであること、エゾゼンテイカと本州のゼンテイカ類に一定の遺伝的分化があるが、北東北では両者の混合型が見られるなど明確な遺伝的分化はしていないことが確認された。形態形質調査では、これまで分類の基準であるとされてきた花柄長に、葉緑体DNAで見られた分化と同様、南東北を境とした分化が見られること、一方でこれまでエゾゼンテイカと本州のゼンテイカの分類基準とされてきた花被片の厚みについては地域間の差がないこと、が明らかになった。葉緑体DNAについては、全葉緑体のシーケンシングも試み、全領域を12領域に分割しPCR増幅に成功し、トビシマカンゾウ、日光、鳥海山のニッコウキスゲなど7系統で約10kbのシーケンシングを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
サンプリングと自生地調査については、これまで未知であった北海道北部と東部、中部地方の長野県、さらには空白地帯であった北東北の山岳地帯、南北の遺伝的分化の境であると考えられる南東北の大朝日岳、二王子岳でサンプリングを行い、南北の遺伝的分化と、エゾゼンテイカが本州のゼンテイカと明確な遺伝的がない、という本研究の解明すべき課題の一つを明らかにすることができた。また、大朝日岳では集団内に、南北両方の葉緑体ハプロタイプが見つかったことから、境界線が山形県内にあることも明確にすることができた。形態形質調査についても、花柄長が葉緑体DNAの分化と、集団レベルの特徴としては一致しているが、個体レベルでは区別が付かない、という分類上の大きな課題を解明することができた。全葉緑体の解析については、条件の設定のみに終わったが、分割増幅とシーケンシングに成功したことから、来年度は予算の範囲内で数系統の全葉緑体配列が得られると考えられる。GRAS-Di解析については本年度採集した分については行わなかったが、これは来年度採集するものと合わせて、系統を選抜して解析しないと予算的に難しいためで、来年度採集するサンプルと合わせて解析したいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、関東・中部地方のサンプルをさらに増やすとともに、サンプル数が少ない北海道・東北太平洋側の海岸性ゼンテイカを採集し、より広範なゼンテイカ類の遺伝的分化を明らかにする。特に関東・中部のサンプルについては、中部系統としている日光と霧ヶ峰のサンプルの間に一定の遺伝的分化が見られることから、他の関東・中部のサンプルを加えることで、関東・中部のゼンテイカを一つのグループとして見なしてよいのか、それとも関東と中部を分けるべきなのかを明らかにすることを目指す。これらの地域から新規に採集するサンプルと令和4年度に採集したサンプルを合わせて、系統を選抜し、GRAS-Di解析を行う。全葉緑体配列の解読については、予算の都合上、当初予定していた7系統程度のシーケンシングを科研費のみで行うのは難しいことから、他の予算の獲得を目指すとともに、トビシマカンゾウとニッコウキスゲの最低1系統ずつの全葉緑体配列の決定を行う。これらに加え、これまでに採集し圃場・鉢に移植した株について、形質調査を行い、自生地で見られた集団間の形質の特徴の違いが、同一の生育環境でも見られる遺伝的なものかを明らかにすることを目指す。
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Report
(1 results)
Research Products
(2 results)