Project/Area Number |
22K06874
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 48040:Medical biochemistry-related
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
今城 正道 北海道大学, 化学反応創成研究拠点, 特任准教授 (00633934)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
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Keywords | 腸上皮細胞 / 胎児化 / 合成ハイドロゲル / 大腸癌 / 腸上皮幹細胞 |
Outline of Research at the Start |
近年、組織幹細胞の胎児化が組織再生や癌化に関わる新たなメカニズムとして注目されている。本研究では、申請者が独自に開発した腸上皮幹細胞の胎児化誘導法を用いて、幹細胞胎児化の基本原理を明らかにする。さらに、幹細胞胎児化を担う因子の発現や活性が腸上皮腫瘍の形成過程でどのように変化し、それが腫瘍形成にどのように寄与するか解析する。それにより、組織幹細胞の胎児化が腫瘍形成過程において果たす役割を明らかにし、幹細胞胎児化の制御因子を標的とした新たな癌治療法の開発に貢献することを目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
腸上皮は人体で最も細胞の新陳代謝が速い組織であり、幹細胞からの組織更新により絶えず細胞が置き換えられている。この活発な組織更新を反映して腸上皮は癌化しやすく、大腸癌の罹患率は全ての癌のなかでも上位を占めている。近年、腸上皮の高い再生能を支え、大腸癌の発生にも関わるメカニズムとして、腸上皮細胞の胎児化が注目されている。本研究では、申請者が独自に開発した合成ハイドロゲルによる腸上皮細胞の胎児化誘導法を用いて、腸上皮細胞胎児化のメカニズムと大腸癌における意義を解明することを目的としている。 昨年度までの研究で、胎児化の誘導に用いるハイドロゲルの最適化が終了し、胎児化誘導に関わる因子としてYAPを同定した。本年度の研究では、胎児化の分子機構をさらに詳細に解析した。その結果、ハイドロゲルへの接着を担うFocal adhesionを介して、FAKやSRCが強く活性化され、この活性化したSRCがYAPをリン酸化し、活性化することが示された。この機構は正常な腸上皮細胞と大腸癌細胞の両方で働いており、その阻害により大腸癌細胞の抗がん剤への感受性が上昇した。また、胎児化誘導後の細胞の解析から、胎児化によりEGF等の増殖因子への依存性が低下することが示された。以上の結果から、腸細胞の胎児化を誘導するメカニズムの一端が明らかとなり、また胎児化が大腸癌細胞における増殖因子依存性の変化や抗癌剤への耐性に寄与していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記のように、本年度までの研究でハイドロゲルによる正常な腸上皮細胞および大腸癌細胞の胎児化誘導法が確立され、それを用いて胎児化の誘導に関わる因子としてSRC-YAP経路を同定した。また胎児化誘導後の細胞は性質が変化し、増殖因子への依存性の低下や抗がん剤への耐性の上昇が誘導されることが分かった。胎児化を阻害することで抗癌剤への感受性が回復することも示されており、胎児化を誘導する機構は大腸癌における新たな治療標的になり得ると考えられる。このように本年度までの研究で、当初予定していた研究計画を着実に遂行し、胎児化のメカニズムと大腸癌における意義の一端を解明するなど、期待される成果に結びつけることが出来た。そのため、研究は「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度までの研究では、腸細胞の胎児化を誘導する機構とその意義について、ハイドロゲルを用いたin vitroの実験系で解析を行い、胎児化誘導因子としてSRC-YAP経路を同定するなどの成果が得られた。今後の研究では、これまでに得られた成果が実際に生体内における癌の形成や進行に関わるか明らかにする。そのために、胎児化を誘導した正常腸上皮細胞に大腸癌で見られる種々の遺伝子変異を導入し、免疫不全マウスに移植して、腫瘍形成能や転移能を解析する。それにより、胎児化の有無により、癌の形成や進行、あるいは形成される癌組織の性状が変化するか調べる。これと並行して、ヒト大腸癌細胞においても免疫不全マウスにおける腫瘍形成実験を行い、胎児化の有無によって腫瘍形成能や転移、浸潤能が変化するか調べる。これらの解析により、腸細胞の胎児化が大腸癌の発生や進行において果たす役割を明らかにする。また本年度までの研究で、ハイドロゲル培養環境下では、胎児化の阻害によって大腸癌細胞の抗がん剤への感受性が上昇することが示されている。そこで、今後の研究では、生体内でも胎児化の阻害剤と抗がん剤の併用によって、腫瘍形成が効果的に抑制されるか調べる。以上の研究により、腸上皮細胞の胎児化が大腸癌の発生や進行にどのように関わるか明らかにし、その機構を標的とした大腸癌の新たな治療戦略を確立することを目指す。
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Report
(2 results)
Research Products
(7 results)