Project/Area Number |
22K07165
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 50010:Tumor biology-related
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鯉沼 代造 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 准教授 (80375071)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
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Keywords | 胃がん / 大腸がん / TGF-β / SMAD4 / ChIP-seq / ホットスポット変異 / 変異 |
Outline of Research at the Start |
本研究は多くのがん種で体細胞変異の頻度が高いSMAD4変異の分子機能を、超並列ゲノムシーケンサーを用いた変異SMAD4結合ゲノム領域の解析手法など、これまで変異SMAD4についての取り組みが限られていた俯瞰的立場から再検討し、その関与する遺伝子群の役割と併せSMAD4変異を有するがんの治療的介入の手がかりを提示することを目的としている。これらの取り組みを通して、SMAD4変異について指摘される機能喪失および機能獲得の両側面について明らかにするとともに、SMAD4のシグナル非依存的転写制御機構との関係についても明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
TGF-βシグナルの下流でSMAD4遺伝子はシグナル伝達分子・転写因子として働くが、TGF-βが癌の促進・抑制いずれにも働くことが分かっている。本研究課題はSMAD4が多くのがん種で体細胞変異を来すことに注目し、変異がもたらす分子機能の変化について超並列シーケンサーを用いたChIP-seq解析を通して俯瞰的立場から明らかにすることを目的としている。 SMAD4の主要なホットスポット変異は一か所存在している。前年度までの解析から、この変異を有する胃がん細胞株では、変異SMAD4のゲノム結合能は野生型SMAD4を発現している他のがん細胞株でのSMAD4の結合部位と重複があり、ある程度保持されていることが明らかになっている。他のSMADファミリー分子との複合体形成能が一部低下していたことから、変異SMAD4遺伝子を不活化した胃がん細胞株を樹立し、ChIP-seqデータを取得した。 解析の結果、変異SMAD4の不活化により有意な活性化ゲノム領域の数が減少する傾向が認められたが、既知のTGF-β及びSMAD4の標的遺伝子座において、活性化ゲノム領域には目立った変化を認めなかった。このことから、変異SMAD4遺伝子による転写調節異常はそのすべての結合部位で生じることなく、一部の標的遺伝子座においてのみ引き起こされていることが示唆された。また前年度までに大腸がんにおける変異SMAD4の遺伝子不活化については細胞株の樹立を断念している。 以上のことから、胃がん細胞に注目して遺伝的背景が同一のがん細胞を用いることで、変異SMAD4の転写制御異常とエピゲノム制御の関連について、限定的ながらその存在が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前述のように、これまでに野生型と変異型SMAD4を発現するがん細胞株同士でのSMAD4結合部位の分布を比較したほか、変異SMAD4遺伝子をノックダウンしてトランスクリプトームデータおよび、変異SMAD4遺伝子不活化細胞での活性化ヒストン修飾抗体を用いて活性化遺伝子領域のChIP-seqデータを取得した。予定した通りの俯瞰的なエピゲノム・トランスクリプトーム解析を実施することで、目的とする変異SMAD4の転写制御異常の理解が進んだと判断される。具体的には、SMAD4の結合部位は野生型と変異型で共通のものが多く存在すること、SMAD4の不活化により、有意な活性化遺伝子領域の数が減少すること、一方で多くの既知のSMAD4標的遺伝子座では活性化ヒストン修飾状態に変化がみられないこと、などの知見を得た。特に遺伝的背景が同一の状態で、SMAD4遺伝子不活化の影響を調べることが出来たことで、これまでの異なる細胞株同士の比較解析の問題点をクリアすることが出来たと考える。前年度までに大腸がんでの検討を中止して胃がんでの検討に集中しているが、その結果顕著な解析の進展を見ることが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
以上の結果を踏まえ、引き続き変異SMAD4不活化胃がん細胞株を用いて検討を行う。活性化ゲノム領域の変化を生じた標的遺伝子サブセットを抽出して、SMAD4結合部位や遺伝子発現変化との関係、濃縮する他の転写因子の結合モチーフなどを算出することで、これら転写異常をきたす遺伝子群の特徴を明らかにし、また変異SMAD4のがん細胞における役割との関連についても解析していく方針である。また臨床的意義づけについても、こうして抽出した遺伝子の予後との相関などから、探っていく計画である。
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