乳酸菌をキャリアとする粘膜ワクチン系開発に関する研究
Project/Area Number |
22K07071
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 49050:Bacteriology-related
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Research Institution | Gifu Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
高橋 圭太 岐阜薬科大学, 薬学部, 講師 (50634929)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
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Keywords | ワクチン / アジュバント / 乳酸菌 / bacterium-like particles / Citrobacter rodetnium / 粘膜ワクチン / 細菌様粒子 / DNAワクチン |
Outline of Research at the Start |
「粘膜免疫」は呼吸器や腸管などの粘膜組織を感染から防御する免疫系だが、既存の注射ワクチンでは誘導が困難である。そのため、粘膜免疫の誘導に必須とされる経口あるいは経鼻でのワクチン接種を可能にする送達系および粘膜アジュバントが求められている。我々は、1) 経口DNAワクチンプラットフォームの開発を目指した乳酸菌をキャリアとして用いるプラスミドDNA送達系の構築、および2) 乳酸菌由来細菌様粒子の粘膜アジュバント効果、に関する研究を進めてきた。本研究では、これまでの成果を基に、新規粘膜ワクチンの開発に寄与する基礎研究を行う。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、従来の注射ワクチンでの誘導が難しい粘膜免疫を誘導できるワクチン系の構築を目指した研究である。具体的には、ヒトに対する安全性が高いと考えられる乳酸菌をベクター/アジュバントとして用いる2種類の粘膜ワクチン系-1) DNAワクチン系、2) 乳酸菌由来細菌様粒子(BLP)アジュバントを用いた組換え蛋白ワクチン系-の構築を進めている。令和4年度は、経口投与と経鼻投与で誘導される抗原特異的抗体価等の比較により、投与経路の違いがこれらのワクチン系の免疫原性に及ぼす影響を検討した。 1)DNAワクチン系:真核細胞内でのみEGFPを発現するプラスミドを導入した乳酸菌NZ9000株をC57BL/6マウスに経口または経鼻投与した場合のEGFP特異的抗体価を比較した。その結果、経鼻投与の場合のみEGFP特異的血中IgG、気管支肺胞洗浄液IgA、鼻腔洗浄液IgAの有意な上昇がみられた。経鼻投与群の血中IgG抗体価は、精製プラスミドの筋注群(ポジティブコントロール)の抗体価と同程度だった。 2)BLPアジュバントを用いた組換え蛋白ワクチン系:マウスの病原細菌であるCitrobacter rodentiumの病原因子(Tir)をモデル抗原として使用した。TirをBLPに結合させたBLP-Tirは、経鼻投与の場合に経口投与の約1,000倍の免疫原性を示し、全身性IgGに加えて、呼吸器および腸管粘膜のIgA抗体価の上昇を誘導した。抗原/BLPの体内動態解析および粘膜関連リンパ組織のトランスクリプトーム解析の結果、投与経路による免疫原性の違いは、粘膜関連リンパ組織への抗原/BLPの到達量の違いと、それに伴う免疫関連遺伝子群の発現の強弱に起因することが明らかとなった。また、様々な乳酸菌種から調製したBLPのアジュバント効果を比較し、アジュバント効果の高いBLP、安全性の高いBLPをそれぞれ同定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載の1)DNAワクチン系に関する令和4年度の研究計画では、ベクターとして用いる乳酸菌種のスクリーニングおよび経鼻投与での免疫原性の確認を実施するとしていた。先に経鼻投与での免疫原性が確認されたことから、さらに免疫誘導メカニズムの解析を進めた。一方、乳酸菌種のスクリーニングは滞っている。2)BLPアジュバントを用いた組換え蛋白ワクチン系については、交付申請書に記載した投与経路による免疫原性の違いとその原因について明らかにし、論文を発表した。加えて、開発したワクチン系の感染防御効果について様々な感染症モデルでの検証実験、さらに様々な乳酸菌種から調製したBLPの免疫原性および安全性の比較実験でも着実にデータを取得しており、当初の想定以上に進展している状況といえる。以上を総合的に判断して、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
DNAワクチン系について、乳酸菌ベクターの経鼻投与により抗原特異的免疫の誘導が可能であることは明らかになったが、誘導の詳細なメカニズム、すなわち経鼻投与した乳酸菌の菌体内に存在するプラスミドが、いつ、どこで、どの細胞に、どのように受け渡され、プラスミドにコードされた遺伝子発現に繋がるのか、はほとんどわかっていない。今後はこれらの点を明らかにすべく、EGFPやルシフェラーゼなどのレポーター蛋白を用い、経鼻投与された乳酸菌から宿主細胞へのプラスミドの移動がいつ、どこで、どの細胞に起こるかを特定する。また、培養細胞を用いたin vitro実験により、乳酸菌から細胞へのプラスミドの移動をin situ hybridizationなどの方法で可視化し、プラスミドの移動メカニズムの解明を試みる。 BLPアジュバントを用いた組換え蛋白ワクチン系について、Citrobacter rodentium感染モデルを用い、いくつかの病原因子をワクチン抗原として作製したワクチンの感染防御効果を比較する。また、一般的に使用されるAlumアジュバントを用いた注射ワクチンとの比較により、感染防御効果における粘膜免疫の重要性を評価する。BLPの由来菌種のスクリーニングで免疫原性や安全性(副反応の強さ)が異なるBLPが得られたため、それらの性質(粒子サイズ、ペプチドグリカン構造、自然免疫受容体リガンド活性、経鼻投与時の動態、リンパ組織での遺伝子発現変化など)を詳細に比較し、免疫原性および安全性と関連する因子を同定する。
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Report
(1 results)
Research Products
(3 results)