Project/Area Number |
22K06535
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 47010:Pharmaceutical chemistry and drug development sciences-related
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
廣瀬 友靖 北里大学, 感染制御科学府, 教授 (00370156)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
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Keywords | Avermectin / Ivermectin / 誘導体 / 全合成 / ライブラリー構築 / イベルメクチン / ライブラリー指向 / 収束的 / 新作用 |
Outline of Research at the Start |
イベルメクチン(IVM)は、抗感染症薬や抗寄生虫薬として全世界で利用されている。一方でIVMは抗寄生虫の他に抗ウイルス活性や、抗菌、抗腫瘍活性などの新作用が見出されている。本研究はAVM、IVMの有する新作用に対して利活用出来る独創的なメクチン誘導体ライブラリー構築を目標としている。そのために、本研究は誘導体指向型の効率的なIVM全合成法を確立し、従来の半合成的手法では調製不可能であった骨格や官能基導入、立体多様的な誘導体合成からメクチン系化合物ライブラリー化への基盤を確立するを目的とする。そして今後の非天然IVMライブラリー構築研究への展開における礎となる。
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Outline of Annual Research Achievements |
Avermectin(AVM)は、当研究所で単離された抗寄生虫・殺虫活性を示すマクロライド系天然物である1)。これまでにivermectin (IVM) を含む10種以上の関連誘導体が医薬や動物薬、農薬として全世界で利用されてきた。近年、AVM類が新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)等に対する抗ウイルス活性や、抗菌、抗腫瘍活性を示すことが明らかとなった。また、各新作用の構造活性相関は既知の抗寄生虫・殺虫活性とは異なることも判明しているが、既存の半合成的手法では変換部位が限られるためその解明には至っていない。そこでAVM類の網羅的誘導体合成法を確立し、化合物ライブラリーを構築することで迅速な構造活性相関研究が可能になると考えた。まず本研究の基盤としてIVM B1aの効率的合成法の確立を目指し次の戦略を立案した。即ちアグリコンを3つのフラグメント(ビニルヨージド、スルホン、ベンゾフラン)に分割し、ビスエポキシドを介した2つの鍵反応で連結する。本経路は変換した各フラグメントの組み合わせにより骨格、官能基、立体多様的な誘導体合成が可能である。なお、ビニルヨージド、スルホンについては前年度までに効率的な合成法の確立に成功している。 そこで本年度は、まず形式的なIVMアグリコンの全合成を目指して、天然物の分解反応によりベンゾフラン部分を調製し、3つの各ユニットの連結とマクロラクトン化によりアグリコン部分の構築を検討した。ビニルヨージド、スルホンから側鎖ジエン構造を有するスピロアセタール部分を構築し、天然物の分解により調製したベンゾフラン部分と無水コハク酸をテザーにしてエステル化により連結させ、RCMによりマクロ環化を行なった。最後にテザーを除去した後、椎名マクロラクトン化と、C5、C13位水酸基の脱保護によりIVM B1aのアグリコンの合成を達成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、形式的なIVMの全合成を目指して、そのアグリコン部分の合成法の確立を検討した。 まず、全合成の鍵工程であるビスエポキスユニット、ビニルヨージドユニット、スルフォンユニットの3成分連結によるIVM上部ユニットの構築を試みた。IVM上部ユニットはスピロアセタール環を含む、IVMの特徴的な骨格である。1つ目の鍵反応はスルフォンユニットの塩基性条件下における脱プロトン化とそれに続く、エポキシへの求核反応だが、スルフォンアニオンが不安定であったため、スルフォンユニットとビスエポキスユニットの混合溶液に対して求核性の無い塩基であるLDAを滴加し、脱プロトン化直後に付加を進行させることで基質の分解を抑制し、目的の反応を進行させることができた。また、生成するジヒドロピランは不安定であったが、第二級水酸基を系中で保護することで単離可能な目的生成物を1potで取得した。2つ目の鍵反応ではビニルヨージドユニットより調製したビニルアニオンから先に調製したジヒドロピランのエポキシドへの付加と、生じた水酸基からエノール部位への分子内環化である。本反応においてはエポキシドが開環した中間体が後処理時に昇温すると分解したため、低温下AcOHを系中へ添加することでスピロアセタール化を促進させることでIVM上部ユニットへと導くことに成功した。 次にIVM B1aからIVM下部のベンゾフランユニットを調製し、上部ユニットの連結、マクロ環化によるIVMアグリコンの構築を試みた。種々検討の結果、上部ユニットとベンゾフラン部分を無水コハク酸をテザーにしてエステル化により連結させ、RCMによりマクロ環化を行い、最後にコハク酸部分を除去した後、椎名マクロラクトン化と、水酸基の脱保護によりIVM B1aアグリコンの全合成を達成した。
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Strategy for Future Research Activity |
IVMアグリコンの合成ルート確立に成功しているが、そのベンゾフラン部分は天然物の分解により調製しており、全合成的なベンゾフラン部分の調製法の確立には至っていない。そこでベンソフラン部分のカルボン酸とC7a位の水酸基を縮合させたベンゾフランβ-ラクトンを本ユニットの標的として、その効率的合成法確立に向けた逆合成戦略を立案している。即ち、ベンゾフランβ-ラクトンはRomoらの報告(J. Org. Chem. 2018. 83, 632)を参考に、ケトカルボン酸からAldol-β-ラクトン化によるベンゾフラン環の構築により得られるとし、ケトカルボン酸はエノンに対する還元的アルドール縮合で導くこととした。エノンは共に既知化合物であるフランから共役アルデヒドのへの不斉触媒を用いたアンチ選択的向山アルドール反応で導けると考えた。 既存の全合成例を含め最も挑戦的であるのが不安定な多置換テトラヒドロベンゾフラン環の構築である。本戦略ではベンゾフラン部分にβ-ラクトン構造を持たせることで、問題となるC3-4位の二重結合の異性化を4員環の歪みにより抑制し、さらにエピメリ化が危惧されるC2位の立体化学も維持できると考えている。また、本合成法は連続反応を駆使することで既存の全合成例から大幅に工程数を削減できるだけでなく、各フラグメントの立体化学や置換基の変換とそれらの組み合わせにより網羅的に化合物ライブラリーの構築が可能であると期待している。 令和6年度は上記合成法を確立し、IVMアグリコンの全合成ルートを完結に向けて研究を進める。
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