Project/Area Number |
22K06654
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 47040:Pharmacology-related
|
Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
小菅 康弘 日本大学, 薬学部, 教授 (70383726)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三枝 禎 日本大学, 松戸歯学部, 教授 (50277456)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
|
Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2023: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
|
Keywords | 海馬 / 尿毒素 / 血清マグネシウム値 / 腎臓 / p-クレジル硫酸 / p-クレゾール / CKD / 小胞体ストレス / 尿毒症 / 慢性腎臓病 / 尿毒症物質 |
Outline of Research at the Start |
CKDは、海馬の機能低下を誘発・増悪する要因のひとつであることが明らかにされているが、その詳細なメカニズムは不明なままである。本研究は、研究代表者がCKDモデルマウスで見出した小胞体ストレスの亢進に着目し、海馬の機能不全の病態修飾因子を同定するとともに、治療薬開発の可能性について検証する。特に、海馬の機能不全に関与する腎臓から遊離する因子を同定するとともに、発光イメージング法による機能解析や脳微小透析法による神経伝達物質の動態解析から多角的な病態メカニズムの解明を行う。さらに、申請者が保有する小胞体ストレス抑制薬を活用した治療薬の創製を個体レベルで試みる。
|
Outline of Annual Research Achievements |
認知症の危険因子となることが指摘されている慢性腎臓病 (chronic kidney disease; CKD) において、脳内や血中で増加する尿毒症物質p-クレゾールおよびp-クレジル硫酸が示す細胞毒性に着目して、マウス海馬由来神経細胞株化細胞であるHT22細胞を用いて、成熟ニンニクエキス由来成分S-allyl-L-cysteine (SAC)の誘導体(18種)を中心に、p-クレゾール誘発細胞死に及ぼす影響をMTT法にて評価した。その結果、検討した濃度では、顕著な細胞保護効果を示すものは見出せなかった。 次に、CKDモデルマウスのひとつである5/6腎摘マウス(Nxマウス)の腎機能低下を抑制する化合物やエキスを研究代表者らが保有する天然物由来の薬物ライブラリーの中から検証した。その結果、研究代表者らか近年、ミクログリア由来の株化細胞であるBV2細胞や筋萎縮性側索硬化症モデルマウスで抗炎症効果を報告している沖縄産由来生薬エキスに、腎機能低下を改善する効果があることが明らかとなった。また、短鎖脂肪酸エステルにも、部分的ではあるものの、腎機能障害を抑制する効果が認められた。 さらに、CKD患者の重症化にも関与することが報告されている血清マグネシウム値の低下についてNxマウスでの変化を検証したところ、ヒトで報告されている事例は異なり、Nxマウスの血清マグネシウム値は、コントロールマウスと同程度であった。そこで、塩化マグネシウム投与による負荷試験を行ったが、マグネシウムの投与は腎機能障害を増悪させただけでなく、海馬でのストレスレベルを増加させた。以上より,代表的なCKDモデルマウスのひとつであるNxマウスでは血清マグネシウム値の低下が生じないため,マグネシウムの持続的な摂取は腎機能障害の悪化を誘発し,海馬内のストレスレベルの増加を誘発することが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
HT22細胞を用いて、昨年度腎臓の繊維化抑制作用が明らかとなったSACおよびその誘導体、Indirubin誘導体(2種)、フラボノイド誘導体(2種)、Salk研究所との共同開発化合物(2種)などの全26 種類の化合物が、血液中及び脳内に蓄積するp-クレゾールが誘発する細胞毒性に及ぼす影響を検討した。その結果、SACを含む検討した26 種類の化合物には、p-クレゾールが誘発する細胞死を抑制しなかった。また、研究代表者らが保有する天然物由来のエキスや薬物が、CKDモデルマウスのひとつである5/6腎摘マウス(Nxマウス)の腎不全に及ぼす影響を検証したところ、沖縄産生薬エキスおよび短鎖脂肪酸エステルの一部にCKDモデルマウスの腎機能障害(血清クレアチニンや尿素窒素の上昇)を抑制する効果が認められた。しかし、これらの物質には、SACのような糸球体面積の増加抑制効果は認められなかった。 また、本年度は、CKD患者で極めて高頻度に見られ、重症化にも関与することが報告されている血清マグネシウム値の低下が脳の高次機能に及ぼす影響を検証した。その結果、Nxマウスでは、血清マグネシウム値の低下が認められないことが明らかとなった。さらに、塩化マグネシウム投与が及ぼす影響を検討したところ、マグネシウムの投与は腎機能障害を増悪させた。加えて、酸化ストレスレベルを解析するために酸化ストレスのマーカーである4-hydroxynonenal (HNE)付加タンパク質の発現レベルをWestern Blot法で検証したが、Nxマウスではマグネシウムの投与によりHNE付加タンパク質の発現レベル有意に増加した。 以上のように、新たに腎保護作用を有する化合物を見出すことに成功したため、「おおむね順調に進展している」と判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
血液中に蓄積したp-クレジル硫酸やp-クレゾールは、各種の細胞に悪影響を及ぼすことが明らかにされている。次年度は、培養マウス海馬切片系を用いて、p-クレジル硫酸やp-クレゾールが、海馬の神経回路形成に及ぼす影響を、電気生理学手法や組織化学的手法を用いて検証する予定である。特に、p-クレジル硫酸やp-クレゾールが、ニューロン以外のグリア細胞あるいは血管内皮細胞などに及ぼす影響については詳細に検討数する。また、着目する尿毒症物質であるp-クレジル硫酸やp-クレゾールの脳室内投与や経鼻投与がマウスの記憶・学習及ぼす影響を、新奇物質探索試験、明暗試験、Y時迷路、モーリス水迷路試験、ローターロッドによる協調運動試験等の行動学的解析から検証するとともに、電気生理学的なシナプス可塑性の評価と免疫組織化学染色を用いたシナプス形成や細胞内の酸化ストレスあるいは小胞体ストレスへの影響を解析する。 一般的に、p-クレジル硫酸は、腸内細菌によって産生されたp-クレゾールが体内で代謝されることで生成されることが知られている。しかし、肺などの一部の組織では、既存の腸内細菌に依存した経路とは異なる機序でp-クレジル硫酸の増加が誘発することが示唆されている。そこで、脳内のp-クレゾールまたはp-クレジル硫酸の増加機構についても、脳内での合成酵素の存在を検討するとともに、血液脳関門破綻の影響についても総合的に検証することを計画している。
|