Ecological advantages of reproductive system and sex determination system in invasive ants
Project/Area Number |
22K06398
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 45040:Ecology and environment-related
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
宮川 美里 (岡本) 宇都宮大学, バイオサイエンス教育研究センター, 学振特別研究員 (00648082)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,030,000 (Direct Cost: ¥3,100,000、Indirect Cost: ¥930,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
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Keywords | 近親交配 / 性決定機構 / 単為生殖 / 繁殖様式 / 膜翅目昆虫 / アリ |
Outline of Research at the Start |
アリ類で進化した性決定機構では、近親交配で生じる子の半分が不妊雄となり、この影響は特に遺伝的多様性の低い侵入初期の個体群で顕著になる。しかしアリ類の中には、一回の侵入で新天地に定着し、集団を維持している種が存在する。これらの種では特殊な繁殖様式や、性決定遺伝子座の複数化がみられ、近親交配の回避や不妊雄生産に伴うコストの抑制効果が示唆されている。本研究ではウメマツアリを利用して上記の形質の適応的意義を評価することで、アリ類が近親交配に弱く侵入に不向きな形質を持ちながらも世界中に分布域を拡大し繁栄している疑問に対し、近親交配の回避やそのコストを抑制する形質の進化という新たな可能性を提示する。
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Outline of Annual Research Achievements |
アリやハチで進化した相補的性決定遺伝子座(CSD)を伴う単数倍数性性決定機構は、近親交配で生じる子の50%が不妊雄となる弱点がある。近親交配の影響は特に遺伝的多様性の低い侵入初期の個体群で顕著になる。しかしアリ類の中には、一回の侵入で新天地に定着し、集団を維持している種が存在する。これらの種では特殊な繁殖様式や、性決定遺伝子座の複数化がみられ、近親交配の回避や不妊雄生産に伴うコストの抑制効果が示唆されている。本研究はウメマツアリを利用して上記の形質の適応的意義の評価を目的としている。2022年度は本種の特殊な繁殖様式における近親交配の回避効果を検証する下地をつくるべく、本種のCSDにみられる多型の検出に注力した。ミツバチではCSDの実態を担う遺伝子csdが存在し、Hyper Variable Region (HVR) とよばれるアミノ酸残基の繰り返し数に多型のある領域がヘテロ接合性の認識部位であると示唆されている。さらにCSDのホモ化が生じないよう、交尾集団内の多型は高頻度で維持される傾向がる。申請者らはドメインやモチーフ構造から、ウメマツアリではtra-likeがミツバチのcsdと同様に働くと予想した。まず、HVRに相当する領域を特定した。さらに、CSDのアリルタイプがホモ型の個体からは一種類、ヘテロ型の個体からは二種類のtra-like多型が検出され、tra-likeが本種のCSDの実態を担うことが示唆された。上記の結果は第67回応用動物昆虫学会(摂南大学)で発表した。特殊な繁殖様式に近親交配を抑制する効果があるならば、ウメマツアリにおけるCSDのアリル多型(tra-like多型)はミツバチで検出される頻度よりも低いことが予想される。2022年度の研究を通して、tra-like多型の頻度を用いて上記の予想を検証する準備が整った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
・ウメマツアリで進化した雌雄の単為生殖を伴う繁殖様式の適応的意義の評価 2022年度は本種の交尾集団内で性決定遺伝子座CSDの多型がどれくらい維持されているのかの検証をするため、まずCSDの実体として働く遺伝子と、その遺伝子においてヘテロ接合性の認識領域の特定を行った。特殊な繁殖様式が確認された個体群から採集した女王・雄・働きアリおよび近親交配で二つのCSDにて様々なアリルタイプを持つ個体から候補遺伝子のクローニングを行った。その結果、tra-likeが一方のCSDの実体であり、最終エキソンにみつかった雌雄間でアミノ酸残基のリピート数が異なる領域がヘテロ接合性の認識部位である可能性が示唆された。 ・ウメマツアリで進化した二つのCSDを伴う繁殖様式の適応的意義の評価 本種は連鎖解析で二つの性決定遺伝子座領域CSDが特定され近親交配で生じる子の25%が二倍体不妊雄に、75%が雌になることが示されている。このような遺伝的背景を利用し、[ⅰ]二つの遺伝子座をヘテロ型にもつ新女王と雄の戻し交配と、[ⅱ]どちらか一方の遺伝子座をホモ型にもつ新女王と雄の戻し交配を誘導し、同種でありながら性決定遺伝子座の数が異なる状況で近親交配が生じた場合の影響を比較することが可能である。本年度は上記の比較を行うための準備段階として、[ⅰ][ⅱ]の条件を満たす個体を用いた交配の誘導を試みた。しかし、 [ⅱ]では2回にわたる戻し交配を行うため、近親交配による近交弱勢の影響が強く生じ、女王の産卵数が非常に少なく、生産された卵の発生がほとんど進まないことが明らかになった。したがって、純粋に性決定遺伝位座の数だけの違いによる適応度への影響を比較することはできないと判断し、本研究では特殊な繁殖様式における適応的意義のみを評価するのが妥当と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
遺伝的に異なる二つ以上の個体群から10個前後のコロニーを採集し、各コロニーの女王・雄・ワーカーからtra-likeを単離する。tra-like においてヘテロ接合生の認識部位であることが予想される特定のアミノ酸残基のリピート数の違いから、個体群ごとにtra-like多型がどれくらい蓄積されているのかを明らかにする。通常の繁殖様式を持つミツバチで検出されたCSD多型の蓄積と特殊な繁殖様式をもつウメマツアリにおいて検出されたCSD多型の蓄積を比較し、本種の特殊な繁殖様式がCSD多型をどれくらい低く抑える効果があるのかについて議論する。上記の結果は論文にまとめ、国際ジャーナルに発表する予定である。さらに、tra-likeの多型データが揃った個体群の同一コロニーを利用し、遺伝的に異なる新女王と雄を交配させた場合と、兄妹間で交配させた場合における女王個体・コロニーレベルの適応度を比較し、本種が雌雄の遺伝子交流を伴わない特殊な繁殖様式を獲得したことで、どれだけ適応度を高めたのかを定量的に評価する。それぞれの交配で得られた女王はワーカーと共に維持し、実験期間を通して得られた次世代の繁殖虫数を調べ、繁殖を通して得た適応度を比較する。また、コロニーレベルの適応度(ワーカーが女王の繁殖を通して間接的に得た適応度)を比較する予定である。
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Report
(1 results)
Research Products
(1 results)