Project/Area Number |
22K07036
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 49030:Experimental pathology-related
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Research Institution | National Cancer Center Japan |
Principal Investigator |
近藤 格 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 分野長 (30284061)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小迫 英尊 徳島大学, 先端酵素学研究所, 教授 (10291171)
野口 玲 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 研究員 (30779682)
吉松 有紀 地方独立行政法人栃木県立がんセンター(研究所), 研究所-医療シーズ探索研究G-患者由来がんモデル研究分野, グループ長 (60808632)
川井 章 国立研究開発法人国立がん研究センター, 中央病院, 科長 (90252965)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2024: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2022: ¥2,080,000 (Direct Cost: ¥1,600,000、Indirect Cost: ¥480,000)
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Keywords | 肉腫 / トラベクテジン / プロテオーム解析 / 患者由来がんモデル / プロテオミクス / 質量分析 / 感受性試験 / バイオマーカー |
Outline of Research at the Start |
トラベクテジンは、肉腫で承認されている数少ない抗がん剤であり、融合遺伝子をもつ肉腫に抗腫瘍効果を示すと言われている。しかし、トラベクテジンの薬効と融合遺伝子の関係性については十分に理解されていない。本研究の目的は、融合遺伝子とトラベクテジンの抗腫瘍効果の関係性を肉腫において明らかにすること、そして肉腫にトラベクテジンが奏効する分子機構を明らかにすることである。患者由来肉腫モデルを用いた感受性試験と、プロテオゲノミクス解析のデータを統合的に解析することで、トラベクテジンの薬効の分子背景を詳細に理解し、奏功性予測バイオマーカーの候補となるタンパク質を同定することを目標とする。
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Outline of Annual Research Achievements |
トラベクテジンはDNAの副溝部分に結合することによりDNA修復機構に影響しアポトーシスを誘導することで抗腫瘍効果を示す。また、粘液型脂肪肉腫のFUS-CHOPタンパク質やEwing肉腫のEWS-FLI1タンパク質の転写活性を阻害することが知られている。染色体転座陽性の肉腫で高い増殖抑制効果を示すと考えられているが、染色体転座陰性の症例も奏効することから、その機能的背景はわかっていない本研究では、国立がん研究センター・希少がん研究分野で樹立された 67種類の患者由来肉腫細胞株(25種類の組織型)を用いて、トラベクテジンの感受性試験を行い、IC50値を指標に抗腫瘍効果への感受性を評価した。既報とは異なり融合遺伝子の有無や特定の組織型に関連してトラベクテジンの抗腫瘍効果に差異を認めなかった。質量分析を用いたプロテオーム解析を行い、トラベクテジンのIC50値に発現レベルが有意に相関するタンパク質の同定を試みた。その結果、統計的に有意な相関を示すタンパク質が認められたが、診断に使えるほどの精度をもって相関するタンパク質は同定できなかった。同じように抗腫瘍効果を示しても、融合遺伝子の有無によってトラベクテジンの薬効の分子背景が異なるとしたら興味深いと考えられる。一方、臨床応用できる成果を得ることは培養細胞からは難しいと考えた。そこで研究の方針を変え、臨床検体を用いたプロテオーム解析(質量分析)を開始した。国立がん研究センター・バイオバンクに保存されている凍結腫瘍組織を使用し、融合遺伝子をもつ肉腫(DFSP、粘液型脂肪肉腫、Ewing肉腫など)そしてもたない肉腫(脱分化脂肪肉腫、未分化多形肉腫、骨肉腫など)のデータを採取した。昨年から継続して肉腫患者由来肉腫細胞株の樹立を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
融合遺伝子をもつ肉腫においてトラベクテジンはより高い抗腫瘍効果を示すことを示唆する報告があったことから、患者由来肉腫細胞株を用いてその分子背景をプロテオームレベルで調べるという方針で本研究を開始した。しかし網羅的にたくさんの肉腫細胞株を調べてみると、トラベクテジンの抗腫瘍効果は融合遺伝子の有無と相関しないことがわかった。これは細胞株というがんモデルの特性による可能性と、既報の報告が症例数が少ないために誤った結果が導かれていた可能性がある。前者の場合、細胞株を用いた研究の限界なのかもしれない。細胞株は万能ではなく、臨床腫瘍の性格の一部がin vitroで再現されているにすぎないため、見極めが必要である。多数症例の臨床検体を用いた解析の結果として、融合遺伝子をもつ肉腫に一般的に認められる分子背景としてゲノムの変化が有意に少ないことが知られている。しかし、そのことがどのようにトラベクテジンの抗腫瘍効果に結び付くのかは不明である。また、そのようなゲノムの特徴がどのようにプロテオームに反映されているのかを調べた研究例はない。したがって、細胞株のプロテオームデータ得だけではなく、臨床腫瘍のプロテオームのデータを得て融合遺伝子の有無が引き起こす差異を調べる必要があると考えるに至った。
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Strategy for Future Research Activity |
今までの結果から、細胞株を用いてトラベクテジンの感受性の差異に対応するプロテオーム像を探索することには限界があると考えられる。トラベクテジンの感受性に対応する分子機構が、細胞株を樹立する課程で失われている可能性がある。あるいは、多数の症例を対象として多種多様な組織型にまたがって融合遺伝子の有無と感受性を調べた報告がないため、既報の結果を再検討する必要があるかもしれない。そのようなことを考え、臨床検体を用いて、融合遺伝子の有無がどのようにプロテオーム像に影響しているのかを調べる実験を行い、そこで得られたデータの中からトラベクテジンの感受性の差異を説明できる知見を得るという推進方策で研究を進めたいと考えている。一方、細胞株の種類、由来する症例数や組織型を増やすことで、今まで認められなかった差異が明らかになる可能性は否定できないため、細胞株の樹立は継続する。
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