腫瘍細胞の上皮間葉転換におけるエピゲノム・エピトランスクリプトーム制御
Project/Area Number |
22K06880
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 48040:Medical biochemistry-related
|
Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
鈴木 健之 金沢大学, がん進展制御研究所, 教授 (30262075)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
|
Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
|
Keywords | がん遺伝子 / エピジェネティクス / エピトランスクリプトーム / 上皮間葉転換 / エピゲノム |
Outline of Research at the Start |
悪性腫瘍の転移メカニズムの解明は、がん治療の大きな課題である。転移過程では、腫瘍細胞の上皮間葉転換(EMT)とその可逆的性質が重要な役割を果たすと考えられている。本研究では、その性質を担う分子基盤を解明するために、可逆的な遺伝子発現調節に関与するエピゲノム制御とエピトランスクリプトーム制御に焦点を当てて解析を行う。各課題は、申請者独自の研究資源と成果をもとに着想したもので、予備的実験結果を既に得ている。可逆性を特徴とするEMTの分子メカニズムを解明し、それを標的とするがん転移抑制戦略の確立に貢献する。
|
Outline of Annual Research Achievements |
悪性腫瘍の転移メカニズムの解明は、がん治療の大きな課題である。従来の研究から、腫瘍細胞の上皮間葉転換(EMT:上皮細胞が細胞間接着能を喪失し、運動性の高い間葉系細胞へと性質が変化する現象)が転移の引き金になると考えられている。腫瘍細胞は、転移先では逆の反応、間葉上皮転換(MET)を起こして生着することから、EMTの可逆的性質が転移プロセスに極めて重要である。そのため、遺伝子発現の可逆的な調節に関与するエピゲノム・エピトランスクリプトーム制御が、EMTにおいて重要な役割を担っていることが示唆されてきた。これまでに申請者らは、TGF-beta刺激でEMTが誘導される悪性進展モデル腫瘍細胞(肺がん細胞A549, LC2/Ad、膵がん細胞Panc1など)を用いて、ヒストンのメチル化修飾及びユビキチン化修飾、非コードRNA(microRNA、long noncoding RNA: lncRNA)の機能、RNAのA塩基のメチル化(m6A)修飾などが、EMTを導く遺伝子発現プログラムに必須であることを示してきた。しかし、研究は緒についたばかりであり、依然としてEMTを誘導する分子メカニズムには不明な点が多い。また、EMTの可逆的性質に着目し、それを標的としてEMT進行を阻害する手法を確立できれば、がん転移を抑制できる可能性がある。以上の背景を踏まえて、申請者は腫瘍細胞の上皮間葉転換(EMT)の可逆的性質を担う分子基盤を明らかにするために、エピゲノム・エピトランスクリプトーム制御の観点から、これを解析している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
転移過程では、腫瘍細胞の上皮間葉転換(EMT)とその可逆的性質が重要な役割を果たすと考えられている。本研究では、その性質を担う分子基盤を解明するために、可逆的な遺伝子発現調節に関与するエピゲノム制御とエピトランスクリプトーム制御に焦点を当てて解析を進めている。今回、EMTにおけるエピトランスクリトーム制御を理解するために、METTL3酵素によりm6A修飾を受けた標的RNAの調節機構を解析した。代表的な標的RNAとして、EMT進行に関与する転写因子であるJUN及びJUNBの機能とm6A修飾による制御を調べた。TGF-beta誘導EMTにおいて発現誘導されるJUNとJUNBは、上皮系マーカー遺伝子CDH1の発現抑制に関わる一方、間葉系マーカーについては、JUNがCDH2の、JUNBがFN1の発現上昇にそれぞれ関与する。すなわち、EMTにおいて必須でかつ重複しない役割を担っている。また、JUN 及びJUNB mRNAのm6A修飾は、EMT進行に伴って顕著に増加し、METTL3酵素の発現に依存する。METTL3ノックダウン細胞を用いた解析から、m6A修飾はJUN mRNAの翻訳過程と JUNB mRNAの安定性にそれぞれ寄与することがわかった。それぞれのmRNAの制御を司るm6A修飾部位として、変異体解析から3’-UTRに存在する2箇所を同定した。さらに、JUN 及びJUNB mRNAのm6A修飾を認識するReaderタンパク質の候補として、それぞれYTHDF3とIGF2BP1を同定した。すなわち、JUN及びJUNBのm6A修飾による制御様式の違いは、それぞれを認識するReaderタンパク質の異なる機能に起因していることが示唆された。
|
Strategy for Future Research Activity |
エピトランスクリプトーム制御は、関与する分子や作用機序が近年明らかになりつつある発展的分野である。正常細胞と腫瘍細胞での比較の報告から臨床的重要性が注目されており、がんの悪性進展における役割の解明が今後の課題となる。私たちは、RNAのm6Aメチル化修飾がEMT進行過程で有意に増加し、それを担うMETTL3酵素がEMT誘導に必須であるという自らの実験結果から、EMTプロセスにおけるエピトランスクリプトーム制御の重要性を認識し、これに取り組んでいる。EMTにおけるエピトランスクリプトーム制御は国内外でまだあまり解析が進んでおらず、m6Aメチル化修飾Reader分子(YTHDF3, IGF2BP1)の機能解析については、既に標的mRNAを同定している点で競争優位性が高いと判断する。本課題は、申請者独自の研究資源と成果をもとに着想したもので、予備的実験結果を着実に獲得している。今後、可逆性を特徴とするEMTの分子メカニズムを解明し、それを標的とするがん転移抑制戦略の確立に貢献したいと考える。
|
Report
(1 results)
Research Products
(9 results)