Project/Area Number |
22K07546
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 52020:Neurology-related
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Research Institution | Osaka Medical and Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
荒若 繁樹 大阪医科薬科大学, 医学部, 教授 (00344789)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2024: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
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Keywords | 神経変性疾患 / 病態生化学 / パーキンソン病 / 認知症 / タウ / αシヌクレイン / 細胞外放出 / α-シヌクレイン / 神経病態学 / 細胞生物学 |
Outline of Research at the Start |
認知症を伴うパーキンソン病脳の約50%にα-シヌクレインに加えタウの異常蓄積が認められる。両分子は共に「プリオン様伝播」をする特徴を有する。しかし、認知症の発症における両分子の関連は不明である。私たちは、α-シヌクレインの新しい細胞外放出経路としてABCトランスポーターを介する経路を同定した。さらに、タウが同経路を介して放出される可能性を見出した。本研究では、タウがα-シヌクレインと共通するABCトランスポーター依存性経路を介してどのような調節を受けて細胞外に放出されるか検討する。細胞外放出の点からパーキンソン病の認知症発症における両分子のプリオン様伝播の細胞生物学的基盤を解明する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、認知症を伴うパーキンソン病におけるタウとα-シヌクレインの細胞内蓄積機構を明らかにするため、タウとα-シヌクレイン分子に共通する細胞外放出経路および細胞外放出のプリオン様伝播への寄与の解明を目的としている。2023年度は、1)タウの形質膜貫通性放出とABCトランスポーター依存性放出の相互調節メカニズム、2)ABCトランスポーター依存性放出のタウ細胞間伝播への影響とした。それぞれの研究計画について、次の結果を得た。1)に関連して、マウス初代大脳皮質神経細胞においてタウの形質膜貫通性放出は認められなかった。また、初代神経細胞およびSH-SY5Y細胞において、α-シヌクレインの細胞外放出は、グルタミン酸の投与による神経活動性刺激によって促進されることを見出した。神経活動性刺激によって促進されるα-シヌクレインの細胞外放出は、細胞内カルシウム濃度の変化を介してATG5依存性のオートファジーによって担われ、その放出にオートファゴソームが関与していることが示された。神経活動性刺激によって惹起されるATG5依存性のオートファジーは、タウおよびSOD1タンパク質の細胞外放出にも関与していた。細胞質に分布するタンパク質は、神経活動性の上昇によって非選択的にオートファジーに取り込まれて細胞外に放出されることが示唆された。さらに、神経活動性刺激によって惹起されるα-シヌクレインの細胞外放出は、生化学的にエクソソームを豊富に含む画分で生じていた。2023年度の研究成果は、国際学会(Movement Disorder Society International Congress 2023. Copenhagen, Denmark 現地発表)および国内学会(第64回日本神経学会学術大会 2023年 千葉;第17回パーキンソン病・運動障害疾患コングレス 2023年 大阪など)で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度はα-シヌクレインの細胞外放出メカニズムの探索から、タウの細胞外放出との共通性を検討した。神経活動性刺激によってα-シヌクレインとタウの細胞外放出が促進されることを見出し、さらに次の所見を得た。1)グルタミン酸受容体阻害薬の共処理によってα-シヌクレインの細胞外放出は抑制される、2)オートファジーを誘導するATG5のノックダウンによってこの細胞外放出は抑制される、3)細胞内カルシウムのキレートによって細胞外放出は抑制される、4)グルタミン酸刺激はオートファジーfluxを促進させる、5)グルタミン酸刺激はα-シヌクレインとオートファジーのマーカーであるLC3陽性構造物との共局在を促進させ、リソソームのマーカーであるLamp1陽性構造物との共局在を促進しない、6)オートファゴソームと細胞膜の融合に関わるRAB8Aのノックダウンは、グルタミン酸刺激によるα-シヌクレインの細胞外放出を抑制する、ことである。α-シヌクレインの細胞外放出は、神経活動性刺激によって促進され、細胞内カルシウム濃度の変化を介してATG5依存性のオートファジーによって担われていること、その放出にはオートファゴソームが関与していることが示された。神経活動性刺激によって惹起されるATG5依存性のオートファジーは、タウおよびSOD1タンパク質の細胞外放出にも関与していた。細胞質に分布するタンパク質は、神経活動性によって非選択的にオートファジーに取り込まれて細胞外に放出されることが示唆された。また、神経活動性刺激によって惹起されるα-シヌクレインの細胞外放出は、生化学的にエクソソームを豊富に含む画分で生じていた。ABCトランスポーターはエンドソームに発現していることが知られていることから、エンドソームとオートファゴソームの融合までの過程に着目して、ABCトランスポーターの関与を探索する方向性が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
オートファジーは、不必要になった細胞内小器官やタンパク質を分解する機構である。一方、オートファジーは細胞内のタンパク質を細胞外に分泌する働きを持っていることが明らかになっている。このオートファジーの分解と分泌の機能的分岐は、リソソームとの融合にあると考えられている。ショウジョウバエにおいて、高濃度K+刺による神経活動性の刺激は、オートファジー分泌を促進させ、オートファジー分解を抑制することが報告された(Chang YC, et al. PNAS 2024;121(16))。しかし、オートファジーの分解と分泌を分岐させる機能的切り替え(switching)の分子メカニズムは不明である。これらの知見と2023年度に得られた研究結果を合わせ、研究目的であるタウとα-シヌクレイン分子に共通する細胞外放出経路およびプリオン様伝播への寄与の解明に向けて、当初の研究計画を次のように修正する。2024年度の研究として、1)オートファジーによる細胞外放出と分解機構の機能的切り替えの分子メカニズムの探索、2)神経活動性刺激によって促進されるエクソソーム関連放出におけるABCトランスポーターの役割の探索、3)タウおよびα-シヌクレイン凝集物の細胞外放出機構におけるオートファジーの寄与といった点について検討を行う。これらの検討は、マウス大脳皮質初代神経細胞とSH-SY5Y細胞を用いて行い、生化学的および免疫細胞組織学的に解析する。これらの実験から、α-シヌクレインとタウに共通する細胞外放出と分解の機能的切り替えメカニズムを明らかにする。細胞外放出機構からみたタウとα-シヌクレイン分子のプリオン様伝播メカニズムの解明に繋げることを目指す。
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