βグルカンの構造多様性を受容するDectin-1受容体の分子メカニズムの解明
Project/Area Number |
22K06562
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 47020:Pharmaceutical analytical chemistry and physicochemistry-related
|
Research Institution | Tohoku Medical and Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
真鍋 法義 東北医科薬科大学, 薬学部, 講師 (10392383)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
|
Budget Amount *help |
¥3,900,000 (Direct Cost: ¥3,000,000、Indirect Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2025: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2023: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
|
Keywords | Dectin-1 / βグルカン / レクチン受容体 / βグルカン認識 / 多糖認識機構 |
Outline of Research at the Start |
外因性の病原体を非自己と認識して発動する免疫システムの多くは、哺乳類のレクチン受容体が、病原体の表面に存在する種特異的なβグルカンなどの多糖(糖鎖)を認識することで開始される。糖鎖の構造は多種多様であるにも関わらず、限られた数のレクチン受容体が各糖鎖リガンドへの親和性を獲得している機構は学術的に興味深く、原子レベルで解明すべき事柄である。本研究では、このレクチン受容体の巧妙な受容メカニズムを、構造生物学的に明らかにすることを目的とする。それにより、標的糖鎖の分岐構造・立体構造や受容体の協同性の視点から外来糖鎖認識メカニズムを解明し、免疫システムにおける多糖認識機構の礎を築くことを目指す。
|
Outline of Annual Research Achievements |
Dectin-1レクチンドメインの安定大量精製に関しては、調製プロトコールの最適化およびタグの切除を行い、各種実験に利用することが可能となった。 質量分析では、Dectin-1および水溶性βグルカンの単体と、これらの複合体の分子量を計測した。それにより、化学量論比およびタンパク質に結合したβグルカンの分子種の同定を目指した。Dectin-1の単体の測定では、理論値と測定値がほぼ同一の値となった。また、水溶性βグルカン単体の測定では、様々な重合度の水溶性βグルカンの存在が確認できた。Dectin-1と水溶性βグルカンの複合体の測定では、主に存在するのが水溶性βグルカンとDectin-1それぞれの単量体ではあったが、Dectin-1の4量体と水溶性βグルカンとの複合体ピークを確認することができた。 また、走査型プローブ顕微鏡での観察では、Dectin-1とβグルカンとの複合体形成において、多量体化の時間変化を視覚的に観察することが可能となった。これらの結果からは、混合初期は1個のDectin-1が結合・解離を繰り返していたが、時間の経過とともに複数個のDectin-1が結合し、βグルカンからあまり解離しない結果が得られた。このことから、複数個のDectin-1が結合することで複合体が安定化されうることが判明した。 さらに、様々な不溶性βグルカンを用いて、Dectin-1のβグルカン結合の構造特異性を明らかにするため、精密ろ過膜を用いた結合実験を行った。その結果、Dectin-1と不溶性βグルカンの結合親和性は、βグルカンの分岐頻度のみならずその集合様式によっても影響を受けると考察した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
生化学的手法では、令和4年度の計画であるDectin-1の安定調製を可能とすることができた。ここでは、mouse Dectin-1のみならずhuman Dectin-1の安定調製も可能となった。 mouse Dectin-1とβグルカンとの相互作用様式は、水溶性βグルカンを用いて物理化学的実験を行った。質量分析・走査型プローブ顕微鏡からは、Dectin-1のβグルカンの認識における協調性は、複数個のDectin-1が結合することで複合体が安定化されうることが確認できた。また、その量論比については、現在の実験結果に矛盾は存在していない。 様々な不溶性βグルカンを用いて行った結合実験によるβグルカンの化学構造と結合親和性の解析からは、βグルカンの化学構造のみならず、その溶解度や集合様式にも影響を受ける結果を得ることができた。ここでは、不溶性βグルカンとDectin-1との結合実験を新規の簡便な手法を開発することで、短時間で結果を得ることに成功した。 STD-NMRに関しては、Dectin-1の安定的な大量調製が可能となったことから、測定を行うために13Cや15Nで標識したDectin-1を十分量調製できるようになった。そのため、次年度に行うこととした。 計算化学的手法については、Dectin-1自体では行っていないものの、研究室で使用法の改良を進めており、物理化学的実験の進行とともに計算を行う予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
生化学的手法において、mouse Dectin-1のみならずhuman Dectin-1においても調整が可能となったため、mouseとhumanでβグルカンへの結合に種差による違いがあるか、確認を行う。また、十分な量が調製できることから、STD-NMR法により相互作用が行われる部位の詳細を明らかとする。 質量分析においては、混合時におけるDectin-1の量を増加させることで複合体形成割合を上昇させ、Dectin-1が多量体を形成する中で、4量体形成が安定かを確認する。また、水溶性βグルカンの中でDectin-1と複合体を形成する重合度に、特徴があるかを確認する予定である。質量分析において、ピークの同定が困難な場合には、ゲルろ過カラムを用いたHPLCを行う。 走査型プローブ顕微鏡での観察では、基盤の反対側からも結合できるのであれば、Dectin-1は4~6個が15 nmほどの長さのβグルカンに結合が可能である。この結果は、より長鎖のβグルカンを利用しても確認することができたが、その他のタイプのβグルカンにおいてもDectin-1の多量体形成を確認する。そして、質量分析と走査型プローブ顕微鏡での観察の結果が矛盾ないことを確認する。さらに、各量論比の複合体の寿命の計測から結合・解離速度定数を算出し、リガンド結合の協調性の議論を行う。 これらの結果を、モデリングやドッキングシミュレーションの結果と照らし合わせて、Dectin-1とβグルカンとの相互作用様式を明らかとする。
|
Report
(1 results)
Research Products
(14 results)