Project/Area Number |
22K06830
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 48020:Physiology-related
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
神鳥 和代 香川大学, 医学部, 助教 (40457338)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤原 祐一郎 香川大学, 医学部, 教授 (20532980)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,290,000 (Direct Cost: ¥3,300,000、Indirect Cost: ¥990,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
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Keywords | 糖センサー / 電気生理学 / 希少糖 / イオンチャネル / トランスポーター |
Outline of Research at the Start |
動物は感覚器の糖受容体で甘味物質を感知して摂取し、体内の糖センサー分子により満腹、空腹を判断して摂食行動を制御している。ヒトはブドウ糖、果糖などに加えてエネルギー源とならない人工甘味料や希少糖も甘いと感じて摂取するが、昆虫はエネルギー源とならない甘味物質は摂取しない。この違いは体内糖センサーシステムの違いが一因と考えられる。本研究では、複数の体内糖センサー分子の糖受容機構を電気生理学的、構造的に解析し、動物の摂食行動制御の解明、糖尿病治療への応用や新規の甘味物質の開発へつなげる。その中で香川大学を中心に研究が進められている希少糖も解析に用い、それらの新たな生理作用の解明や利用にも広げていく。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、動物の体内糖センサーとして機能している複数の分子の糖受容機構を電気生理学的、構造的に解析し、動物の摂食行動制御の解明、糖尿病治療への応用や新規の甘味物質の開発へつなげる。その中で香川大学を中心に研究が進められている複数の希少糖も解析に用い、これらの糖の新たな生理作用の解明や利用にも広げていく。今年度は糖センサー分子の中で以下の2種類についてアフリカツメガエル卵母細胞を用いて電気生理学的解析を行った。 SGLT3; SGLTは一般的に糖とナトリウムが結合してそれぞれを膜輸送するタンパク質である。しかし哺乳類由来SGLT3は糖とナトリウムが結合し、糖は輸送せずナトリウムのみを輸送して電流を生じる。このことから体内では神経系などで糖センサーとして機能し、行動や食欲を制御していると考えられている。SGLT3と糖の結合様式を分子レベルで理解し、その働きを制御できれば、医療や健康分野への応用につながっていく。今年度は、まずヒトSGLT3の8種類のアルドヘキソースによる電流を解析した。その結果D-グルコースにより電流を生じるが他の糖による電流は観察されなかった。 BmGr-9;BmGr-9はカイコ由来のD-フラクトースに応答する4量体型陽イオンチャネルで、D-フラクトースのセンサーと考えられている。その分子基盤の解析は新規分子ツールの開発、環境分野への利用につながる。解析の結果、D-フラクトース添加によりイオン電流が観察され、この電流は他の糖を同時に添加することで阻害された。この阻害効果はL-ソルボースで最も強く、他の六単糖や糖アナログによっても観察された。また糖結合部位、イオンポアを形成するアミノ酸における変異体を作製した。それらの解析からこのチャネルの機能において重要な役割を果たすアミノ酸を複数同定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アフリカツメガエル卵母細胞でそれぞれの膜タンパク質を発現させ、電気生理学的解析を行った。SGLT3発現細胞において、8種類のアルドヘキソースによる電流を解析した結果、100mM D-グルコースにより約0.2μAのイオン電流を生じた。D-ガラクトース、D-マンノース、D-アロース、D-タロース、D-アルトロース、D-イドース、D-グロースによる電流は観察されなかった。 BmGr-9発現細胞において、100mM D-フラクトースにより10μA以上のイオン電流が観察された。BmGr-9のD-フラクトースに対するKd=30mM程度であった。またD-フラクトースによる電流は他の糖を同時に添加することで阻害された。この阻害効果はL-ソルボースで最も強く、D-アルロース、D-グルコースなどの六単糖や糖アナログによっても観察された。この結果はD-フラクトース以外の糖がBmGr-9に結合し、競合阻害を引き起こす可能性を示唆している。また糖結合部位を形成するアミノ酸における変異体の中で、D-フラクトースによるイオン電流が消失するものが複数同定され、これらのアミノ酸がD-フラクトースによるイオン電流の発生に必須であることが明らかになった。さらに糖結合部位近傍のアミノ酸の変異体の中で、野生型では反応しないD-フラクトース以外の糖の添加によりイオン電流が観察されるものが得られた。それに加えて、イオンポアを形成するアミノ酸の変異体の中にも、同様にD-フラクトース以外の糖によるイオン電流が観察されるものがあった。ここまでの結果から、①糖がBmGr-9に結合し、②糖結合部位近傍の構造が変化してイオンポアへ伝わり、③イオンポアが開いて電流を発生する、という流れで糖、糖結合部位、イオンポアの3つが構造的に密接に関係し、イオン電流の発生を制御していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
次のステップとして、SGLT3がD-グルコースにより生じるイオン電流に対する他の糖や阻害剤の影響を解析する。このイオン電流は0.2μA程度と比較的小さく、詳細な知見を得ることが困難な可能性がある。そこで、さらに詳細な解析ができるような測定条件の検討を行う。また、蛍光分子観測法により糖結合部位、イオン透過部位などを形成するアミノ酸の移動を解析し、糖により引き起こされる構造変化を明らかにしていく。以上の解析から、体内糖センサーの反応様式、さらにそれらに作用する糖や糖アナログの作用機序の解明を行い、新規の糖尿病や行動障害をターゲットとした治療薬、甘味料、防虫剤の開発へつなげる。 BmGr-9については、①糖が結合し、②糖結合部位近傍の構造が変化してイオンポアへ伝わり、③イオンポアが開いて電流を発生する、というそれぞれのステップについて解析を行う。①D-フラクトースは自然界で5員環型、6員環型両方で存在するが、そのどちらか、または両方がイオン電流を引き起こすのかを糖アナログなどを用いて解析する。さらに電流を阻害するL-ソルボースなどについてIC50などを比較してそれぞれの阻害特性を解析する。②、③D-フラクトース以外の糖によりイオン電流を発生する糖結合部位近傍、およびイオンポアの変異体について、その特性を解析する。構造変化の解析には蛍光分子観測法を用いる。またBmGr-9と類似する構造を持つ嗅覚受容体であるOrcoファミリーなどの構造と比較し、分子モデリングにより糖の結合からイオン電流発生までの構造変化を明らかにしていく。
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