Project/Area Number |
22K07148
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 50010:Tumor biology-related
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
加藤 真一郎 名古屋大学, 医学系研究科, 特任助教 (40751417)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
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Keywords | ロングノンコーディングRNA / メラノサイト / 色素細胞 / メラノーマ / MITF / ノンコーディングRNA |
Outline of Research at the Start |
がん細胞は、その発生起源となる正常細胞に固有の生存・増殖機構を有することから、Lineage Dependencyと呼ばれる概念が提唱されているが、その分子実態についてはほとんど明らかではない。本研究では、細胞系譜特異性に密接な関連のある長鎖非コードRNAの観点からLineage Dependencyの分子基盤を解明することで、がんという疾患に留まらず、正常細胞系譜での生物学的・進化的意義について迫る。
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Outline of Annual Research Achievements |
メラノサイト細胞系譜の発生・分化・生存に必須の転写因子MITFによる細胞系譜特異的な増殖機構(lineage dependency)の本態解明に向けて、メラノサイト細胞系譜特異的なロングノーコンディングRNA(long non-coding RNA: lncRNA)の同定と機能解析を基軸とした研究を遂行した。特に、MITFによって直接転写制御される18種類のlncRNAのうち、新規性が高く、メラノサイトやメラノーマの生存・増殖においてロバストな機能を持つ「lncRNA X」に着目し、その未知なる分子的特性や細胞内局在の詳細な解析を行なった(lncRNA Xは霊長類でのみ発現が確認されている)。近年、lncRNAに含まれるORFから生理活性ペプチドが翻訳されることが様々な生物種で報告されているが、FLAGタグを付加したlncRNA Xを用いた分子生物学的解析や質量分析解析により、lncRNA Xの推定ORFは翻訳されることなくlncRNAのまま機能すると考えられた。さらに、lncRNA Xの細胞内局在についてRNA FISHによる検討を行なったところ、細胞周期依存的に細胞内局在が変化するという興味深い現象が観察された。また、RNA-seqおよび質量分析解析を用いた網羅的な遺伝子・タンパク質発現解析により、lncRNA Xのノックダウンによって細胞周期のG2/M transitionに関連する転写因子AやキナーゼBの発現が有意に低下していたことから、lncRNA Xは細胞周期依存的にその局在を変化させ、直接的・間接的にメラノサイト細胞系譜の細胞周期を制御することが示唆された。以上のことから、MITFによるメラノサイト細胞系譜のlineage dependencyの一端には、lncRNA XによるG2/M細胞周期制御が必要となることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画に則り、本年度は「i) lncRNA Xは本当に非コードRNAなのか?」、「ii) lncRNA Xの機能解析」の2点を研究の主眼とした。BLAST検索によると我々が注目するlncRNA Xの遺伝子配列はヒトを含む霊長類でのみ保存されている。そこで、ヒト初代培養メラノサイトやメラノーマ細胞株におけるRNA-seqやRACE(Rapid Amplification of cDNA Ends)によるクローニングなどを独自に行い、lncRNA Xはpoly A tailを持つ340 bp程度の転写産物であることを新規同定し、1次配列情報から3つのORFを含む可能性を見出した。次いで、各ORFの3’側(終始コドンの手前)にFLAGタグを付加したlncRNA Xを個別に合成し、それぞれを遺伝子導入したメラノサイトもしくはメラノーマ細胞サンプルにおいて抗FLAG抗体を用いたウエスタンブロットによる検証、さらにはlncRNA Xを高発現するメラノーマ細胞株UACC257(MITF amplification)とlncRNA Xを発現しないメラノーマ細胞株LOX-IMVIにおいて質量分析解析を行なった結果、いずれの解析方法でもlncRNA XのORFに由来するペプチド断片を検出することはできず、lncRNA Xが非コードRNAであることが強く支持された。また、ii)について、RNA FISHによる細胞内局在解析に加え、RNA-seqおよび質量分析による網羅的な発現解析を実施したところ、lncRNA Xがメラノサイト細胞系譜の細胞周期制御、特にG2/M transitionにおいて重要な役割を果たすことが明らかとなった。以上のことから、計画通りに研究を遂行し、想定以上の知見取得を達成したと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
lncRNA Xの更なる機能解析としてlncRNA Xによる細胞周期制御メカニズムの解明を推進する。本年度得られた知見から細胞周期依存的なlncRNA Xの細胞内局在・結合タンパク質が推察されたことから、FUCCI (Fluorescent Ubiquitination-based Cell Cycle Indicator)により細胞周期の可視化させ、各細胞周期におけるlncRNA Xの細胞内局在と結合タンパク質を明らかにする。結合タンパク質の同定に向けては、まずビオチン化lncRNA Xとメラノサイトもしくはメラノーマ細胞株の細胞溶解液を用いたin vitro pull down assayにより結合タンパク質の網羅的な探索を行う。その後FUCCI導入細胞において、候補となる結合タンパク質とlncRNA Xの細胞内結合と局在パターンを可視化することで、細胞周期依存的な細胞内局在と相互作用を明らかにしたい。また、これら結合タンパク質が細胞周期に及ぼす機能的解析も並行して行うことで、lncRNA Xによるlineage dependencyの分子的機構を詳らかにする。これらの実験的検証に加えて、第3の研究項目として計画している「iii) lncRNA Xの種・細胞系譜特異性の検証」に向けた予備検討・基盤整備を行う。lncRNA Xの1次配列情報から、その配列は霊長類にのみ保存されることを明らかにしているが、配列が違えども類似した高次構造・機能を持つlncRNAが生物種を越えて保存されている可能性がある。SHAPE-seqやin silico解析ツールなどを導入および試行し、lncRNAの構造的・機能的観点からlncRNA Xの進化的意義を問う。
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