癌の転移・再発における細胞外Galectin-Xを介した免疫抑制機構の解明
Project/Area Number |
22K06907
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 49010:Pathological biochemistry-related
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
安 健博 秋田大学, 医学系研究科, 助教 (40723771)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久場 敬司 秋田大学, 医学系研究科, 非常勤講師 (10451915)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2022: ¥2,080,000 (Direct Cost: ¥1,600,000、Indirect Cost: ¥480,000)
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Keywords | 転移 / 扁平上皮癌 / がん微小環境 / 免疫抑制 / Galectin-7 / 空間的トランスクリプトーム解析 |
Outline of Research at the Start |
「転移」は、がんの治療戦略を決める上で極めて重要な因子であり、申請者らはNRS1Mマウス扁平上皮癌の転移モデルの解析から、転移を規定する因子としてGalectin-Xを見出した。また空間的トランスクリプトーム解析から、Galectin-Xはがん微小環境において免疫抑制と関連することが示唆された。本研究では、がん細胞由来のGalectin-Xが、腫瘍免疫をいかに制御するか、その標的細胞と詳細な分子メカニズムを解明する。
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Outline of Annual Research Achievements |
「転移」は、がんの治療戦略を決める上で極めて重要な因子であり、我々はNRS1Mマウス扁平上皮癌の転移モデルを用いて、RNA-seq解析及び空間的トランスクリプトーム解析(Visium)から、転移を規定する候補遺伝子としてGalectin-7に着目した。NRS1M細胞を皮下移植したマウスにおいて、Galectin-7は腫瘍組織における免疫抑制区域にて高発現しており、さらにGalectin-7の血中濃度は転移と相関することを見出した。作製したGalectin-7欠損株を移植したマウスでは、コントロール群に比べ原発腫瘍の進行には差異が見られなかったにもかかわらず、リンパ節転移や肺転移が顕著に抑えられていた。これらの結果から、Galectin-7は免疫抑制と関連した扁平上皮癌細胞由来の転移誘導因子であることが明らかとなった。がんと免疫間のクロストークが注目されている中、本研究は腫瘍免疫学分野の発展から新たな診断・治療法の開発につなぐ重要な基礎研究である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マウス扁平上皮癌由来のNRS1M細胞の皮下移植腫瘍のリンパ節・肺転移モデルを用いて、がん転移に重要な制御因子を同定することを目的として研究を行った。まずリンパ節へ転移した高悪性度のNRS1M転移株を単離し、コントロールであるNRS1M親株細胞をRNA-seq解析で比較したところ、NRS1M転移株ではインターフェロン及び炎症応答に関連する遺伝子群の発現が顕著に低下していた。そこで、形成した高悪性度NRS1M腫瘍における免疫応答を検討したところ、CD8陽性T細胞及びCD11c陽性樹状細胞の腫瘍組織への動員が一部の領域で低下しており、がん微小環境下における免疫抑制区域の存在が示唆された。さらに、空間的トランスクリプトームの解析から免疫抑制区域の同定に成功し、抗原提示やインターフェロン応答などに関わる遺伝子群の発現が低下していた当区域ではGalectin-7が著しく高発現していた。転移したNRS1M細胞においてGalectin-7の発現が亢進していることから、CRISPR-Cas9を用いてGalectin-7欠損株を作製し、これらの細胞を移植したマウスでは特異的にリンパ節転移や肺転移が抑えられていた。これらのことから、Galectin-7はがん微小環境における免疫抑制区域にて発現が亢進する扁平上皮癌細胞由来の転移促進因子であることを明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
Galectin-7の発現は炎症性サイトカインであるTNF-aなどによって抑制されることを確認できたが、がん微小環境下の免疫抑制区域においてGalectin-7はどのように誘導されるかは未だに不明である。空間的トランスクリプトームの解析から、Galectin-7の高発現部位は低酸素応答と関連することを見出し、低酸素環境下におけるNRS1M細胞はGalectin-7の発現を亢進するかどうかについてin vitroで検討したところ、有意な上昇は見られなかった。一方、高コレステロール血症治療薬スタチンによるGalectin-7の発現誘導が報告され、当知見からGalectin-7の発現誘導機構の解明を目指す。 Galectin-7は主に細胞質に発現しており、細胞外へは分泌されない。実際、in vitro で培養したNRS1M転移株の培養上清からGalectin-7は全く検出されなかった。しかしながら、NRS1M細胞を移植し転移が認められる五週前後からGalectin-7は血中にて顕著に検出できるようになる。近年、がん進行過程におけるダメージ関連分子パターン(DAMPs)が注目されている。そこで本研究は、扁平上皮癌細胞由来のGalectin-7は一種のDAMPsか否か、またどのような刺激によって放出されるかを解明する。Galectin-7は免疫細胞のアポトーシスを誘導することや、骨髄由来抑制細胞(MDSCs)の分化に関わっていることが報告されている。今後、Galectin-7はどのような細胞に作用し、いかなる分子機序によって肺やリンパ節への転移に寄与するのかを解明する。 このように、Galectin-7を始めとする扁平上皮癌転移制御因子の解析を進めていく。
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Report
(1 results)
Research Products
(6 results)