Project/Area Number |
22K07173
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 50010:Tumor biology-related
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
時野 隆至 札幌医科大学, 医学部, 教授 (40202197)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,290,000 (Direct Cost: ¥3,300,000、Indirect Cost: ¥990,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
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Keywords | p53 / がん抑制遺伝子 / がんゲノム |
Outline of Research at the Start |
p53はヒトの悪性腫瘍で最も高頻度に変異しているが,「がん抑制遺伝子」であるためp53経路を分子標的とした治療法の開発を遅れている.本研究では,(1)変異型p53と合成致死 (synthetic lethality) に関与する経路,および(2)正常型p53によるアポトーシス誘導を増強する経路に属する遺伝子群をCRISPR-Cas9 ゲノムワイド ライブラリースクリーニング系を利用して探索し,同定する.さらにp53による転写ネットワークの全貌を解明し,p53による細胞死誘導に相互作用する経路を探索して,革新的ながん治療法の開発につながる基礎的研究を展開する.
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Outline of Annual Research Achievements |
近年,Long non-coding RNA(lncRNA)ががんに重要な役割を果たすことが多くの研究により明らかにされている.そこで,大腸がんに関与するlncRNAを探索するために,TCGAデータセットにおいて発現解析および生存率解析によるlncRNAのスクリーニングを行った.その結果,大腸がんではlncACp53(仮称)の発現が正常組織と比較して有意に増加しており,その高発現は予後不良と相関していることに明らかにした. NCBIのデータベースから,lncACp53と隣接するコード遺伝子Kelch Domain Containing 4(KLHDC4)の間に連続した転写産物を発見し,KLHDC4 transcript variant X7(KLHDC4-X7)と命名した.KLHDC4-X7の過剰発現ベクターは,KLHDC4-X7配列がKLHDC4 ORFを含んでいるにもかかわらず,KLHDC4 mRNA発現を増加させたが,KLHDC4タンパク質発現は増加しなかった.si-KLHDC4でKLHDC4-X7をノックダウンし,KLHDC4発現プラスミドでKLHDC4タンパク質の発現を回復させると,アポトーシス活性が上昇した.lncACp53およびlncACp53と同一の塩基配列を含むKLHDC4-X7は,ノンコーディングRNAとして働き,KLHDC4タンパク質とは独立して大腸がん細胞の細胞増殖を促進し,アポトーシスを抑制することが示唆された.KLHDC4-X7は1020残基(340アミノ酸相当)のORF(open reading frame)を有する転写物RNAであるが,核に存在し,長鎖非コードRNA (long non-coding RNA) のように振る舞うことを明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
KLHDC4-X7特異的プライマーを用いたRT-PCRおよびサンガーシークエンシングにより,KLHDC4-X7が大腸癌細胞株でも発現していることを確認したKLHDC4の高発現は,上咽頭癌の予後不良因子であることが報告されている.そこで,si-lncACp53がKLHDC4タンパク質の発現に影響を及ぼすかどうかをウェスタンブロッティングで確認した.si-lncACp53またはsi-KLHDC4のトランスフェクションは,KLHDC4-X7 RNAの発現を有意に減少させたが,KLHDC4タンパク質の発現には全く影響を与えなかった.さらに,KLHDC4-X7の過剰発現ベクターは,KLHDC4-X7配列がKLHDC4 ORFを含んでいるにもかかわらず,KLHDC4 mRNA発現を増加させたが,KLHDC4タンパク質発現は増加しなかった.si-KLHDC4でKLHDC4-X7をノックダウンし,KLHDC4発現プラスミドでKLHDC4タンパク質の発現を回復させると,アポトーシス活性が上昇した.さらに,lncACp53を過剰発現させると,コントロールと比較してコロニー形成が有意に増加した.これらの結果から,lncACp53およびlncACp53と同一の塩基配列を含むKLHDC4-X7は,ノンコーディングRNAとして働き,KLHDC4タンパク質とは独立して大腸がん細胞の細胞増殖を促進し,アポトーシスを抑制することが示唆された.lncACp53とKLHDC4-X7の細胞内局在を調べるため,核内画分と細胞質画分におけるこれらの量をqPCRで定量した.その結果,両者とも核内画分に豊富に局在しており,lncRNAの一般的な局在と一致していた.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策として,(1)lncACp53欠乏がp53を活性化する機序を分子レベルでの解明を目指す.具体的には,翻訳レベルあるいは翻訳後修飾(リン酸化,アセチル化など)によるp53タンパク質の安定化について,各種のp53変異体を作成し,質量分析などで解析する.(2)lncACp53欠乏および高発現後におけるp53の標的選択性の特徴を詳細に解析する.(3)がんの予後予測および分子標的治療薬の開発への発展を目的として,このlncACp53のように がん細胞で高発現し,かつ高発現群で予後不良と正の相関を示す長鎖非コードRNA遺伝子を同定する.
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