グレリン様作用薬による神経機能促進と小脳失調改善への寄与
Project/Area Number |
22K06473
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 46030:Function of nervous system-related
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
廣野 守俊 和歌山県立医科大学, 医学部, 准教授 (30318836)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,290,000 (Direct Cost: ¥3,300,000、Indirect Cost: ¥990,000)
Fiscal Year 2024: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2022: ¥2,470,000 (Direct Cost: ¥1,900,000、Indirect Cost: ¥570,000)
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Keywords | ペプチドホルモン / 小脳 / プルキンエ細胞 / 抑制性介在ニューロン / 自発発火 / 運動学習 / 代謝調節型グルタミン酸受容体 / 長期抑圧現象 / クロストーク / 運動失調 |
Outline of Research at the Start |
運動学習を担う小脳プルキンエ細胞(PC)は代謝調節型グルタミン酸受容体1型(mGluR1)を豊富に発現する。この受容体活性化は、小脳長期抑圧現象(LTD)や運動学習に寄与する。我々の先行研究から、消化管ホルモンのグレリンがPCの発火を促進するだけでなく、mGluR1応答を増強する可能性が示唆された。そこで、mGluR1とグレリン受容体のシグナル伝達のクロストークに着目し、その発生機構と小脳LTD形成への促進効果を解明する。また脊髄小脳失調症1型マウスに低分子グレリン様作用薬を経鼻投与して、運動失調改善への効果を検討する。本研究結果は小脳失調の新たな緩和治療薬の開発につながるものと期待される。
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Outline of Annual Research Achievements |
小脳は協調運動や運動学習に重要な役割を担うものの、小脳運動学習と食事リズムとの関係はほとんど分かっていない。グレリンは空腹時に分泌される唯一の摂食促進ホルモンであり、成長ホルモン分泌促進因子受容体1a型(GHS-R1a)を活性化する。先行研究では、小脳皮質のプルキンエ細胞(PC)はGHS-R1aを豊富に発現し、その受容体の活性化は発火頻度を上昇することが報告されている。しかし、グレリンがPCのシナプス入力に対して、どのような影響を与えるかは不明であった。 本研究ではまず、PCへの平行線維興奮性シナプス入力と抑制性シナプス入力に対するグレリンの作用を明らかにすることを試みた。3~4週齢C57BL/6マウスの急性小脳切片を作製し、PCの自発発火やシナプス電流をパッチクランプ法で記録しながらグレリンを灌流投与した。その結果、PCの発火頻度はグレリンにより増加した。シナプス伝達を阻害するとこの発火頻度の増加率が上昇したことから、グレリンがPCのシナプス入力に影響する可能性が示唆された。そこでPCから平行線維刺激による興奮性シナプス後電流を記録しながらグレリンを投与したところ、電流振幅は変化しなかった。一方、自発性の抑制性シナプス後電流(IPSC)の頻度上昇が観察された。しかし、誘発性IPSCや微小IPSCに対するグレリンの作用は見られなかったことから、プレシナプス側の分子層の抑制性介在ニューロン(MLI)の発火頻度が上昇する可能性が示唆された。そこで、セルアタッチド法でMLIの自発発火を記録しながらグレリンを投与すると、発火頻度上昇が観察された。したがってグレリンは、PCの発火を直接的に促進するだけでなく、抑制性入力を増強することで、より精緻に制御することが分かった。グレリンは、小脳のかかわる協調運動や運動学習の調節に寄与するものと推測される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
摂食促進ホルモンであるグレリンが如何に小脳皮質に作用して、小脳運動学習を調整するかほとんど分かっていない。先行研究では、グレリンがマウス小脳プルキンエ細胞(PC)を直接興奮することが明らかになっている。一方、PCへのシナプス入力に対するグレリンの作用はこれまで不明であった。そこで、PCにホールセル電位固定法を適用して、興奮性シナプス後電流(EPSC)や抑制性シナプス後電流(IPSC)を記録し、グレリン投与による影響を検証した。その結果、平行線維のEPSCは変化しないものの、IPSCは促進されることが明らかになった。さらにこの促進は、分子層抑制性介在ニューロン(MLI)の発火上昇に依存することが分かった。したがって、グレリンはPCの興奮を直接増強するだけでなく、抑制性シナプス入力を促進して、PCの発火を調節する可能性が示唆された。現在では、一日絶食させたマウスにおいて、PCやMLIへのグレリンの興奮作用が変化するか否か検証を行っている。また、グレリンとその受容体GHS-R1aの発現を免疫組織化学染色法で検証し、小葉間での分布の違いと電気生理学的応答の相関関係を調べている。 また、PCのmGluR1の活性化は、小脳の長期抑圧(LTD)形成に寄与することが知られている。我々は、グレリンがGHS-R1aの活性化を介してmGluR1応答を増強する可能性を見いだした。GPCRのクロストークの解明は、新たなシグナル伝達経路の発見につながり、細胞機能の多様性と薬物の作用機序の解明に非常に重要である。そこで今後の研究では、mGluR1とGHS-R1aのクロストークの可能性と、このクロストークによる小脳LTD形成の促進や運動学習への効果を検証する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の生理学的実験では、3~4週齢マウスから急性小脳切片を作製し、小脳皮質のPCにホールセル電位固定法を適用して電流応答を記録する。また小脳切片をCa2+指示薬で処理し、グレリンのCa2+応答を記録する予定である。 PCにmGluR1のアゴニスト1S,3R-ACPDをiontophoresisで投与して興奮性内向き電流を記録し、グレリンの電流振幅への効果を明らかにする。また、細胞内Ca2+濃度を測定してGHS-R1a活性化の作用を観察する。GHS-R1aのアンタゴニストでその効果が消失するか検証する。クロストークにおいて、GHS-R1aの下流シグナルの各ステップを阻害する薬物を投与し、その作用を検証する。次に、平行線維を頻回刺激して、mGluR1の介するゆっくりとした興奮性シナプス後電流を記録し、グレリンの作用を調べる。GHS-R1aとmGluR1の免疫二重染色を行い、共局在の可能性を検討する。また、PCの自発発火に対するデスアシルグレリンの作用を明らかにする。mGluR1内向き電流と細胞内Ca2+濃度に対するデスアシルグレリンの作用を調べる。 小脳LTD形成に対するグレリン様作用薬の作用を明らかにするため、平行線維刺激によりEPSCを記録し、conjunctive刺激を適用して小脳LTDを誘導する。グレリン存在下でLTD形成の確率が上昇するか明らかにする。さらに行動実験と関連づけるため、GHRP-6、ヘキサレリン、さらにはアナモレリンのLTD形成への促進効果を調べる。 グレリン様作用薬の協調運動に対する効果を検証する。GHRP-6あるいはヘキサレリンの経鼻投与有り無しのマウスでローターロッドテストを行う。またアナモレリンを混餌投与したマウスに対しても同様な行動解析を行う。経鼻投与が有効でない場合は、EVA樹脂を用いた小脳慢性投与法を用いる。
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Report
(1 results)
Research Products
(5 results)